日本株と投資信託のお役立ちノート

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(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

ロシア首相、領土で対日強硬を演出 択捉島入り、国内の求心力維持狙う

2015年08月23日 | ロシア&CIS
(日経8/23:総合・政治面)
 【モスクワ=田中孝幸】ロシアのメドベージェフ首相が22日、北方領土を訪れた。3年1カ月ぶりの今回の訪問には自国が実効支配する地域を一切引き渡さない姿勢を内外に示し、安倍政権がプーチン大統領の年内訪日にかける領土問題進展への期待を打ち消す狙いがある。ロシア国内の景気低迷が深刻化する中、第2次大戦戦勝70年で高まる愛国主義に訴えて国内の求心力を維持する思惑も透ける。

 
択捉島の水産加工場を視察するロシアのメドベージェフ首相(中央)=22日

 「(日ロ関係に)ロシアの一部であるクリール諸島(北方四島と千島列島)を結びつけるべきではない」。メドベージェフ首相は22日、択捉島で記者団に強調した。今後も訪問を続ける意向も示し、昨年3月に一方的に編入したウクライナ南部・クリミア半島と同様、一度獲得した地域を手放さない姿勢を鮮明にした。

「日本は隣人、中韓は友人」
 北方四島などへの投資誘致では「最初に来た者が優先される。日本の隣人もいいが中国や韓国の友人でもいい」とロシアと関係が良好な中韓と交渉を進める可能性をちらつかせた。択捉島では近年整備された水産加工場などを視察。択捉、国後両島を税制優遇を柱とした新型経済特区に指定する方針も明らかにした。

 ロシア政府関係者は首相の一連の言動について「日本が領土でゼロに近い回答を受け入れ、経済面でもっと協力しなければプーチン氏の訪日は見送るというメッセージが込められている」と解説する。



 プーチン氏は6月、安倍晋三首相との電話協議で年内の訪日方針を確認し、事務当局に準備を指示していた。ただ、訪日時に目玉となる経済協力の案件は乏しいのが実情。ロシア政府内では7月「このままで日本に行けば四島の問題ばかりに注目が集まり、大統領の失点になる」(経済官庁幹部)との危機感が高まり、対日強硬論が台頭。スクボルツォワ保健相や極東管区のトルトネフ大統領全権代表が相次ぎ北方領土を訪問していた。

 日本は昨年、ウクライナ問題を受けた欧米の対ロ制裁に加わった。米国が日ロ関係の進展に懸念を示すなか、プーチン政権は「日本は対ロ制裁の緩和といった独自外交はできない」(元閣僚)との判断に傾いている。

愛国主義が最終カード
 このため領土問題で日本への遠慮は不要と判断したとの見方もある。日本は対ロ制裁の中身でロシアに一定の配慮を示したが「制裁を反ロの象徴ととらえるプーチン政権には全く評価されなかった」(ロシア科学アカデミー世界経済・国際関係研究所のビタリー・シュビトコ日本政治経済部長)。

 先の見えない景気低迷下で愛国主義は政権にとって国民の支持を保つために残された唯一のカードであり、領土交渉を進める政治的な余裕がなくなっている事情もある。通貨ルーブルはこの1カ月で対ドルで2割も下落。4~6月の実質経済成長率はマイナス4.6%に落ち込み、実質の平均賃金と可処分所得も前年に比べて7月まで9カ月連続で減少した。

 とはいえ、このまま日本を刺激し続ければ、来年の主要7カ国(G7)首脳会議で議長を務める安倍首相がロシアとの対話より圧力を重視する方針に転換する可能性がある。強硬姿勢を強めるロシアの対日戦略には外交的な孤立をさらに深める危うさもはらんでいる。

▼岸田外相、大使呼び抗議 訪ロ延期、プーチン氏来日に暗雲
 ロシアのメドベージェフ首相が択捉島を訪問したことで、日ロ関係への影響は避けられない。日本政府は8月末で最終調整していた岸田文雄外相の訪ロの延期を決め、ロシア側の要求を受け、外相訪ロと併せて実現を目指した民間企業幹部の派遣も先送りする。北方領土問題の進展に向けたプーチン大統領の年内訪問も暗雲が漂う。

 岸田氏は22日夜に地元・広島での日程を切り上げて上京。外務省にアファナシエフ駐日ロシア大使を呼んで直接抗議した。「北方四島に関する日本の立場と相いれない。日本国民の感情を傷つけるもので極めて遺憾だ」と述べた。アファナシエフ氏は北方領土はロシアの領土だとする従来の主張を繰り返した。

 安倍晋三首相は北方領土問題解決を政権の最重要課題の一つに据えている。領土問題の進展を内閣支持率の回復につなげたい思惑もあるが、現時点では期待薄だ。政府関係者は「ロシアは支持率を上げるカードにはなりにくい」とみる。対話の姿勢は引き続き重視する考えだ。岸田氏は22日、記者団に「重要なことは北方領土の帰属の問題を解決することだ」と強調した。


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