食道がんと闘う自然爺の活動

自然の中での暮らしに憧れ、自作の山小屋を起点に自然と戯れていたが、平成21年10月、食道・胃がんが見つかり手術。

『舌の苔』

2012年11月17日 18時27分11秒 | 入院回顧

手術をして水を飲めるようになり、重湯、お粥とグレードアップしていった頃、舌が白く

なり奇妙に見えた。痛みはないし味など自覚症状はゼロだから見つけたのは妻で私で

はない。鏡で見ると確かに下の上が白くなっており、今風に言えばキモイ。

先生に話をすると『苔』の仕業。黙っていることが多いとか、舌を動かすことが少ない場

合、こうした苔が生えることがあり、歯ブラシで舌を擦ると綺麗になると教えられ、歯磨き

と共にベロ磨きも行った。

磨き始めて直ぐに白いものは無くならなかったが、いつの間にか綺麗になっていた。入

院中、しょっちゅう話をすることはないにしても、日常生活と比べ極端に減ったとは思え

なかったが、原因はそんな説明だった。煙草も酒も『禁』の文字に囲まれていたから、舌

の奥の方をゴシゴシと掃除してもオエッとなることはなかった。

 

『刃物しんけ』

『しんけ』と小難しい意味合いもあるが、こちらの方言で『のぼせ者』の意味合いでも使わ

れる。刃物に強い関心や執着心を持つ人のことだが、辻斬りをして刀の切れ味を試して

みるようなお方は、『刃物気ちがい』であり、この部類には入れないとする。

私も刃物には興味があり、日本刀、短刀なども許可証を得た上で所持している。日本の

刃物はどこの世界に持って行っても、これに勝るものはないだろう。そこには鋼なるものの

存在があり、普通の鉄で鋼を包み込む伝統の技は21世紀になった今でも、これに変わる

技術はない。日本には、こうした高い技術を持ちながら、一部では『刃物はドイツのゾーリ

ンゲン』などと宣伝されたこともあったし、『狩猟用のナイフはアメリカのバック』という風にな

り和物の出番は少なくなっていった。家庭用の包丁は錆びないからステンレスになり、や

ては危ないからの理由もあろうがセラミックも使われるようになった。

確かに鋼の包丁はきちんと手入れをしないとすぐに錆が出る、包丁を研ぐ事のできる男が

いなくなった、魚を捌くことをしなくなり包丁の種類も減ったなどの理由から、存在感が薄く

なってしまった。

以前、母が使っていた刺身包丁、柄は腐れ包丁本体も錆が奥深くまで入っており、研いで

も使えるとは思えない状態だった。要らないというから、貰って帰り錆落とし、柄を付け直し、

いよいよ砥石の出番になった。数十年ぶりに研がれた刃物の鋼の部分は再び輝きを取り戻

し、切れ味も復活した。見た目にはボロボロのものだったが流石、ジャパニーズ。

その刺身包丁は今でも使っている。

切れない刃物を使うと怪我をする。切れが悪いから無理に力を入れるから思わぬ方向に滑

ったりして傷をする。また、刃物を買う時はケチらないことが鉄則。安物の刃物は買わない方

がいいと断言できる。しかし、いい刃物を買ったらきちんと維持管理する、これが出来ないな

ら買わない方がいい。手入れの行き届いた包丁で料理すると、切れ味のよさが料理の味を

引き上げてくれる。台所の包丁が錆びていたり、刃先が欠けていたり、切れ味が悪い、これ

ら全ての責任は男にある。仮に刃物を研ぐ男がいたら、『砥石も研いで平坦にしておかない

と刃は付かない』このことをお忘れなく。


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