日本株と投資信託のお役立ちノート

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(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

クリミア編入1年(下)米国の「軽さ」浮き彫り 抑止力低下、揺らぐ秩序

2015年03月20日 | ロシア&CIS
〔15.3.20.日経新聞:国際1面〕


 オバマ米大統領は9日、ホワイトハウスで欧州連合(EU)のトゥスク大統領と会談した後にこう強調した。「ウクライナの主権と領土保全の原則を確認した」。だが、オバマ氏の口からは「クリミア」という単語は聞かれなかった。返還が現実的でない以上、クリミアに言及することは自らの価値を下げかねないと判断している節もある。

ロシアは無視
 警告する米国とそれを無視するロシア――。オバマ氏はロシアに「軍事介入は代償を伴う」といった文句を多発するが、ロシア側が歩み寄る姿勢は皆無だ。ロシアはクリミア編入後、米欧の制裁にもかかわらず、ウクライナ東部への軍事介入に突き進んだ。すごんでみても平然と受け流され、米国の「軽さ」が浮き彫りになった。

 ロシアの軍事介入を招いた昨年2月のウクライナの政変以降、オバマ氏とロシアのプーチン大統領は国際会議の機会を利用して2回会い、4回電話で協議した。会話はできるが、落としどころを探っている風はない。こんな「言い放し」の関係が1年という時間を空費させた面は否めない。

 ウクライナ危機が鮮明にした米国の抑止力の低下は、ほかの問題にも波及している。「壊滅させる」とオバマ氏が言明しても、イラクとシリアにまたがる中東の過激派「イスラム国」の勢いは止まらない。イラクでは政府軍と協力できても、米国が敵視するアサド政権が居座るシリアでは共闘できないことも一因だ。

 ロシアはそのアサド政権を支援する。今月末に枠組み合意の期限を迎える米欧など6カ国とイランの核協議を巡っても同国への影響力のあるロシアの役割は大きい。ケリー米国務長官が再三、ロシアのラブロフ外相に接触する背景にはロシアの協力が不可欠な中東情勢が複雑に絡む。

 冷戦後、米国はロシアを組み入れた世界の秩序を主導してきた。クリミア編入を機にロシアを主要8カ国(G8)の枠組みから排除したが、完全に孤立させることはできない。中国の台頭やテロの脅威など、米ロを取り巻く環境は、米ソが世界の覇権を争った冷戦期とは大きく異なる。

対峙する米ロ
 ウクライナ危機以前は米ロはぎくしゃくしながらも接点を模索した。例えば2013年。シリア問題を巡ってオバマ氏がいったん表明した軍事介入を見送った際にはロシアがシリアの化学兵器をすべて廃棄させる枠組みを提案し、米側に助け舟を出した。

 米当局からスパイ活動取締法違反などの容疑で訴追された米中央情報局(CIA)元職員エドワード・スノーデン容疑者の亡命事件。ロシア当局は米側の反発を考慮し、最初は期間1年の臨時亡命許可証の発給しか認めなかった。

 秩序をともに形成した米ロが対峙すれば、自らの足元を含めて揺らぐのは当然の帰結ともいえる。ウクライナ問題でのちぐはぐなロシアへの対応を見ると、米側はこの結果を予測していなかったようにもみえる。

 「米国は世界の警察ではない」と言い放ったオバマ氏から政権が代われば、米国の「軽さ」は消えるのか。世界とどう向き合うのかは、16年の米大統領選の最大のテーマでもある。 (ワシントン=吉野直也)

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