日本株と投資信託のお役立ちノート

株や投信の運用に役立つ記事を探します。
(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

インドの農場、無農薬に挑む 日本生まれの経営者 高まる安全志向 根付くか

2015年08月23日 | インド ・ スリランカ
(日経8/23:社会1面)
 インド南部カルナタカ州に、食品関係者の耳目を集める農場がある。日本生まれの経営者が「カイゼン」を加えながら、国内では珍しい無農薬栽培に挑んでいるためだ。大量の農薬を使うのが当たり前の同国では、食品への異物混入なども後を絶たない。徐々に高まる「食の安全」への関心を追い風に、こうした栽培法は定着するだろうか。

  
無農薬栽培を手掛けるファースト・アグロ社のナビーンさん(7月、インド南部カルナタカ州)

 IT(情報技術)産業の集積地、バンガロール市から車で南へ約3時間。ファースト・アグロ・テック・プロデュースの農場はカーヴェリ川近くの沃野にある。面積は約30万平方メートルと、東京ドーム6個分の広さだ。

「カイゼン」重ね
 「トマトやレタス、ハーブなど約130種類をすべて無農薬で作っています」。同社社長、ナビーン・M・Vさん(45)の案内で場内を進む。害虫が嫌う植物油をまいたり、虫を誘い込む仕掛けを設けたり。化学肥料も使わない。トマトを口にすると甘みが広がった。

 父が外交関係者のナビーンさんは日本生まれ。高校時代に母国に戻り、今は日本でITサービス会社も運営する。無農薬栽培を志したきっかけは8年前、カナダにいた弟を訪れた際の農園見学。「母国でもこうした野菜を作りたい」と2011年、農場運営を始めた。

 ただ農業は素人。取り寄せた種子を全滅させてしまったこともある。農業関連の文献をめくり、日本滞在時に農家に栽培法を尋ねるなどして育たない原因を分析した。インドでの栽培は初めてという小松菜などを含め、1品種ずつ試しながら多品種生産を実現していった。「『カイゼン』の発想で失敗から学んでいる」(ナビーンさん)

 インドでは一般的に大量の農薬を使う。野菜から使用禁止の化学物質が検出される場合もある。同国の非政府組織(NGO)は10年の調査で、市中の野菜や果物から多量の残留農薬を検出。「欧州で許容される基準値の750倍を使用している可能性がある」とした。

 背景に「緑の革命」があるとされる。1960年代、食糧難にあえぐ中で始まった農業改革で、品種改良や化学農法で近代化を急いだ。収穫量は飛躍的に高まったが、農薬利用も急拡大した。

 長期間、農薬を大量に使えば地味が衰え収穫は落ち込む。最近は生活苦などのため自殺する農家が相次いでいる。

異物混入も多く
 乳製品など加工食品への異物混入も少なくない。基準値を超す鉛が検出されたとして食品当局がネスレに即席麺の生産販売停止を命じ、裁判所が当局に再調査を求める問題も起きた。ニューデリーの栄養コンサルタント、アンジュ・シンさん(37)は「たとえ価格が3割増しでも安全で健康的な食品を求める市民は急増している」と話す。

 ファースト・アグロ社は無農薬野菜をハイアットなど国内40ホテルに供給。売り上げは年3~4割の伸びが続く。人口増が続く新興国で、農作物の新たな領域が芽吹きつつある。  (ムンバイ=堀田隆文)

▼有機野菜生産 日本は4万トン
 日本では環境に配慮した農作物として、日本農林規格(JAS)認証を受けた有機農産物が知られる。原則、種まき・植え付けの2年以上前から農薬や化学肥料を使っていない土地で栽培される。農林水産省によると、有機野菜の生産量は2013年度で約4万1千トンで、5年前に比べ約5千トン増えた。

 このほか、農薬や化学肥料を減らすなどした「特別栽培農産物」もある。農薬不使用なら「農薬:栽培期間中不使用」と表示できるが、「有機より優良」といった誤解を避けるため「無農薬」の表示はできない。


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