日本株と投資信託のお役立ちノート

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(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

台湾TSMC、好調下の憂鬱 半導体受託、最高益だが… サムスン猛追/スマホ減速、カリスマトップ高齢化

2015年01月16日 | 台湾・香港
〔15.1.16.日経新聞:アジアBiz面〕
 

 半導体受託生産でトップを走る台湾積体電路製造(TSMC)の業績が好調だ。15日に発表した2014年通期決算で純利益は1兆円近くに達した。だが、将来に向けた見通しには不透明感も漂う。業界4位の韓国サムスン電子が技術開発で猛追し、米アップルの受注を一部、TSMCから奪い返した。スマートフォン(スマホ)市場の成長鈍化や、カリスマ経営者である張忠謀董事長の交代のタイミングも悩ましい。TSMCの独走はこれからも続くのか。

 14年通期の純利益は2639億台湾ドル(約9800億円)と13年比4割増加し、3年連続で最高益を更新。スマホ市場の成長を追い風に売上高は7628億台湾ドルと3割増えた。だが、絶好調の業績の陰で、足元には不安材料もちらつく。

 ■アップルの受注争奪 「最先端品の15年のシェアは主要な競合相手を下回るだろう」。張董事長は15日、台北市内での決算説明会でサムスンを念頭に最先端品市場でのシェア争いの厳しい見通しを示した。システムLSI(大規模集積回路)の回路の微細化で常に先行し、主要顧客をがっちり囲い込んできた同社にとって異例の事態だ。

 半導体は回路の線幅を細くすることで、高機能化や生産コストの低減が可能になる。次世代品は線幅が14~16ナノ(ナノは10億分の1)メートルの競争だ。サムスンは14年10~12月期に14ナノ品の量産をスタートしたが、TSMCの16ナノ品の量産は15年7~9月期と出遅れる。

 サムスンはこの最先端品でアップルからの受注を確実にした。「iPhone(アイフォーン)」などの頭脳となるCPU(中央演算処理装置)を生産する。

 サムスンは14年のアップルの新製品向けCPUは全量をTSMCに奪われたが、15年は「最大で5割超を受注する」(台湾のアナリスト)。この影響でTSMCの15年の収益の伸びは14年を下回る見通しだ。

 ■値引き競争の恐れ 米調査会社のIDCによると、14年のスマホの世界出荷台数見通しは前年比26%増の約12億9千万台。新興国でも普及が進み、15年の成長率は12%にとどまる見込み。スマホ市場の鈍化で、今年以降はスマホ業界でもメーカーの淘汰が始まると予想されている。

 連結売上高の5割をスマホ用が占めるTSMCも、ポスト・スマホ時代を担う新事業を模索するが、太陽電池と並んで期待した発光ダイオード(LED)事業は9日に売却と撤退を発表した。中国メーカーなどとの価格競争で赤字から抜け出せなかった。半導体受託生産では米グローバルファウンドリーズなど下位メーカーは「TSMCよりも1~2割安い受託加工賃を提示している」(日系半導体メーカー)。

 スマホ依存が強いままでは値引き競争に巻き込まれる可能性もある。

 ■後継体制課題に TSMCの創業者で「台湾半導体産業のゴッドファーザー」とも呼ばれる張董事長はすでに83歳。自宅のトレーニングマシンでウオーキングに励むなど体力維持に努めるが、同氏の健康状態や退任のタイミングは市場の大きな関心事だ。

 張董事長は兼務していた最高経営責任者(CEO)を13年に退任し、劉徳音氏(60)と魏哲家氏(61)の2人の総経理を共同CEOに就かせた。最終的には2人のいずれかが董事長を継ぐもよう。だが、CEO退任を明言した翌日に株価が7%も下落した。カリスマ経営者として名高いだけに、退任となれば社内外の動揺は大きそうだ。


今年の設備投資、最大に 中国新工場も
 台湾積体電路製造(TSMC)は15日、2015年の設備投資額を115億~120億米ドルと過去最大にすると発表した。14年の約95億ドル(約1兆1200億円)から2~3割の積み増しになる。最新鋭設備を整え、下位メーカーの追撃をかわす攻めの戦略を描く。

 注目された中国での新工場について、張忠謀董事長は同日、「検討している」と表明した。中国の新工場は直径300ミリウエハーを使った先端工場になる見通し。合弁など方式や時期は未定だ。

 台湾当局は中国への技術流出などを懸念して技術提供を1世代前までに規制しており、新工場では旧世代の28ナノメートル技術を活用する予定だ。

 中国政府は半導体産業の育成を急いでいる。韓国サムスン電子や米インテルも中国に先端工場がある。TSMCの決断にはライバルへの受注流出を防ぐ狙いもある。   台北=山下和成 

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