ばぶちの仕事しながら司法試験を突破し弁護士になりました

仕事をしながら司法試験に合格したばぶち(babuchi)の試験勉強記録+その後です。

平成23年度予備試験論文再現(刑事実務基礎)

2011年11月14日 22時40分31秒 | 論文
第1 設問1について
1 甲は自身の弁解でキャリーバッグを持っていったことを述べているが、客観的事実からも認定する必要があるため、キャリーバッグをベンチから持ち去った人物であることを認定する。
2(1) 防犯カメラ1の画像から、白髪の男性が手荷物もなく、紺色のスーツを着て午後1時5分にA駅ホームに到着し、降りていたこと、甲の所持品として、「B駅→A駅」の乗車券が1枚あり、これはPM0時55分に購入されたこと、A駅とB駅の所要時間は約3分であること、事案1から白髪の男性が手ぶらで紺色のスーツを着てホームをうろついていることから、甲は、午後1時5分にホームに到達した電車から降りた男性と同一人物であると認定ができる。
 (2) 防犯カメラ2から乙とは別の紺色のスーツを着た男性が何回も乙の前を往復していること、事案1から乙と甲は何回も目が合っていることから、この男性は、甲であることが認定できる。
 (3) キャリーバッグがなくなった後、乙はBのロゴ入りのキャリーバッグを引いている白髪の身長180cmで紺色のスーツを着ている男を見つけ、声をかけた後、走り出そうとした人物は事案1で乙が見た甲と同じであり、この男性は甲であると認定できる。
3これらの客観的事実から、甲がキャリーバッグを持ち去った人物であると認定ができる。

第2 設問2について
1 乙の占有の事実について
(1) 乙の占有の有無は甲の窃盗罪(刑法235条)と占有離脱物横領罪(同法254条)のいずれが成立するか異なる。
   占有は、事実上の支配のことをいい、①客観面である占有の事実と、②主観面である占有の意思から構成される。そしてこれらは別々のものではなく、互いに相関関係にあると考える。また、事実上の支配があるかどうかをこれらについて考慮することは、早急に回復が可能であったかどうかということを考慮することになる。
   以上を前提として検討する。
(2) 肯定する方向に働く事実
  ア 乙がホームのベンチにキャリーバッグを置いて15m先の売店に買いに行った事実
  理由 すぐに乙は戻ってこれる距離にありキャリーバッグの事実上の支配を早急に回復できるといえ、①を満たし、占有の事実を肯定する方向に働く。
  イ 丙と話しベンチから反対方向に5m歩いてすぐに思い出して振り返った事実
  理由 丙との会話後5m歩いてすぐに思い出していることから、早急に回復できる状態であったといえ、②を満たし、占有の意思を肯定する方向に働く。
(3) 否定する方向に働く事実
  ア 乙がホームの売店で買うために5分かかった事実
  理由 5分という長い間、ホームという不特定多数の者が行き交う場所を考慮するとキャリーバッグの事実上の支配を早急に回復できるとはいえず、①が否定され、占有の事実を否定する方向に働く。
  イ 丙との会話に夢中になり、ベンチにあるキャリーバッグを忘れていた事実
  理由 丙との会話に夢中になって忘れていたのは、その間は早急に回復できる状態になかったので、②が否定され、占有の意思を否定する方向に働く。
(4) 結論
  肯定すべきである。
  15mの距離の売店で5分間待ったこと、また、丙と話していて反対方向に5m歩いたとしてもキャリーバッグにはすぐに戻ってこれる距離であり、早急に回復できるといえ、①占有の事実は否定されない。
  また、丙との会話に夢中になり一瞬忘れていたとしてもすぐに思い出しており、どこにあったかも覚えているのであるから、早急に回復できると言え、②占有の意思は否定されない。
  したがって、乙の占有は肯定すべきである。
2 窃盗の故意について
(1) 窃盗の故意がなければ犯罪は成立しない(刑法38条1項本文参照)ため、誰かの占有があり、占有侵害の意思と窃盗をすることについて、認識、認容していたかどうかを認定する。
   以上を前提として検討する。
(2) 肯定する方向に働く事実
  ア 甲は手ぶらでA駅にきており、置引の前科2犯がある事実
  理由 手ぶらでA駅をうろつき、過去に同種の犯罪を犯していたのであり、今回も同じく置引をしたものと考えられ、占有を侵害する認識、認容があったといえ、肯定する方向に働く。
  イ 乙に追いつかれ、乙を見た途端、逃げ出そうとした事実
  理由 取り返されるのを防ぐために、キャリーバッグを持ち上げていること、乙とは何度も目が合っておりキャリーバッグは乙の持ち物だと認識していたから逃げ出そうとしたと考えられ、占有の侵害、窃盗をしようとしていたという認識、認容を肯定する方向に働く。
(3) 否定する方向に働く事実
  ア 甲は執行猶予中の身であるという事実
  理由 執行猶予中の者がさらに犯罪を犯すと執行猶予の取消のおそれがあり(刑法25条2項)、実刑判決を受ける可能性があることから、窃盗をしようという認識、認容がなく故意を否定する方向に働く。
  イ 乙の持ち物と分かったのですぐに返したという事実
  理由 誰かのキャリーバッグだと思っていたので駅の事務所に持っていこうとしていたのであり、窃盗をする認識、認容を否定する方向に働く。
(4) 結論
  肯定すべきである。
  甲は最近の前科について執行猶予中であったが、それ以前にも同じ置引をしており、実刑を受けても構わないと考えているといえる。また、乙にキャリーバッグを返しているのも乙の携帯電話がなったので乙の物だと判明した以上、観念して返したものと考えられ、窃盗の故意を否定することはできない。
  したがって、甲に窃盗の故意が認められる。

以上



感想
設問1の犯人性の認定は、近接所持については書いていません。
設問2の占有の事実に関しては上手く書けたと思いますが、窃盗の故意についてはどのように書いていいかが分からずこれでいいのか不安でした。
民事実務がボロボロだったので、刑事実務では多少評価はよかったのかもしれません。

解いた時間は90分ぐらいです。

70分+90分で160分でした。試験時間180分のうち20分ぐらい余りました。
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