ばぶちの仕事しながら司法試験を突破し弁護士になりました

仕事をしながら司法試験に合格したばぶち(babuchi)の試験勉強記録+その後です。

ファイナル答練刑訴法第4回 刑法平成8年度第1問

2006年07月09日 22時38分05秒 | 刑法
ファイナル答練刑訴法第4回をやりました。

今回のは非常に典型論点の組み合わせ問題で簡単でした。こういうのならば、事例の分析は簡単なんですけどね。


刑法に入りました。1問書いてみました。

刑法平成8年度第1問
「甲及び乙は、友人Aに対して、二人で殴る蹴るの暴行を加え、傷害を負わせた。甲及び乙は、Aを甲のアパートに連れて行き、傷の手当をしていたが、Aが次第に高熱を発し、意識もうろうの状態になったため、Aが死亡するかもしれないと思ったものの発覚を恐れ、放置しておくこととした。しかし、その後、乙は、Aがかわいそうになり甲の外出中にAを近くの病院に運び込み、看護婦に引き渡した。
 ところが、当時、その病院の医師が、たまたま外出中であったため、手遅れとなり、Aは、甲及び乙の暴行による内臓の損傷が原因で死亡してしまった。
 甲及び乙の罪責を論ぜよ。」

答案
○甲の罪責
・Aに対して傷害を負わせている=傷害罪(204条)
・Aを自宅のアパートに連れ込み放置(=不作為)し、その結果死亡
 ↓
 不作為も実行行為として「殺した」?
 ↓
 実行行為とは、犯罪の結果発生の具体的・現実的危険を有する行為
→不作為でも実現可
 ↓しかし
 不作為は広範で無限定になり、刑法の自由保障機能を害する
 ↓よって
 作為と構成要件的同価値性が認められるかどうか
 ①法益の高度の危険
 ②作為の可能性・容易性
 ③作為義務の存在
 ↓ここで
 ③作為義務は、法律、条理、契約を基に、先行行為、排他的支配の有無等の事情で判断すべき
 ↓あてはめ
 ①Aは傷害を負い、高熱あり=生命の高度の危険
 ②病院に連れて行くことは容易・可能
 ③傷害を加え、条理上救助義務(作為義務)あり=先行行為+排他的支配
→殺人罪の実行行為あり
 ↓さらに
 甲の不作為とA死亡結果発生の因果関係あり(因果関係を遮断する事由なし)
 ↓加えて
 未必的故意(38条1項)あり
 ↓したがって
 甲は殺人罪の罪責も負う

○乙の罪責
・Aに対して傷害を負わせている=傷害罪
・Aを自宅のアパートに連れ込み放置し、死亡結果発生により殺人罪成立
 ↓しかし
 乙は中止行為あり
 ↓もっとも
 結果発生しているため中止犯(43条但書)は成立不可
→準用は?
 ↓
 中止犯による刑の必要的減免は、結果発生防止行為に向けた真摯な行為に責任が減少する点にある
 ×責任減少なら、刑の免除ではなく、犯罪不成立とすべき
 ↓そこで
 褒賞を与えるという政策的観点も考慮すべき
 ↓とすると
 結果発生の場合には褒賞を与える必要なく、中止犯の準用もなし
 ↓したがって
 乙に中止犯の準用なし

○両者の罪責
甲及び乙は、傷害罪と殺人罪の共同正犯(60条)で、傷害罪は殺人罪に吸収