食道がんと闘う自然爺の活動

自然の中での暮らしに憧れ、自作の山小屋を起点に自然と戯れていたが、平成21年10月、食道・胃がんが見つかり手術。

『上棟式』

2012年11月24日 15時45分57秒 | 日記

昨晩から大雨に見舞われ、今日予定の娘たちの上棟式は絶望的な天気の中で、これか

ら先を暗く暗示するように思えた。明け方になっても降り続いており何かの間違いで、晴れ

間でもあれば天のお恵みと思えるような状況に、ため息をつくしかなかった。ところが目が

覚めてみると、雨は止み東の空は薄らと日差しの兆候が見られるではないか。

天気予報をあざ笑うかの如く天気は好転し望んではいけなかった晴れになり眩しい日差

しがそそがれてきた。8時30分ごろに集合して一応の儀式をするらしい。私たちは野暮用

がありこの時間には参加できず、式が終わり工事中の様子を見に行った。

棟上げも昔と様変わりしてしまい風情も何も無くなってしまった。私たちが棟上げした40数

年前には住宅ブームの走りで、交通戦争のさ中。大工に限らず飲酒運転に対する批判が

強くなり、所謂鷹揚な古き日本は否定され、棟上げの時くらいすら許されなくなっていた。

車社会になり大工さんは現場に自動車で行くから、棟上げで酒を飲むことは飲酒運転に

つながる、提供した者ここでは施主が飲酒運転ほう助となる。また餅まきは未だ執り行われ

ているが少数派で田舎が殆どだろう。

施主の長男が棟に上がり持ちをまく、『子供を高い所に上げて危ない』と毒ずく声高な声が

聞こえそう。そもそも、家を建てる方式が変わってしまい、個人または工務店から大手の下

請け工務店になっている。家の材料も工場でプレカットされホゾやホゾ穴、継手があれば

それまで機械で加工し現地では、余分なところをカットする程度。ノミやカンナなど使うこと

はないし、造作仕事などないからノコも上等なものは不要らしい。風呂場や台所、玄関など

は左官が担当して専門分野として生業の一つだった。内壁は聚楽とか豪華そうな壁材を

使い左官の腕の見せ所だったが、一般住宅はクロス貼りに席を譲った。技術の進歩はそ

うし仕事も無駄なものにしてしまい、それでは生活ができなくなっている。風呂場はシステ

バス、キッチンはシステムキッチンで水回りもしっかりと担保され、簡単に設置できるから

昔のように長い工事期間を必要としない。

家を建てると様々な業種に波及効果がありながら、新技術は持ちつ持たれつしていた構

を崩し、恩恵を受けていた人に打撃を与え続けた。大工さん、工務店の世界は淘汰が

進み、個人で請負、設計から建築まで纏める棟梁で残っている人はほんの一握りになっ

た。住宅会社が組織を挙げて家を作る、つまりビジネスの一つなのだ。

ビジネス社会の中で到底、理解されないはずの地鎮祭とか上棟式などが生き続けているの

は、日本人として何かホッとする。

娘たちの上棟式に合わせた訳ではないが、単身赴任の婿殿もご帰還故、『ブリしゃぶ』をす

ることになっており、午後から約5Kgのブリを捌いたり、畑から野菜を採ってきたりと、結局の

ところ棟上げと婿殿との再会を祝って働く爺婆であった。チャンチャン。


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