日本株と投資信託のお役立ちノート

株や投信の運用に役立つ記事を探します。
(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

(2931ユーグレナ) ミドリムシで空を飛ぶ 抽出オイル燃料に、2020年実用化へ増殖作戦

2015年01月11日 | エネルギー:化石以外
〔15.1.11.日経新聞:日曜に考える2面〕
 
右:ミドリムシの顕微鏡写真=ユーグレナ提供

 微生物の「ミドリムシ」が飛行機の燃料になる――。ミドリムシといえば小学校の理科の授業で習った記憶しかないという人も多いだろう。実はミドリムシから抽出した油で模型の飛行機がすでに飛んでいるというのだ。灯油に比べ大幅なコスト削減が見込める燃料革命が静かに進む。

 東京から飛行機の直行便で3時間半。日本列島の南端に位置する八重山諸島の一つ、沖縄県の石垣島にユーグレナの生産技術研究所はある。ユーグレナはミドリムシの学名で、2014年12月に東証マザーズから1部に昇格した。敷地の中に入ると、緑色の液体が入った巨大なプールがいくつも点在している。これがミドリムシなのだろうか。

培養場所は「秘密」
 「クロレラです」。生産技術研究所の中野良平所長が説明する。健康食品として知られるクロレラ。ミドリムシとクロレラは同じ微細藻の一種だという。同社はクロレラを生産する子会社の敷地内に2012年、研究所を開設。クロレラの生産技術を応用してミドリムシの大量培養に向けて研究・開発している。ではミドリムシはどこで培養しているのか。

 「それは秘密です」と中野さん。東京ドーム2個分に相当する広大な敷地の中のどこかで生産しているのは確かだとは認めた。石垣島はミドリムシの生育に適した気候だ。石垣島の年間平均気温はセ氏約24度。ミドリムシは28度前後が最も安定して生産できるという。

 すでにミドリムシを燃料にして空を飛べることは証明されている。しかし、飛行機向けに使うとすると、大量の燃料を必要とする。大量培養はもちろん、コストを抑えた製造、供給方法を開発できなければ実用化は難しい。

 そこで、ユーグレナはJX日鉱日石エネルギーや日立製作所などと共同開発に着手。現在は屋外に縦8メートル、横3メートルほどの水槽を設置し、時計回りに水が緩やかに流れる仕組みをつくり、ミドリムシを増殖させる実験に取り組んでいる。

 これまでに屋外でミドリムシが最大で1日に1平方メートルあたり約25グラムの増殖速度を得られたことを確認した。増殖はさんさんと降り注ぐ太陽光が不可欠。夜間になると減ってしまう現象をできるだけ抑えなくてはならない。実用化にはこの2倍の1日50グラムの増殖を達成する必要がある。敷地内には小さな水槽を複数置き、水の流れの速さを変えたり、壁を透明にして太陽光を当てたりするなど工夫を凝らす。

 採取したミドリムシは乾燥させて粉末状にする。これに有機溶剤を入れ、遠心分離などの処理を施すことでミドリムシのオイルが出来上がる。だが、1グラムのミドリムシの粉末でできるオイルはわずか0.3ミリリットルしかない。「新しい増殖方法を生み出すため、日々研究しています」と中野さんは言う。

原点は「栄養失調を救う」
 そもそもミドリムシとは何なのか。名前は「ムシ」だが、昆虫ではない。日本中の水たまりや池、川に生息しており120種類以上あることが確認されている。体長はわずか0.05ミリメートルほどで、体内の葉緑素で光合成をして植物性と動物性の両方の栄養素を作り出す。9種類すべての必須アミノ酸、14種のビタミン類など59種類の成分を含む。細胞壁がなく人の体内で効率よく栄養を吸収できるため、コンビニエンスストアやスーパーでミドリムシを取り入れた食品などが販売されている。

 ユーグレナの出雲充社長とミドリムシの関係は大学時代にさかのぼる。大学時代にボランティアでバングラデシュを訪問。貧困にあえぐ現地の人々を目の当たりにし、どうしたら栄養失調がなくなるだろうかと考えるようになった。そこで帰国後、学内を探し回って見つけたのがミドリムシだった。卒業後は銀行に就職したが、ミドリムシへの思いを断ち切れず、わずか1年で退職。2005年に大学時代の友人らとユーグレナを設立した。「ミドリムシで世界を救う」のが、出雲社長が掲げる目標だ。

 一大事業のジェット燃料については18年に実証実験を成功させ、20年には実用化にこぎ着けるとのロードマップを描く。「東京五輪が開かれる年。世界中の人々をミドリムシ燃料で飛ぶ飛行機でお招きしたい」(出雲社長)。世界の祭典に日の丸技術がまた一つ息づくだろうか。 (電子整理部 鈴木洋介)

全文を電子版に▼テクノロジー→ニュースプラス→再興JAPAN 

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。