
――禁じられた愛。
危険で甘美でエロチックで……。
「禁」はいわば障壁。
禁じられてこそ2人の想いはさらに燃え上がると言えます。
タブーを破って強く結ばれるというところでしょうか。
このタブーにも“度合い”があります。
許されざる愛であるほど度合いが高く、
決して周囲に気付かれてはなりません。
もし知られてしまったら、それ相応の罰を受けなければならないし、
全てを失う可能性もあります。
それでもその人のそばにいたいというのが恋や愛。
「これではいけない」と思えば思うほど、溺れていきます。
家や親が許さない恋、不倫、友だちの恋人……
ドラマ「花より男子2」の井上真央(つくし)と道明寺(松本潤)の関係は、
タブーの度合いとしては低いですが、禁じられている愛と言えます。
この場合、禁を律しているのは楓(加賀まりこ)。
もしくは道明寺グループ。
楓=「家」が2人の交際を禁じており、障壁となっています。
しかし、それに対して彼らは堂々と立ち向かっていきました。
換言すれば、さほどコソコソする必要がなく、
「庶民デート」をしたように白昼2人並んで歩けるわけです。
タブーの度合いが強いとこうはいきません。
人の目にさらされても大丈夫な彼らは、まだ許容範囲内です。
一方、かなり危険なタブーが明らかになったのは「華麗なる一族」。
義理の父と娘との関係です。
万俵敬介と万俵寧子(原田美枝子)の密通により、主人公万俵鉄平(木村拓哉)は
大介(北大路欣也)の子ではないことが明らかになりました。
血は繋がっていないとはいえ、許されざる関係です。
ただ、万俵敬介と万俵寧子(原田美枝子)の間に“愛”はありません。
強姦に等しい形で、寧子は鉄平を身ごもってしまうのでした。
禁じられた愛をしたのは万俵鉄平(木村拓哉)の方です。
彼は真実を知らないまま、
異母兄妹である鶴田芙佐子(稲森いずみ)を愛していました。
芙佐子もまた鉄平に想いを寄せ、
2人が引き離されてもなお慕い続けていたのです。
敬介・寧子の関係と違って、鉄平・芙佐子には血の繋がりがあります。
禁じられた愛というのは言うまでもありません。
あとになって血縁者同士と知らされた2人の感情は、
どのようなものだったのでしょう。
鉄平はすでに結婚しているとはいえ、
芙佐子が流した涙はその胸の内を表していました。
さて、ここまではドラマの世界。
現実世界でこれに似た禁じられた愛をした詩人がいます。
それは童謡詩人“金子みすゞ”
みすゞが4歳のときに養子に来た弟「正佑」と、
相思相愛の仲になってしまうのです。
最初に恋をしたのは「正佑」。
このとき2人はまだ実の姉弟だと知る由もありませんでした。
しかし、徴兵検査により全てが明かとなってしまいます。
「華麗なる一族」の鉄平・芙佐子のごとく、
正佑とみすゞはどのような心境に陥ったのでしょう。
みすゞは「林檎畑」という次の詩を残しています。
七つの星のそのしたの、
誰も知らない雪国に、
林檎ばたけがありました。
垣もむすばず、人もいず、
なかの古樹の大枝に、
鐘がかかってゐるばかり。
ひとつの林檎をもいだ子は、
ひとつお鐘をならします。
ひとつお鐘がひびくとき、
ひとつお花がひらきます。
七つの星のしたを行く、
馬橇の上の旅びとは、
とおいお鐘をききました。
とおいその音をきくときに、
凍ったこころはとけました、
みんな泪になりました。
詩人正津勉先生の著書『詩人の愛』によると、
林檎畑でひとり果実をもいでいるのが姉(金子みすゞ)で、
「馬橇の上の旅人」は弟(正佑)といいます。
この詩においての「林檎」とは、2人がまだ真実を知らず、
甘美に過ごした頃の記憶。
「鐘」とは、姉から弟への報せだと……。
みすゞはその後、何の気もない男と結婚を強いられました。
彼女はそれに同意。
こうして姉弟の禁じられた愛は幕を下ろしたのです。
しかし、周知のように昭和5年、みすゞは睡眠薬をのんで自殺しました。
26歳という若さで……。
禁じられた愛はどこへ向かうのでしょう。
律される禁が、どうにもできない事実を起因としているなら、
人はなす術もありません。
それでもなお相手を愛し続けるのか、
それとも諦めざるを得ないのか……。
運命は過酷なものです。
――みんな泪になりました。
誰も知らない雪国でひとり林檎をもぎ、
その果実は涙で濡れています。
参考文献
正津勉著『詩人の愛』河出書房新社
※正津勉先生の文学ゼミサイト
http://homepage1.nifty.com/B-semi/
危険で甘美でエロチックで……。
「禁」はいわば障壁。
禁じられてこそ2人の想いはさらに燃え上がると言えます。
タブーを破って強く結ばれるというところでしょうか。
このタブーにも“度合い”があります。
許されざる愛であるほど度合いが高く、
決して周囲に気付かれてはなりません。
もし知られてしまったら、それ相応の罰を受けなければならないし、
全てを失う可能性もあります。
それでもその人のそばにいたいというのが恋や愛。
「これではいけない」と思えば思うほど、溺れていきます。
家や親が許さない恋、不倫、友だちの恋人……
ドラマ「花より男子2」の井上真央(つくし)と道明寺(松本潤)の関係は、
タブーの度合いとしては低いですが、禁じられている愛と言えます。
この場合、禁を律しているのは楓(加賀まりこ)。
もしくは道明寺グループ。
楓=「家」が2人の交際を禁じており、障壁となっています。
しかし、それに対して彼らは堂々と立ち向かっていきました。
換言すれば、さほどコソコソする必要がなく、
「庶民デート」をしたように白昼2人並んで歩けるわけです。
タブーの度合いが強いとこうはいきません。
人の目にさらされても大丈夫な彼らは、まだ許容範囲内です。
一方、かなり危険なタブーが明らかになったのは「華麗なる一族」。
義理の父と娘との関係です。
万俵敬介と万俵寧子(原田美枝子)の密通により、主人公万俵鉄平(木村拓哉)は
大介(北大路欣也)の子ではないことが明らかになりました。
血は繋がっていないとはいえ、許されざる関係です。
ただ、万俵敬介と万俵寧子(原田美枝子)の間に“愛”はありません。
強姦に等しい形で、寧子は鉄平を身ごもってしまうのでした。
禁じられた愛をしたのは万俵鉄平(木村拓哉)の方です。
彼は真実を知らないまま、
異母兄妹である鶴田芙佐子(稲森いずみ)を愛していました。
芙佐子もまた鉄平に想いを寄せ、
2人が引き離されてもなお慕い続けていたのです。
敬介・寧子の関係と違って、鉄平・芙佐子には血の繋がりがあります。
禁じられた愛というのは言うまでもありません。
あとになって血縁者同士と知らされた2人の感情は、
どのようなものだったのでしょう。
鉄平はすでに結婚しているとはいえ、
芙佐子が流した涙はその胸の内を表していました。
さて、ここまではドラマの世界。
現実世界でこれに似た禁じられた愛をした詩人がいます。
それは童謡詩人“金子みすゞ”
みすゞが4歳のときに養子に来た弟「正佑」と、
相思相愛の仲になってしまうのです。
最初に恋をしたのは「正佑」。
このとき2人はまだ実の姉弟だと知る由もありませんでした。
しかし、徴兵検査により全てが明かとなってしまいます。
「華麗なる一族」の鉄平・芙佐子のごとく、
正佑とみすゞはどのような心境に陥ったのでしょう。
みすゞは「林檎畑」という次の詩を残しています。
七つの星のそのしたの、
誰も知らない雪国に、
林檎ばたけがありました。
垣もむすばず、人もいず、
なかの古樹の大枝に、
鐘がかかってゐるばかり。
ひとつの林檎をもいだ子は、
ひとつお鐘をならします。
ひとつお鐘がひびくとき、
ひとつお花がひらきます。
七つの星のしたを行く、
馬橇の上の旅びとは、
とおいお鐘をききました。
とおいその音をきくときに、
凍ったこころはとけました、
みんな泪になりました。
詩人正津勉先生の著書『詩人の愛』によると、
林檎畑でひとり果実をもいでいるのが姉(金子みすゞ)で、
「馬橇の上の旅人」は弟(正佑)といいます。
この詩においての「林檎」とは、2人がまだ真実を知らず、
甘美に過ごした頃の記憶。
「鐘」とは、姉から弟への報せだと……。
みすゞはその後、何の気もない男と結婚を強いられました。
彼女はそれに同意。
こうして姉弟の禁じられた愛は幕を下ろしたのです。
しかし、周知のように昭和5年、みすゞは睡眠薬をのんで自殺しました。
26歳という若さで……。
禁じられた愛はどこへ向かうのでしょう。
律される禁が、どうにもできない事実を起因としているなら、
人はなす術もありません。
それでもなお相手を愛し続けるのか、
それとも諦めざるを得ないのか……。
運命は過酷なものです。
――みんな泪になりました。
誰も知らない雪国でひとり林檎をもぎ、
その果実は涙で濡れています。
参考文献
正津勉著『詩人の愛』河出書房新社
※正津勉先生の文学ゼミサイト
http://homepage1.nifty.com/B-semi/
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