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“知識を書かないこと” @『夜のある町で』荒川洋治

 

 

 以前何かの本で、文章を書く時の心構えとして「知識を書かない」云々と言っている人がいることを知った。「うん、確かにそうだな」とその時思った。

 ぜひともその現物を読んで見たいと思って、いろいろネットで探したら、意外に早く見つかった。

 福井出身の詩人である荒川洋治の『夜のある町で』と言うエッセイ集に収められている文章であるとのこと。早速、取り寄せてみた。これが電子本なら、一発でピンポイントにみつかるのだろうが、最初の1頁から読み始めることにした。

 ようやく187ページに、その文章を見つけ出すことができた。「おかのうえの波」という短い作品の中にあった。

 

文章を書く時の心構え

1)知識を書かないこと。

 知識に頼りそれを振り回していると、知識と言う「過去」の重みで、文章を書くその人の今の考えや姿が見えなくなる。

 

2)情報を書かないこと。

 情報は「港」から入る。「港」の人が注目を集める。外国からの荷下ろしの現場にいて、そこで書く。荷物の段ボールの文字を並べた書付でもきらめいて見えるが、情報の文字だけあって、その人が文章の中にいない。

 

3)何も書かないこと。

 文章は読者を威圧することがあってはならない。

 

 まあ読みようによっては、この本に収められている78本のエッセイのすべてが「何も書かれていない」様にも思える。意地悪な言い方をすれば、ブログを本にして出版しただけとも言えなくもない。

 

 しかし、妙に心に留まる文章たちである。食べたものがいつまでも消化されないでお腹の中に留まっているような感じ。そして長い時間をかけて消化され、しっかりと血となり肉となってゆくのだろうな。なんかそう思う。

 

 

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