日本株と投資信託のお役立ちノート

株や投信の運用に役立つ記事を探します。
(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

日の丸鉄道 世界を走る(下)インフラ受注、経済政策の要 日本勢一丸、総合力で勝負

2015年01月16日 | 17.輸送用機器
〔15.1.16.日経新聞:企業1面〕


 マンハッタンを中心に市内ほぼ全域を網羅し、市民の足となっているニューヨーク市地下鉄。米国最大の地下鉄で最も多く走る車両は、川崎重工業製だ。これまで2000両以上を供給し、高評価がワシントン地下鉄の受注を呼び込んだ。現地2工場はフル生産で、「次の受注が決まればラインを増設する」(車両担当の金花芳則常務)。

 全米でカナダのボンバルディアとトップシェアを争う川重を支えるのは、「日本式」の移植だ。車両故障による運行遅延を減らすため、呼ばれたら即、足を運ぶ姿勢を植え付けた。

 足元で狙うのは、新幹線の輸出。案件の多い地下鉄や通勤車両などが主戦場だが、「新幹線を輸出する意義は大きい」(村生弘営業本部長)。カリフォルニア州では東日本旅客鉄道(JR東日本)などと組み、入札への参加を表明済みだ。

 日立製作所は設計や部品を共通化した標準車両で世界を攻める。日本式のオーダーメード方式を改め、コスト低減や納期短縮につなげる。同方式を採用した通勤車両「AT200」では、英国で234両の優先交渉権を取得した。

 鉄道整備で課題となるのは資金面だ。高速鉄道では1兆円超の予算が当たり前。資金確保がままならずプロジェクトが停滞、遅延するケースは少なくない。川重も香港やシンガポールなど資金面に不安の少ない地域で重点的に受注活動を進める。政府はより広い地域で鉄道に参画できる仕組みづくりに乗り出した。

 海外交通・都市開発事業支援機構(通称インフラ輸出支援機構)。約1100億円の投資枠を使い、民間企業と連携してアジアや中南米のインフラ開発案件に投資する。政府として関与し、民間企業のリスクを分担する。

 政府は海外のインフラ受注を2020年までに30兆円まで拡大することを目標として掲げる。現状の3倍となる高い目標達成の核となるのが、鉄道だ。「トップ外交では常に鉄道インフラにまず触れる」(国土交通省の長井総和鉄道局国際課長)力の入れようだ。

 欧州鉄道産業連盟によると13年で21兆円程度だった鉄道市場は19年までに25兆円まで拡大する。中でも50を超える都市で地下鉄計画が浮上するインドなど、アジアの成長が著しい。

 日本は政府開発援助(ODA)などでアジアのインフラ整備を支援してきた。ただ「顔が見えない支援だった」(日本鉄道車両輸出組合)。インドでは地下鉄整備を円借款で実施しながら、「顔」となる車両は韓国・現代ロテムなど海外勢に奪われた。インフラ支援機構を通じ、日本企業が参画する仕組みの構築を急いでいる。

 タイ・バンコクの北部を走るパープルライン。JR東日本は東芝、丸紅と共同で事業参画する。16年以降の運行を軌道に乗せれば、車両、システム、保守を丸ごと請け負う代表例となり得る。JR東の冨田哲郎社長は「優れたサービスを世界で展開する」とさらなる海外展開を模索する。

 競争力のあるもの同士が組まなければ、保守などのノウハウに優れる独シーメンスなど世界大手には勝てない。各社それぞれが競争力を補完できるほど強くなって初めて、日の丸鉄道として海外に売り込める時が来る。

 岩戸寿が担当しました。 

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。