〔15.3.3.日経新聞:1面〕
シャープは主力取引先のみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行に資本支援を要請する方針を固めた。計1500億円規模の債務の株式化などが柱となる。シャープは2015年3月期の連結最終赤字が不振事業の損失処理で従来予想の300億円から1千億円超に膨らむ見通し。業績回復のため国内の電子部品4工場の閉鎖や太陽電池事業の撤退を検討する。主力行の支援で今後のリストラに耐えられる財務基盤を整えて経営再建を急ぐ。(関連記事企業1面に)
シャープの有利子負債は14年末時点で約1兆円。財務の健全性を示す自己資本比率は10%程度と低迷している。15年3月期は、太陽電池などの不採算事業で生産設備などの減損処理を追加する方針だ。このため最終赤字額は300億円の予想から大幅に悪化し、1千億円を超える。
主力の液晶パネルは中国勢などとの価格競争が激しさを増している。白物家電なども円高に対応するため生産を海外に移したが、急速な円安で逆に国内への輸入コストが膨らんでいる。16年3月期もリストラ費用の発生で最終赤字となる公算が大きい。債務超過に陥りかねないため資本増強が急務になっている。
同社は週内にも主力2行に対して業績見通しや構造改革を説明する。両行は改革案を精査して支援を判断する。折半で引き受ける案を検討する。一部の債務を優先株などの資本に振り替える「デット・エクイティ・スワップ(DES)」と呼ぶ手法を軸に協議に入る。合意できれば16年3月期中に債務の株式化を実行する方向だ。
シャープは2行からの資本支援と並行して、第三者割当増資などによって約300億円を募る方針だ。シャープの株式3%を保有する韓国サムスン電子など国内外の電機大手に出資を要請する可能性がある。主力2行と合わせて2千億円近い資本を増強して、財務基盤を立て直す考えだ。
シャープは主力2行の資本支援を前提に5月中旬に経営再建策をまとめる。まず電子部品の拠点の縮小を検討する。三原工場(広島県三原市)は年内にも閉鎖する。稼働率が落ち込む福山第1~第3工場(同県福山市)も閉鎖の候補とする。三原、福山の両拠点の従業員は全体で約2千人。同社が国内の主要工場を閉めるのは初めて。
太陽電池事業は撤退を視野に売却先の選定を進める。テレビ事業では北米やオーストラリアなどから撤退する方向だ。メキシコのテレビ工場は売却する。
シャープはこれまで従業員3千人の削減や欧州家電事業の撤退などに取り組んだが収益改善に結びついていない。ほぼ手つかずの国内事業の見直しが必要になっている。
▼債務の株式化 金融機関からの借入金など債務の一部を優先株などに切り替えて企業再建につなげる手法。デット・エクイティ・スワップ(DES)と呼ばれる。負債を圧縮すると同時に株主資本を増やす効果がある。債権放棄とは異なり、株式などを受け取る金融機関も経営再建が軌道に乗れば値上がり益や配当などが期待できる。
〔企業1面〕
▽シャープ、国内4工場の閉鎖検討 太陽電池撤退も 経営改革へ事業見直し
シャープが国内事業の見直しに乗り出す。国内4工場の閉鎖や経営の柱と期待した太陽電池事業の売却・撤退を検討する。太陽電池事業の生産設備などの損失処理を積み増すことから、2015年3月期の連結最終赤字は1千億円を超える見通し。主力取引行の資本支援を得て16年3月期中に構造改革を実行する構え。シャープの経営再建は正念場を迎えた。(1面参照)
シャープは13年秋、公募増資などで1400億円弱を調達。自己資本比率は昨年9月末に10%台に回復した。ただ、設備の減損処理などで今後必要な資金は総額3千億円規模に膨らむ可能性がある。「市場で集めるのは難しい」(証券大手幹部)ため主要2行に資本支援を要請する。
シャープは大型液晶パネルの巨額投資が失敗し12年3月期からの2年間で9千億円超の赤字を計上した。大規模なリストラは約3千人の希望退職以外手つかずだった。
14年3月期には、中国スマートフォン(スマホ)メーカー向け液晶パネルや太陽電池が好調で1千億円を超える営業黒字を確保した。いずれも競争が激しく一時的な利益の改善にとどまった。これがリストラの遅れにつながった面は否めない。
同社が5月にまとめる経営再建策で柱となるのが電子部品の生産再編だ。閉鎖する方向の三原工場(広島県三原市)は発光ダイオード(LED)を生産し約400人が勤務する。決定すれば同社の国内主力工場として初の閉鎖となる。
福山第1~4工場(同福山市)はスマホ向けセンサー部品などを生産しているが平均稼働率は4割程度。第1~3工場を閉鎖すれば生産ラインを第4工場に集約し稼働率を高められる。
太陽電池は中国勢との競争激化で収益確保が難しい。同社は撤退を視野に15年3月期に同事業の減損処理をする。今期の赤字拡大の要因だ。同社は20年まで材料のシリコンを約2千億円調達する契約が残るもよう。購入価格は現在の市場価格より高い。契約の見直しではさらに損失処理を迫られる可能性もある。
高橋興三社長の基本戦略は全事業の黒字化だ。昨年半ばまで「(リスクの高い)液晶以外に何本かの足が必要」という言葉に説得力があった。しかし白物家電など液晶パネル以外の主要製品の海外生産シフトが、急速に進んだ円安で裏目に出る。太陽電池も中核部品は海外で生産しており、円安で輸入コストが上昇。15年3月期は主力事業の収益が軒並み悪化した。
屋台骨となるはずの中小型パネルも、中国向けで価格競争が激化し利益率は大幅に低下している。残された選択肢は、不採算事業の撤退や生産拠点の閉鎖という痛みを伴う抜本的な改革だけとなった。
5月に発表する経営再建策では、連結ベースで約5万人の従業員の処遇も焦点となってくる。業績の不振が長引けば、優秀な人材の流出も招きかねない。再建策の失敗はもう許されない。
シャープは主力取引先のみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行に資本支援を要請する方針を固めた。計1500億円規模の債務の株式化などが柱となる。シャープは2015年3月期の連結最終赤字が不振事業の損失処理で従来予想の300億円から1千億円超に膨らむ見通し。業績回復のため国内の電子部品4工場の閉鎖や太陽電池事業の撤退を検討する。主力行の支援で今後のリストラに耐えられる財務基盤を整えて経営再建を急ぐ。(関連記事企業1面に)
シャープの有利子負債は14年末時点で約1兆円。財務の健全性を示す自己資本比率は10%程度と低迷している。15年3月期は、太陽電池などの不採算事業で生産設備などの減損処理を追加する方針だ。このため最終赤字額は300億円の予想から大幅に悪化し、1千億円を超える。
主力の液晶パネルは中国勢などとの価格競争が激しさを増している。白物家電なども円高に対応するため生産を海外に移したが、急速な円安で逆に国内への輸入コストが膨らんでいる。16年3月期もリストラ費用の発生で最終赤字となる公算が大きい。債務超過に陥りかねないため資本増強が急務になっている。
同社は週内にも主力2行に対して業績見通しや構造改革を説明する。両行は改革案を精査して支援を判断する。折半で引き受ける案を検討する。一部の債務を優先株などの資本に振り替える「デット・エクイティ・スワップ(DES)」と呼ぶ手法を軸に協議に入る。合意できれば16年3月期中に債務の株式化を実行する方向だ。
シャープは2行からの資本支援と並行して、第三者割当増資などによって約300億円を募る方針だ。シャープの株式3%を保有する韓国サムスン電子など国内外の電機大手に出資を要請する可能性がある。主力2行と合わせて2千億円近い資本を増強して、財務基盤を立て直す考えだ。
シャープは主力2行の資本支援を前提に5月中旬に経営再建策をまとめる。まず電子部品の拠点の縮小を検討する。三原工場(広島県三原市)は年内にも閉鎖する。稼働率が落ち込む福山第1~第3工場(同県福山市)も閉鎖の候補とする。三原、福山の両拠点の従業員は全体で約2千人。同社が国内の主要工場を閉めるのは初めて。
太陽電池事業は撤退を視野に売却先の選定を進める。テレビ事業では北米やオーストラリアなどから撤退する方向だ。メキシコのテレビ工場は売却する。
シャープはこれまで従業員3千人の削減や欧州家電事業の撤退などに取り組んだが収益改善に結びついていない。ほぼ手つかずの国内事業の見直しが必要になっている。
▼債務の株式化 金融機関からの借入金など債務の一部を優先株などに切り替えて企業再建につなげる手法。デット・エクイティ・スワップ(DES)と呼ばれる。負債を圧縮すると同時に株主資本を増やす効果がある。債権放棄とは異なり、株式などを受け取る金融機関も経営再建が軌道に乗れば値上がり益や配当などが期待できる。
〔企業1面〕
▽シャープ、国内4工場の閉鎖検討 太陽電池撤退も 経営改革へ事業見直し
シャープが国内事業の見直しに乗り出す。国内4工場の閉鎖や経営の柱と期待した太陽電池事業の売却・撤退を検討する。太陽電池事業の生産設備などの損失処理を積み増すことから、2015年3月期の連結最終赤字は1千億円を超える見通し。主力取引行の資本支援を得て16年3月期中に構造改革を実行する構え。シャープの経営再建は正念場を迎えた。(1面参照)
シャープは13年秋、公募増資などで1400億円弱を調達。自己資本比率は昨年9月末に10%台に回復した。ただ、設備の減損処理などで今後必要な資金は総額3千億円規模に膨らむ可能性がある。「市場で集めるのは難しい」(証券大手幹部)ため主要2行に資本支援を要請する。
シャープは大型液晶パネルの巨額投資が失敗し12年3月期からの2年間で9千億円超の赤字を計上した。大規模なリストラは約3千人の希望退職以外手つかずだった。
14年3月期には、中国スマートフォン(スマホ)メーカー向け液晶パネルや太陽電池が好調で1千億円を超える営業黒字を確保した。いずれも競争が激しく一時的な利益の改善にとどまった。これがリストラの遅れにつながった面は否めない。
同社が5月にまとめる経営再建策で柱となるのが電子部品の生産再編だ。閉鎖する方向の三原工場(広島県三原市)は発光ダイオード(LED)を生産し約400人が勤務する。決定すれば同社の国内主力工場として初の閉鎖となる。
福山第1~4工場(同福山市)はスマホ向けセンサー部品などを生産しているが平均稼働率は4割程度。第1~3工場を閉鎖すれば生産ラインを第4工場に集約し稼働率を高められる。
太陽電池は中国勢との競争激化で収益確保が難しい。同社は撤退を視野に15年3月期に同事業の減損処理をする。今期の赤字拡大の要因だ。同社は20年まで材料のシリコンを約2千億円調達する契約が残るもよう。購入価格は現在の市場価格より高い。契約の見直しではさらに損失処理を迫られる可能性もある。
高橋興三社長の基本戦略は全事業の黒字化だ。昨年半ばまで「(リスクの高い)液晶以外に何本かの足が必要」という言葉に説得力があった。しかし白物家電など液晶パネル以外の主要製品の海外生産シフトが、急速に進んだ円安で裏目に出る。太陽電池も中核部品は海外で生産しており、円安で輸入コストが上昇。15年3月期は主力事業の収益が軒並み悪化した。
屋台骨となるはずの中小型パネルも、中国向けで価格競争が激化し利益率は大幅に低下している。残された選択肢は、不採算事業の撤退や生産拠点の閉鎖という痛みを伴う抜本的な改革だけとなった。
5月に発表する経営再建策では、連結ベースで約5万人の従業員の処遇も焦点となってくる。業績の不振が長引けば、優秀な人材の流出も招きかねない。再建策の失敗はもう許されない。