400ページ、一気読みしたい思いはあれど時間なく、少しずつ読み進めてやっと読了。
大好きな 原田マハ作品、キュレーターらしい彼女の、美術を題材にした作品は本当に面白い!
≪ たゆたえども沈まず ≫ 著 : 原田 マハ
19世紀末のパリ。印象派の台頭と、ジャポニズムの流行。
パリ美術界には、この2つの流れが起ころうとしていた。
そんな時代、パリでジャポニズムを浸透させようと、画商として奮闘する2人の日本人、林忠正 と 加納重吉。
そしてパリの画廊で働く、兄 フィンセント・ファン・ゴッホ と 弟 テオ。
この兄フィンセント・ゴッホは、画家になる夢を抱いていた。
そんな兄を支える弟 テオと、2人の日本人画商、4人はジャポニズムを介在して友情で結ばれていく。
この物語は、弟 テオの兄 ゴッホへの献身を主軸に据え、それぞれの人生を描く。
不遇な時代を過ごし心を病み、ついには拳銃自殺をしたゴッホ。
テオの哀しみは余りにも大きかった。
ゴッホの遺した絵の中で、テオは「星月夜」に心を奪われた。
[星月夜…この本の表紙の絵。N・Y美術館蔵]
「永遠の入り口に立っているかのような糸杉はフィンセント。セーヌのほとりに一人佇み、いつか訪れる朝を待っている孤高の画家」
と筆者は書く。
本のタイトル「たゆたえども沈まず」・・・セーヌをゆく船乗りたちは、この言葉をプレートに書いて掲げていた。
流れに逆らわず、激流に身を委ね、決して沈まず、やがて立ち上がる。それこそが「パリ」なのだと。
パリに憧れたゴッホもまた、パリのように生きたかったに違いない。