もう30年以上前に、山崎章郎(やまざきふみお)医師が『病院で死ぬということ』という本を著し、ベストセラーになりました。一般の人々に「病院で死ぬということ」の意味を問いかけた最初の本のように思います。
それは、病院と言うところは、「治療する」「救命する」ということが至上命題なので、患者がいよいよのときに、家族を病室から追い出し、患者に馬乗りになっ . . . 本文を読む
2021年1月12日に亡くなった半藤一利さんの最後の本ですね。出版は同年2月なので、半藤さんはこの本の完成を待たずに亡くなったことになります。本書の「2021年1月」と書かれたあとがきが「絶筆」となりました。
その「あとがき」に、井上ひさしさんの言葉(とされる)有名な「心得之条」紹介があります。
むずかしいことをやさしく
やさしいことをふか . . . 本文を読む
ロシアもウクライナもどっちもどっちではなく、国連憲章を踏みにじるものが糾弾される。これ現在のスタンダードですよね。
それを平然とやってのける「ロシア」とは何者か、ロシア的なものの考え方とは?、それはどこからやってくるのか?。毎日悲惨な映像のテレビを見てると、つくづくそう思います。
もしかしたらその糸口が文学にあるのではないか . . . 本文を読む
2008年のノーベル物理学賞は、アメリカ国籍の南部陽一郎さんと、益川敏英さん+小林誠さんの3人でした。その南部陽一郎の人生と業績をまとめた一般向けの新書です。通勤のバスの中で読み終えました
受賞当時、益川・小林の両氏が「南部先生と一緒に受賞できたことが何よりうれしい」とコメントしていたのが印象的でした。
1960年代のアメリカの政治的背景も . . . 本文を読む
高校卒業後、単身ロシアに渡り、ロシアの大学生となって 西暦2000年代を普通の市民としてロシアで暮らし学んだ若い女性の記録です。
ちょうど1997年の香港玄関を前後する数年間を、香港の普通の大学生として生活した星野博美さんの『転がる香港に苔は生えない』のような本ですね。
『夕暮れに夜明けの歌を』は以下の30の章に分かれていて、いずれの章もその冒頭に、ロシアの現代小説から引いた味わい深い . . . 本文を読む
先月NHKテレビで放送していた100分de名著『金子みすゞ』の第4話(=最終回)を見て泣いた。
金子みすゞも、その詩も、もちろん以前から知っていました。というか彼女の故郷である、山口県は仙崎にある「みずす記念館」に、3回も行ったことあるくらいです。
しかし、今回のNHK番組をみて、「新しい発見」がたくさんありました。それは、彼女の詩は「小さきもの、弱きものへの愛情」だけでなく、その詩は . . . 本文を読む
宣伝文句は「この作家初の恋愛小説」ということですが、別に恋愛小説ってわけではなく、「思い出つづり」と読み取れる作品ですね。3時間で一気読みしました。
読み物としては面白かったですが、これが純文学かと問われれば、「・・・・」となります。だってこの小説がなくても、人は生きてゆけるもの。
なんで「緑」があのような結末を迎えたのか、なんかよくわからないのが、引っ掛かります。高校時代のストーリ . . . 本文を読む
この本は介護職員に向けに書かれた本なのですが、自分の親も介護サービスを受けるようになって久しくなり、それで読んでみた次第です。まあ、あと数年もすると自分もそうなってしまうかもしれないしね。
介護の現場で働く方々には本当に頭が下がります。長時間、低賃金で仕事の内容もきつい。医者に文句を言う患者はめったにいないが、介護職員に文句をいう利用者や家族は山ほどいるだろうしね。
でも、介護サービス . . . 本文を読む
2021年総選挙の結果は論者の数ほどその評価はあるでしょう。僕の意見は、野球でいえば「1回裏表で大差をつけられたが、逆転は十分可能」って感じかな。
野党共闘も野党連立政権も断固支持!ですが、今回の総選挙では、両党の間に防衛政策など重要な基本政策の一致がない事に対し(そんなこと国民は先刻承知だが)、その不一致をどうやって埋めてゆくかの説明は最後までなかった。共産党は「意見の違いは政権に持ち込 . . . 本文を読む
実在の地方銀行(山口銀行)で、実際にあった事件を小説にしたものだそうです。
まあ確かに、こういう派閥間の権力抗争や組織の私物化は、どこにでもありますよね。銀行に限らず。政治の世界ならなおさら。
この小説の筆者自身も、この銀行の行員だったわけで、その抗争の当事者の一人だったんではないでしょうか。
「事件の記録」としては面白いけど、「小説」としては物足りないです。なんか総集編を見 . . . 本文を読む
斉藤幸平さんの『人新世の「資本論」』、遅ればせながら読みました。実は先月初めに、斎藤幸平さんの講演を聞く機会があったのです(このご時世、当然オンラインですが)。で、さすがにこの本を読まないで講演を聞くわけにはいかんと思って読んだわけです。
大変刺激的な内容で、「売れるはずだわな」と思ったのですが、売れた理由はそれだけではなさそう。
読み終わって気が付いたのですが、本のカバーが二重にな . . . 本文を読む
寓居の畑で隅っこ暮らしをしているスズランです。
多年草と言うか球根なので、ほったらかしにしていても、
毎年春になると目が出て、小さな鈴なりの白い花を咲かせてくれます。
でも、密集しすぎると、育ちが悪くなるそうで、
適度に、かわいい子には旅をさせて、「株分け」してやると、元気を取り戻すそうです。
1 . . . 本文を読む
シリーズ第3作目です。今度の帯のコピーは「いざ闘わん」ですと。
これ、絶対池田本人が考えたコピーじゃないね。でも読んだ人は、妙にこの3作目の本にしっくりくるコピーと思うのではないでしょうか。
P132からの「そうでなけらば それまでだ」もまた秀逸です。「人を殺してみたたった」という理由で本当に他人を殺す若者が珍しくない昨今です。
そういう人たちに、真正面から「晶子バズーカ砲」を打 . . . 本文を読む
帯のコピーに「失うものはありません」とあります。あらゆる権威や大いなる勘違いに 舌鋒鋭く切り込みまくってますねえ、晶子さん。
読んでいるときは、「そう!そう!」と拍手喝さいしているものの、しばらくたつと「それって 俺の事?」と深く自省してしまいます。
それが池田晶子の本質的批判が、普遍的な真理を持っているから、と気づきます。「気づかされる」のではなく「気づく」のです。はい。
. . . 本文を読む
池田晶子って誰?と、恥ずかしながら、小生、まったく存じ上げませんでした。先月のNHKの「100分de名著」で初めて知った次第。早速、この本を取り寄せました。
いや~、すごい人がいたもんですねえ。「いた」というのは、2007年に46歳で病死されたんですね。別に大学の教員ではなく、市井の哲学者ですね。「哲・学者」ではなく「哲学・者」です。本人は「文筆業」とも自称していたようです。
最初か . . . 本文を読む