R45演劇海道

文化の力で岩手沿岸の復興を願う。
演劇で国道45号線沿いの各街をつないでいきたいという願いを込めたブログ。

海女照(AMATERASU)Vol.6

2014-09-15 00:31:50 | インポート

第 産 景 生まれる繋がり

 ウミネコの声が響き渡る。波の音も静かに聞こえ始める。

 舞台が明転すると、そこは穏やかな浜の風景となっている。

 桟橋付近に浜の男たちが神妙な面持ちで集まっている。

漁 夫 見たか。

礁三郎 あぁ。

洋太郎 俺はまだ見てねえ。

碇   俺は見た。

洋太郎 どうだった。

碇   あれは、人ではねぇ。

洋太郎 人でねぇってどういうことだ。

銛之助 とうとう、来たんだ。

漁 夫 言い伝えで、本当のことだとは、思わなかったが…。

礁三郎 もったいぶらねぇで、教えろ。

漁 夫 この浜には…。

碇   この浜には…。

 そこへ、磯治が現れる。

 男たち、それに気づくと口を閉ざす。

磯治 何か言いたいのか。

洋太郎 いや。

磯治 じゃぁ、そんな目で俺を見るな。

洋太郎 磯治。

磯治 馴れ馴れしく、俺の名を呼ぶな。

 漁夫、怒りだして磯治に食ってかかる。

漁夫 生意気な。

磯治 何、因縁つけてんだ。

漁夫 化け物に魂持ってかれてんだろ。

磯治 何!

 磯治、漁夫に殴りかかろうとする。銛之助、碇は磯治を止める。

礁三郎と洋太郎は、漁夫を止める。

 

磯治 あいつのことを悪く言うな!

碇   もうよしなよ。

漁夫  このやろう。

銛之助 やめておけ。

漁夫  お前、どこから流れてきた。

銛之助 やめておけ。

漁夫  ちょっと、漁が上手いからって調子こいてんじゃねぇえぞ。

 磯治、漁夫の声が聞こえたのかどうかわからないまま、去ってゆく。

漁夫  あいつ、背中に鰓(えら)と鰭(ひれ)が有るらしいぞ。

碇   鰓と鰭?

漁夫  そう、鰓と鰭。

洋太郎 じゃぁ、泳ぎがうまいだろうし、何時間だって潜っていられるな。

漁夫  そう。

礁三郎 山から来たのにか。

漁夫  そう。

洋太郎 あいつも、化け物か。

漁夫  化け物は化け物同士ってわけか。

碇   そんな言い方はするな。   

銛之助 よそ者を受け入れられない、閉ざされた浜は消滅する。

漁夫  それが、化け物でもか。

銛之助 そうだ。鰓が有っても鰭が有っても、人は人だ。

礁三郎 それでも、人か?

銛之助 人のことばが通じて、気持ちが伝えられるなら、人だろう。

漁夫  俺は、そうは思えねぇ。

礁三郎 俺もだ。

銛之助 悪い奴らじゃねぇ。そう、毛嫌いするなって。

 銛之助、他の連中をなだめる。浜の男たちが去り際に、視線を投げかける。その先の一角が区切られたように明りが落ちる。

 区切られた場所に明りが落ちると同時に静かに、浜の男たちは去ってゆく。