日本株と投資信託のお役立ちノート

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(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

インド「モディ改革」停滞 目玉の土地収用法改正案 審議持ち越し ねじれ議会大荒れ

2015年08月23日 | インド ・ スリランカ
(日経8/23:日曜に考える グローバル面)
 2015年に中国を抜き、主要国で最速の成長率をはじき出すと国際通貨基金(IMF)が予想するインド。昨年5月に就任したナレンドラ・モディ首相は人気抜群で、経済改革「モディノミクス」が急速に進み、海外マネーも集まる――。そんなイメージが陰り始めた。重要政策が議会で阻まれ、実現が危ぶまれる状況に陥っているからだ。


首相が雲隠れ
 「GST(物品・サービスの統一税)導入の真の目的は経済を伸展させるためです……」。地元テレビが映す議会中継。政権ナンバー2のアルン・ジャイトリー財務相の声は、野党議員のヤジにかき消される。

 夏の「モンスーン議会」は8月13日まで17日間、議論が全く進まなかった。「こんなひどい議会を見たのは初めてだ」。外国の投資促進機関職員はつぶやく。

 モディノミクスの目玉政策で、国内外企業の投資障壁を取り除く土地収用法改正案の審議は、会期半ばに打ち切りとなり「冬議会」へ持ち越された。徴税効率を高めるGSTも、16年4月に導入という財務相の約束は風前のともしびだ。



 モディ首相の属するインド人民党(BJP)は14年春の総選挙で圧勝し、30年ぶりに「単独過半数」の与党が誕生。政治・経済が停滞から脱するとの機運も高まった。だが実態は「ねじれ議会」。下院では単独で51%、連立政党を含め約60%を握るBJPだが、上院では単独で20%で、前政権を担った国民会議派(28%)に太刀打ちできない。

 ねじれ解消は難しい。上院議員を選んで送り込む各州議会の選挙で圧勝し続ける必要があるからだ。上院で過半数を押さえるには「あと4年はかかる」と地元記者。首相は高い支持率を保たなければならない。

 そのモディ首相が最近、雲隠れを決め込んでいる。大荒れの議会にモディ首相は会期後半、姿を現さなかった。演説上手で聴衆を魅了する希代の宰相は、なぜ議会で野党と対峙しなかったのか。答えは、野党が追及する「外相スキャンダル」と、BJPの党内勢力図と関係がある。

 インド人に人気のスポーツ、クリケット。プロリーグ「インディアン・プレミア・リーグ」の初代会長で、汚職捜査を逃れるため国外逃亡中のラリット・モディ氏に、スシュマ・スワラジ外相がビザ手配など便宜を図ったとされる。野党は重要政策の審議を妨害し、外相の辞職を迫り続けた。

 「首相はガッツがないから議会に座ることすらできない」。12日の下院で、ラフル・ガンジー国民会議派副総裁はモディ首相個人への攻撃まで展開した。デリー大学のある政治学者は「首相が外相を辞めさせなければ、議会審議は今後も進まない」と指摘する。

 クリーンなイメージのモディ政権への打撃は計り知れない。だが首相には外相に辞任を求められない事情がある。「スワラジ氏の外相就任をモディ首相に飲ませたのはBJPの重鎮のL・K・アドバニ氏。外相の辞職をアドバニ氏は決して認めない」とある政治アナリストは分析する。

党内基盤弱く
 アドバニ氏はかつて副首相や党総裁を務め、モディ氏をBJPの首相候補とすることに反対した人物だ。首相は国民の間で絶大な人気を誇るが、党内の支持基盤は弱い。「外相を辞職させれば、アドバニ氏はモディ氏を首相の座から引きずり下ろそうとする。それに対抗する十分な党内政治力を首相は持っていない」とアナリストは指摘する。

 モディ政権の苦境を、市場は的確に映し出している。インドの主要株価指数は会期中に何度も続落した。外国人機関投資家も売り買いが拮抗し、昨年のモディ政権誕生後に続いた買い越し基調は途切れた。

 議会空転は実体経済にも響く。「デリー・ムンバイ間産業大動脈構想(DMIC)を含め、インフラ整備には土地収用法改正案が不可欠なのに……」。同プロジェクトに携わる日本政府関係者はため息をつく。粗鋼生産量は4~6月の3カ月間、前年同月比伸び率が0%台にとどまる。設備投資動向を示す資本財生産も6月は前年割れとなった。

 そんな中、インドの「ミサイル開発の父」と呼ばれ、国民に人気のあったアブドル・カラム元大統領が7月27日、死去した。最後まで学生を指導し続けた老科学者が残した1998年出版のベストセラー「インディア 2020」は、産業政策の重要性や党派を超えた政治家の協力を説き「20年までに先進国になる目標を、議会が宣言する日が待ち遠しい」と結んでいる。改革が停滞するインドで、先人の夢がかなう日はいつ訪れるのだろうか。 (ニューデリー=黒沼勇史)


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