ふわっと創と、店主が浮かび上がる。創が、目を開けると、そこは、元の鬱蒼とした景色の中だ。
店主 何を見てきた。
創 僕が何をしなければならないのか。
店主 辛い出来事だったか。
創 そうじゃないよ。昭和の想いを託されてきた。でも楽しい想いだったよ。
店主 そうか。この先は、辛い想いもあるかもしれない。それも受け止めてもらえるかな。
創 それが、僕の使命なら。
店主、小さくひとつうなづく。
店主 お前、昨日と違うな。
創 昨日と同じ人間なんていないよ。
店主 …やっぱり、お前なら託せそうだ。
創 何を?
店主 いや、俺たちが観られなかった未来を…。
創 未来を?
店主 そう。『カマイシ』の未来を…。
創 そんなに買い被らないで欲しいな。
店主 じゃあ、賭けてみるって云ったらどうだ。
創 それならいいや、はずれても良いんでしょう。
店主 そうだな。俺はあたるとみて、大博打をするつもりだ。
創 そこまで云われるとなぁ。僕は僕なんだし、僕以上のものにはなれないんだから。
店主 それに、12歳で気づくだけでも賭けてみる価値はある。
創 そうかな。
店主 …仙人峠に行くぞ。
創 引っ越して来たときに通った。あの、秘密基地のようなトンネルのところだね。
店主 いや、そのもっと上のところだ。鉱山があったところだ。
創 そこには何があるんだい。
店主 お前が持っている、その石の秘密が…。行こう。
創 はい。
二人、鉱山の方角を見据えて歩き出す。
暗 転