日本株と投資信託のお役立ちノート

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(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

米、アフガン戦闘任務終了 治安の空白地帯拡大 ガニ政権、統治なお不安定

2014年12月29日 | 中東
〔14.12.29.日経新聞:国際面〕
 

 【ニューデリー=岩城聡、ワシントン=川合智之】駐アフガニスタン国際治安支援部隊(ISAF)による対テロ戦闘任務が年内に終了し、主力の米軍も戦闘部隊を撤退させる。しかし、反政府勢力タリバンの勢いは衰えず、治安の「空白地帯」が拡大する懸念は広がるばかりだ。米国には再介入を迫られたイラクの二の舞いになるとの懸念もくすぶり、13年に及んだ戦いの「責任ある終結」(オバマ米大統領)はなお見えてこない。

 ISAFは28日、カブールで、アフガンでの戦闘任務終結を記念する式典を開催した。ジョン・キャンベル司令官は兵士らに「我々はアフガンの人々を絶望の闇から引き上げた」と胸を張った。ハワイで休暇中のオバマ氏も25日に海兵隊基地を訪れ「我々は安全になった。(アフガンが)再びテロ攻撃の供給源になることはない」とした。

 オバマ氏はイラク、アフガンでの戦争終結を政権の遺産(レガシー)と位置づけてきた。

 一時は10万人規模に達した駐留米軍を2015年に1万800人に減らし、16年末までに完全撤退する。15年以降、現地に残る部隊はアフガン治安部隊の訓練や支援に徹する。

 しかし、アフガンでの治安は悪化の一途をたどっている。国連アフガニスタン支援団(UNAMA)によると09年の民間人の死傷者は6000人弱だったが今年は11月の段階ですでに9600人を超えた。

 11月末にはカブールの英国大使館の車両に爆薬を積んだ車が突っ込み、英国人1人を含む少なくとも5人が死亡した。例年、冬はタリバンの攻撃が小康状態に入るが「今年はむしろ活発化している」(外交筋)。

 一方で、今年9月に発足したアフガン新政権の足元はぐらついている。ガニ大統領とアブドラ行政長官の対立が続き、3カ月たった今も、国防相を含め一人の閣僚も任命できていない。米国は今月、15年の駐留数を当初計画の9800人から千人増やすことを余儀なくされた。

 パキスタン、アフガニスタンの国境地帯では、中東で支配地域を広げる過激派「イスラム国」が宣伝用のパンフレットを配布するなど宣伝活動を開始。タリバンなどと連携する動きも見せる。テロの拡散はガニ新政権をさらに弱体化させるとともに、地域の安全保障にも深刻な影響を与えかねない。

 イラクでは11年の米軍撤退後、民族・宗派対立が悪化した間隙を突く形で、過激派「イスラム国」が台頭。米は空爆による再介入を迫られた。 


対テロ戦、出口なき米軍

 2001年10月から13年に及ぶ米軍のアフガニスタンでの作戦は、約240年間にわたる米軍の歴史の中で最も長期間の任務となっている。米軍の「テロとの戦い」の「出口」はなお見えず、治安状況が改善しないアフガン情勢はアジアや欧州の軍事バランスにも影を落としている。

 今年9月、アフガン政府軍の兵士3人が研修先の米マサチューセッツの米軍基地から脱走し、カナダに難民申請しようとした事件が起きた。兵士は帰国後、タリバンに殺害されることを恐れたという。事件は、将来のアフガンの治安維持を担う人材を育てようとしていた米軍を落胆させた。

 5月に米軍からアフガン政府部隊に治安維持任務が引き継がれた南部地域では、直後からタリバンが攻勢を強める。米軍が完全撤収すれば、現在のアフガン政権がベトナム戦争末期の米軍撤退後に崩壊した旧南ベトナム政権のように総崩れになる恐れもある。

 米国がアフガン復興に使った総経費は今年夏時点で1040億ドル(約12兆5000億円)と、第2次世界大戦後に米国が西欧復興に投じた「マーシャル・プラン」の額を現在価値に換算した1034億ドルを上回る。アフガンでは米兵だけでも2000人以上の人命が失われた。イラク駐留米兵などの間では「自分たちはこれまで一体何のために戦ってきたのだ」との虚無感や、政治への懐疑心も広がりつつある。

 一方、アフガンと関係を強めつつあるのが中国だ。アフガンのガニ大統領は10月に訪中し、習近平国家主席と会談。中国は経済や治安面でガニ政権に協力する構えだ。「我々が手にしたアフガンへの影響力を中国に譲り渡してはならない」。米国の駐アフガン大使や国連大使を歴任したハリルザド氏は訴える。

 米軍は国際テロ組織アルカイダとタリバンを打倒し、テロの根を断とうとしたが、泥沼にはまった。気がつけばイラクやシリア、アフリカ、欧米などに「テロの温床」は拡散。米国にとってアフガンは、世界規模でのテロとの戦いに苦戦する象徴でもある。

 米軍が体力を消耗すれば、アジア太平洋や欧州方面での突発事態の際に振り向けられる兵力も限られてしまう。日本にとってアフガンで起きていることは、遠いようで実は自国の安全にも深くつながっている。

(編集委員 高坂哲郎)
 

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