日本株と投資信託のお役立ちノート

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(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

クルマの自動運転、国際ルール作り始まる 技量低下・別作業・事故時の責任――3つの課題どう対処

2015年01月12日 | 先端技術・知財
〔15.1.12.日経新聞:法務面〕


 クルマの自動運転の国際的なルール作りが始まった。国連は昨年12月、自動運転分科会の初会合を開き、国際基準の制定に着手した。自動化技術は刻々と進化しているが、運転者の技量低下をどう防ぐか、運転以外の作業をどこまで認めるかなど課題も浮上。人間とシステムの関係を巡る問題の解決が避けて通れなくなってきた。(編集委員 塩田宏之)

 2014年11月、ジュネーブ。国連の組織「自動車基準調和世界フォーラム」は日本の提案を受け、自動運転分科会を設けることで基本合意した。分科会では国土交通省の担当者が英国と共同で議長を務める。日本は国際ルール作りで主導権を握りたい考えだ。

 同フォーラムでは完全自動運転について議論を始める時期を巡って意見が割れた。日本の案は16年からだったが、「早すぎる」との声が上がる一方で「技術進化の速度は予測できず、遅きに失する恐れがある」との意見も出た。そこで時期を明記せず、「必要に応じて」に修正した。

 それだけ完全自動運転の実現可能性が高いとの見方が増えているのだろう。歩行者や自転車も行き交う一般道では難しいとの見方が多いが、パナソニックで自動車関連事業を担当する柴田雅久常務役員は「高速道路や、近所の買い物などに使う低速車に限れば実現するかもしれない」と話す。

関与と責任ズレ
 新たな課題も立ちはだかる。自動化技術と交通ルールの折り合いをどうつけるかだ。技術進化に伴い、運転へのヒトの関与度は低下する。一方、道路交通法は第70条で運転者に安全運転の義務を課しており、運転者の責任の重さは変わらない。運転への関与度と責任のズレから3つの問題が生じることが考えられる。

 まず懸念されるのが、運転者がブレーキやハンドルなどを直接操作する機会が減り、技量が下がる問題。筑波大学の稲垣敏之教授は「すでに航空機の分野では自動化によるパイロットの技量低下が起きた」と話す。システムが対応できないような緊急時に、未熟な運転者が事故回避の責任を果たせるだろうか。

 第2の問題は運転者が走行中にスマートフォンの操作など運転以外の作業(サブタスク)をしたくなること。昨年11月、日本自動車研究所が開いたシンポジウムでトヨタ自動車の開発担当者は「運転から離れる時間が長いほど(勘が)戻りにくくなる」とサブタスクに慎重な姿勢を示した。

 一方で国際自動車ジャーナリストの清水和夫氏は「自動化のレベルが上がれば、手放し運転やサブタスクをどこまで認めるかが焦点になる」とみる。日産自動車も13年8月に自動化技術の開発構想を発表した際「将来的には運転の時間をもっと生産的に使えるかもしれない」と付け加えた。

 第3に事故時の責任問題がある。先端技術に詳しい三平聡史弁護士は「判例によれば今はクルマの運転者や所有者の責任が重く、メーカーは軽めという法解釈だ」と指摘する。設計や製造に問題があるとして所有者がメーカーに賠償を求めても立証が難しい。システムが高度化すれば所有者の不公平感が一段と強まる可能性があると三平氏は言う。

緊急対応が重要
 解決の糸口はあるのか。技量低下の問題について清水氏は「運転がうまくなる自動運転車もある」と話す。独アウディ車などには手動によるハンドル操作時に、車線中央から左右にズレるとシステムが修正する機能がある。人間とシステムが共同で運転するようなインターフェース(接点)の工夫がカギだ。

 サブタスクの問題ではシステムが対応できない緊急時に、運転者の動揺を最小限に抑えつつ手動に切り替えることが重要になる。「自動モードを解除していいですか」と運転者に提案するなど様々な引き継ぎ方法が考えられるが、稲垣教授は「衆知を集めてルール化すべきだ」と話す。

 事故時の責任について、NPO法人・ITSジャパンの佐藤昌之理事は「当面は道交法の細かい規定が生きる」と予測する。衝突被害軽減ブレーキを備えたクルマが誤作動で急減速し、後続車に追突されたと仮定しよう。後続車の運転者は車間距離を保つよう規定した道交法第26条に基づき、損害賠償を求められる可能性が高い。だが「被害者は自分だ」と言いたくなるだろう。

 佐藤氏は「道交法は第24条で急ブレーキも禁じており、後続車の運転者は過失相殺で賠償額を減らせるのでは」と話す。さらに追突されたクルマの運転者がメーカーに求償することも考えられる。こうした事例や判例の積み重ねのほか、事故原因を分析するための記録装置の搭載や、保険商品の開発も課題となりそうだ。


国連規則巡り駆け引き 日本、拒否権の確保狙う

 欧州諸国が加盟するウィーン道路交通条約は、第13条で車両を制御下におくことを運転者に義務づけている。自動化が進むと、解釈によっては同条約違反になりかねない。そこで昨年、システムが国際法に準拠していれば第13条に適合しているとみなす条文を加えた。自動化を容認する拡大解釈といえる。

 ここでいう国際法は、国連の自動車基準調和世界フォーラムが定める国際協定を指す。日本が加盟するジュネーブ道路交通条約も同様の改正をすると予想されている。

 日本は昨年11月の同フォーラムで、国際協定の規則を制定・改正する際の多数決規定を「3分の2」から「5分の4」に引き上げる提案をした。

 現行規定だと28票をもつ欧州連合(EU)だけが事実上の拒否権をもつ。拒否権を5分の1超にすれば、日本もアジアなどとの連携で拒否権を確保できるとの思惑がある。EUの執行機関である欧州委員会は今年3月のフォーラムまでに欧州内の意見を調整する。

 フォーラム傘下の自動運転分科会で議長を務める斧田孝夫・国交省自動車局国際業務室長は「日本やアジアは欧米と交通事情が異なる。非欧州の立場も協定に反映させたい」と話している。 

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