日本株と投資信託のお役立ちノート

株や投信の運用に役立つ記事を探します。
(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

動いた「クジラ」が主役 GPIFの動向、市場を左右

2015年01月29日 | 金融:機関投資家・ファンド
〔15.1.29.日経新聞:マーケット総合1面〕
 

 前日の米国株安にもかかわらず、28日の日経平均株価は小幅続伸した。最大の理由は需給要因。先週末から続く公的年金の買いが相場を押し上げている。資金規模が大きく「クジラ」と呼ばれる公的年金の始動は、海外要因の影響を受けがちだった日本株が正常に向かう一歩だ。だが引き起こす波も大きいだけに、市場の先導役としての責務も問われる。

 「外国人の売買は比較的静か。いたずらに海外要因に振らされず、ここ数日は国内要因で動く地合いに変わっている」。ある大手証券のトレーダーの話だ。日本株の「海外離れ」を象徴するかのように、米国株安を受けて安く始まった日経平均は次第に切り返した。

 底堅いのは買っている主体がいるからだ。「クジラさんの噂を聞いていないんですか」。探ると、市場関係者の一人がささやいた。

 クジラとは「池の中の鯨」から、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に市場参加者らが付けた符丁。関係者の話を総合すると、先週23日から本格的に動き始め、この日まで4営業日の買い金額は合計2000億円近いという。28日も大型株約100銘柄に買いを入れたといい、日中継続するGPIFの買いに持ち上げられ、売り方も買い戻しを強いられた。

 GPIFは昨年10月末、新しい資産構成比率を公表。国内債の比率を大きく減らす一方で、国内株は9月末の18%から25%まで高めていく計画だ。発表後は、株価指数や中小型株に下値でこつこつ買いを入れていたようだが、個別の大型株にまとまった買いを入れて相場を動かすような買い方は今回が初めてだ。

 日銀の上場投資信託(ETF)買いと合わせ、GPIFの株比率引き上げの動きを「官製相場」と皮肉る向きもあるが、日本株市場の物色動向を正常に向かわせる「功」の側面も大きい。「利益がちゃんと出て、値動きが激しくない低リスクの成長株がきちんと評価される相場傾向を後押ししている」。UBS証券の大川智宏氏の指摘だ。

 日本株は割安株投資や高リスク株の短期売買が優位な展開が長らく続いてきた。しかしGPIFは自己資本利益率(ROE)が高い高収益銘柄を多く組み入れた「JPX日経インデックス400」を新たに採用。これが契機となり、昨年は低リスクの成長株へ投資した運用成績が最も高かった。GPIFはしっかりした銘柄にお金が流れる道筋をつけたといえる。

 半面、一挙一動が相場に与えるインパクトが大きいだけに、GPIFの動きに神経質な市場参加者が多いのも確かだ。昨年3月24~25日に一気に実施した大規模な保有株の入れ替えで市場は混乱。GPIFが組み入れから外した銘柄群を保有していた他の年金基金や投資信託の運用者らは多額の損失を強いられた。

 良くも悪くも、GPIFの動向は日本株市場の動向を今後も左右し続けるだろう。足元の買い局面では個別株の値動きに影響を与えすぎとの声も市場から漏れる。「良き市場」をつくるために、運用体制のガバナンス(統治)の整備を含め、GPIFにプロとしての規律が求められるのは言うまでもない。 (川崎健)

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