(日経10/03:企業面)
日本貨物鉄道(JR貨物)と豊田通商はタイで鉄道貨物輸送に参入する。国際幹線道路「南部経済回廊」と並走し、バンコクや港湾とカンボジア国境を結ぶ貨物線の運営を目指す。タイ国鉄と事業化調査の実施で合意した。物流コスト削減や渋滞対策として鉄道輸送を売り込む。日本政府が資金調達などを支援し、官民一体で高速鉄道に続く鉄道インフラの輸出につなげる。

JR貨物は日本の貨物鉄道の技術やノウハウを移転する
タイ国鉄が持つ線路で事業化調査を始める。この線路はカンボジア国境から同国最大の港湾レムチャバン港とバンコクを結ぶ。総距離は約330キロメートル。実現すれば線路沿いの工業団地で生産した部品を港から輸出したり、輸入した物資をバンコクに輸送したりできる。
タイはトラック輸送が主流で、遅延がちな貨物鉄道の利用はごく一部。今回調査する路線でも貨物線として利用されているのは総距離の2割程度だ。JR貨物は建設コンサルの日本工営と協力し、効率的なダイヤ作成や取り扱いが容易な小型コンテナの導入で定時運行を実現する。タイ国鉄に対しても、鉄道網の整備方法などを助言する。
タイでは物流需要の拡大にインフラ整備が追いついていない。人件費上昇による物流コスト上昇のほか、都市部や港湾付近で渋滞が常態化。タイ政府は競争力維持のためトラック輸送を鉄道で代替する「モーダルシフト」を推進している。
南部経済回廊も物流をトラック輸送に依存しており、産業集積を進めていく上でもリスクに備えた代替手段の整備は喫緊の課題。5月にプラジン運輸相(現副首相)が来日した際も、日本に対して貨物鉄道網の整備支援の要請があった。
貨物鉄道網が整備されれば企業は物流費削減が期待できる。長距離路線では貨物鉄道はトラックより配送費用が安い。渋滞に備え港湾近くに倉庫を借りている企業も多く、こうした費用や手間も抑えられるという。
年末に発足するASEAN経済共同体(AEC)を見据え、域内への輸出拠点としてタイを重視する企業は増加している。安価で定時輸送が可能な貨物鉄道を売り込み、南部経済回廊沿いに工場を持つ企業の物流需要を取り込む。
日本国内の市場が縮小する中、JR貨物は海外での貨物輸送運営を狙いアジア各国で調査を進めていた。同回廊沿いに日系工業団地を造成し企業間物流も手がける豊田通商と連携し受注を狙う。
鉄道インフラ輸出のため日本政府も後押しする。タイは鉄道自由化が進んでいない。国際協力機構(JICA)が中心となりタイの鉄道関連の法整備を支援するほか、海外投融資で低利資金を用意する。
AECの発足で域内の物流はますます増える見込み。JR貨物と豊田通商は将来的にカンボジアやベトナムの路線と接続させ、国境を越えたサプライチェーンの構築を後押しする構想だ。
日本貨物鉄道(JR貨物)と豊田通商はタイで鉄道貨物輸送に参入する。国際幹線道路「南部経済回廊」と並走し、バンコクや港湾とカンボジア国境を結ぶ貨物線の運営を目指す。タイ国鉄と事業化調査の実施で合意した。物流コスト削減や渋滞対策として鉄道輸送を売り込む。日本政府が資金調達などを支援し、官民一体で高速鉄道に続く鉄道インフラの輸出につなげる。


JR貨物は日本の貨物鉄道の技術やノウハウを移転する
タイ国鉄が持つ線路で事業化調査を始める。この線路はカンボジア国境から同国最大の港湾レムチャバン港とバンコクを結ぶ。総距離は約330キロメートル。実現すれば線路沿いの工業団地で生産した部品を港から輸出したり、輸入した物資をバンコクに輸送したりできる。
タイはトラック輸送が主流で、遅延がちな貨物鉄道の利用はごく一部。今回調査する路線でも貨物線として利用されているのは総距離の2割程度だ。JR貨物は建設コンサルの日本工営と協力し、効率的なダイヤ作成や取り扱いが容易な小型コンテナの導入で定時運行を実現する。タイ国鉄に対しても、鉄道網の整備方法などを助言する。
タイでは物流需要の拡大にインフラ整備が追いついていない。人件費上昇による物流コスト上昇のほか、都市部や港湾付近で渋滞が常態化。タイ政府は競争力維持のためトラック輸送を鉄道で代替する「モーダルシフト」を推進している。
南部経済回廊も物流をトラック輸送に依存しており、産業集積を進めていく上でもリスクに備えた代替手段の整備は喫緊の課題。5月にプラジン運輸相(現副首相)が来日した際も、日本に対して貨物鉄道網の整備支援の要請があった。
貨物鉄道網が整備されれば企業は物流費削減が期待できる。長距離路線では貨物鉄道はトラックより配送費用が安い。渋滞に備え港湾近くに倉庫を借りている企業も多く、こうした費用や手間も抑えられるという。
年末に発足するASEAN経済共同体(AEC)を見据え、域内への輸出拠点としてタイを重視する企業は増加している。安価で定時輸送が可能な貨物鉄道を売り込み、南部経済回廊沿いに工場を持つ企業の物流需要を取り込む。
日本国内の市場が縮小する中、JR貨物は海外での貨物輸送運営を狙いアジア各国で調査を進めていた。同回廊沿いに日系工業団地を造成し企業間物流も手がける豊田通商と連携し受注を狙う。
鉄道インフラ輸出のため日本政府も後押しする。タイは鉄道自由化が進んでいない。国際協力機構(JICA)が中心となりタイの鉄道関連の法整備を支援するほか、海外投融資で低利資金を用意する。
AECの発足で域内の物流はますます増える見込み。JR貨物と豊田通商は将来的にカンボジアやベトナムの路線と接続させ、国境を越えたサプライチェーンの構築を後押しする構想だ。