小浜逸郎・ことばの闘い

評論家をやっています。ジャンルは、思想・哲学・文学などが主ですが、時に応じて政治・社会・教育・音楽などを論じます。

泊原発を再稼働すべき理由

2018年09月20日 00時10分05秒 | 政治


北海道胆振東部地震から二週間経ちました。
ライフラインはだいぶ復旧してきたようです。
でも依然として断水が続いている地域があります。
しかし、北海道最大の火力発電所である苫東厚真発電所の復旧は意外に早く、すでに一部
の供給は始まろうとしています。
そういえば、関空の復旧もハイスピードで進んでいますね。
このあたりの日本の技術者、作業員の協力体制はさすが、まだまだ捨てたもんじゃないな
と思いました。

それはいいのですが、問題は、ハード面に関するこれからの対応です。

このたびの地震によって生じた全道ブラックアウトの問題を考えてみましょう。

筆者は、泊原発をすぐにでも再稼働すべきだと考えています。
政府が決断しさえすれば、一か月でこぎつけることができます。

以下に、再稼働すべき理由を述べます。
これは、単純な数字の問題なのです。

苫東厚真の最大出力は165万kW。
地震時(9月6日)の全道の電力需要は380万kW。
苫東厚真が担っていた電力は全道の総電力需要の半分以下でした。
しかし、苫東厚真が損傷を起こしただけで、全道295万戸が停電してしまいました。
それには、二つの原因があります。
第一に、このような大幅な供給バランスの崩れによって、他の発電所からの送電の周波数
を一定に保つことができなかったこと。
第二に、もともと北海道電力は、一部の電力を本州からの供給に頼っていた(はずでした)。
これが機能しなかったのですね。
この本州からの供給を北本連携線といいます。

海底ケーブルのように長距離で絶縁が重要なポイントになる送電では、直流が有利ですか
ら、本州から北海道に送電されてくる電気は直流です。
家庭での電気は交流ですね。
これは発電所から家庭に至るまでに、交流だと変圧が容易だからです。
すると北本連携線では、直流を交流に変換しなくてはなりません。
ところが今回の場合、この変換がうまく行きませんでした。

しかし、この北本連携線が仮にうまく作動したとしてもその最大出力はわずか60万kW。
ということは、仮に第一の周波数の問題がなく、かつ第二の北本連携線をうまく利用でき
た場合でも、
380-165+60=275(万kW)
しか確保できなかった計算になります。
残りの105万kWは、不足したわけです。
部分的な停電は避けられなかったでしょう。

ちなみに苫東厚真発電所は、初稼働以来33年以上を経ていて、かなり老朽化しています。
さらに、不足分を慌てて補った五つの発電所の年齢はこれよりも古く、38歳から48歳で
す。
一般に火力発電の耐用年数は40年とされています。
最大の危機に対応すべく、青息吐息のお年寄りに頑張ってもらったわけですね。

こんな状態を続けていていいのでしょうか。
何か肝心なことを忘れていませんか。

今回、テレビのニュースを見ていて、初めのうち、政府筋から原発の「ゲ」の字も出ない
のに驚きました。
10日になってようやく政府見解が出ましたが、何と泊原発の再稼働は「考えていない」というものでした。
常識的に考えて、こんな大緊急時には、政府は直ちに泊原発再稼働の議論を開始すべきで
しょう。
原子力規制委員会の審査などを待っている場合ではありません。

その審査とは、例によって、数十万年前の活断層の安全性を確かめるという悠長極まるも
のです。
活断層の存在が地震に結びつくかどうかは、個々の場合で異なります。
ふつう数千年から数万年規模のサイクルで地震が起きるとして、たとえば5000年周期の
活断層で、2000年前に地震が起きたとしたら、あと3000年は大丈夫ということになり
ます。
いずれにしても、100年単位以下の精密さで活断層地震の発生確率を計算することはき
わめて困難だということになります。

しかし、もし今回のような地震によるブラックアウトが厳冬の北海道で起きていたら、寒
さのために何人の人が凍死するでしょうか。
ライフラインも途絶え、物流も滞り、道内の産業は停止し、回復に何か月もかかり、その
間に餓死する人も出るかもしれません。
これらの確率の方がずっと高いことは確実です。

冬期の北海道の電力需要は約500万kW超。
今回、青息吐息の老兵たちをかき集めることと、北本連携線の修復と、相当無理をした節
電によって、ようやく380万kWの需要の9割を確保したのです。
しかしこんな状況では、とうてい冬の電力需要を満たすことはできないでしょう。

泊原発の総出力は、207万kW。
苫東厚真が全面回復すれば(11月までには可能とされています)、苫東厚真プラス泊で、
165+207=342(万kW)
ですから、残り160万kWを他の発電で確保すればよいことになります。
しかも泊の年齢は1号機29歳、2号機27歳、4号機9歳です(3号機は廃止)。
若い彼らに頑張ってもらえば、楽々厳しい冬場をしのげるでしょう。

ちなみに原発の耐用年数は、国際的にも法的な基準がありませんが、原発を最も活用して
いるフランスでは40年を目途にしようという動きが有力です。

泊原発ではまた(どこの原発でも事情はだいたい同じですが)、福島事故の教訓を活かして、
16.5メートルの防潮堤、建屋への水の浸入を防ぐ水密扉、免震重要棟、フィルター付きベ
ントなどの設置・建設をすでに終えています。
できる限りの備えがすでにできているのです。

反原発派は何を言っても100%の安心を求めますが、そんなことは神でもない限り不可能
です。
交通事故で毎年4000人以上の人が死ぬのに、車をなくせという声が盛り上がらないのは、
車の効用が大多数の人に受け入れられているためと、交通事故を可能な限り少なくする努
力が現に多方面で行われているためです。
文明の利器にはリスクがつきものですが、私たちは、便利さや快適さの度合いとリスクの
大きさとを、広い視野と正しい情報をたよりにしながら、常に天秤にかけて生きていくほ
かはない
のです。

本当は、北海道電力は、もっと発電設備を増やさないと危ないのです。
泊も含めた北海道の総発電設備による出力は、一応780万kWありますが、泊はまったく稼働していませんから、それ以外の発電所の出力は、フル稼働して573万kW。
設備利用率は、ここ数年、ピーク時で9割に達しています。
8%以上は余剰電力としてキープしておくのがこの業界の常識ですから、
573×(1.00-0.08)=527
となって、ぎりぎりなわけです。

 電力は私たちの生活と産業の源です。
 悲惨な結果がこれ以上広がらないように、政府はもっとエネルギー行政にお金をかけ、
知恵をはたらかせなくてはなりません



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14 コメント

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「原子力ムラ」を支える私 (肱雲)
2018-11-18 03:41:55
小浜氏と同名の若狭湾にある小浜へ、数か月前、夫婦で旅し、美味しいフグ料理に舌ずつみを打った。風光明媚な海岸線が広がるこの地域は、「原発銀座」とも言われ、日本の「原子力ムラ」を象徴する場所でもある。我々の平穏無事な生活が、怪しさとあざとさの上に立脚している事を、改めて感じさせられた旅でもあった。私の住む地域も、原発が近くに立地し、再稼働の「パンドラの箱」を開けてしまった。そのお墨付きを与えたのが、世界で最も核の恐ろしさを知っている筈のヒロシマの裁判所だった。人命がこうも蔑ろにされる判決を下す、裁判官の人権感覚が、自分達の昇進欲や左遷の恐怖により掻き消されてしまっている事を、苦々しく思った。原発問題で一番命の危機に晒されている筈の周辺住民が、最後のところで補助金行政により口封じさせられ、間接的に原発推進役の歯車とされてしまう。このパターンは沖縄基地問題でも同様であり、オスプレイ墜落の危険性を一番被る確率の高い地域住民が、地域振興費を充てにして、安全よりその日の生活を優先する決断に至るのだ。原発にしろ基地にしろ、そうした人の嫌がる危ない物は、概ね人口の少ない過疎地域が担わされる。過疎地域は経済生活の儘ならぬところでもあり、身銭を欲しがる場所でもあるのだ。その「人の弱み」に付け込み、自分達の嫌がる臭い物を過疎に押し付ける。我々もその様な構造を結果的には翼賛する存在でもあり、最後はそのツケを払わされるのであろう。広瀬隆氏が四半世紀以上前から指摘し続けて来た事を、未だに真に理解しようとしない此の国の遅滞性に、危惧を抱く。『東京に原発を』が端的に「原子力ムラ」の問題点を指摘している。物質文明による豊かな生活を享受し得る側の者達が、それを支える汚れ仕事をせざるを得ない側の者達を、蔑ろにしている現実世界が、地球上には至る所で散見し得る。その象徴的事象が、南北問題だ。こうした構造システムにメスを入れぬ限り、場当たり的枝葉末節的議論に陥るばかりであろう。要するに、マルクスの時代から、此の世の中は然程、進化していないのであり、否、逆に「資本主義が勝利」したなどと、フランシス・フクヤマが嘗て論じ、それ以降、米国支配を下支えする新自由主義が、今では当たり前のように跋扈している。アダム・スミスの時代に先祖返りしている状況なのだ。だから、「原子力ムラ」を攻撃するのは、原発テロ対策より困難を極めるのである。
返信する
追伸 (デオキシリボ核)
2018-09-29 10:56:25
その意味で、もんじゅの廃炉は、本当に痛恨でした。廃炉で、核燃料サイクル政策は、その核を欠く結果となったわけですから、一体政府は、国際社会に対して、どう説明をするのでしょう。

日本は、米国との間に、『日米原子力協力協定』というのを昭和63年(1988)に30年間を年限として締結しており、今年がその期限である2018年です。核については、NPT条約体制の許、国際的には、日本はここで使用済核燃料の再処理等を一定の条件下で幅広く認められており、この権限は、非核保有国の中で破格の取扱で、日本一か国のみの特権です。(要するに、使用済みのウラン燃料を再処理してプルトニウム燃料として持つ。※プルトニウムは、核兵器の主原料です)

日本はこの30年間の間にも、辛抱強く、決してプルトニウムを兵器転用することなく信頼を積み重ね、核燃料サイクル政策に真面目に取り組み続け、遂にこの特権を、日本ならば問題ないとして国際社会に幅広く認めさせてきた実績があるのです。

それなのに、その要たるもんじゅを廃炉にする!もんじゅは、小さな実験用原子炉なのですから、原発などの大出力商業用原子炉と、審査基準等が一緒であってはなりません。安全を十分確保した上ではありますが、果敢に動かさなければならないのです。それなのに、今の原子力規制委員会・原子力規制庁の体制下では、実験炉と商用炉との違いを無視して滅茶苦茶(厳格)な安全基準を課しており、同委員会・庁は、現実には反原発派の牙城になってしまっているのです。

それでもその原子力規制委員会・原子力規制庁に対して、隠忍自重、堅忍不抜の姿勢で辛抱強く真っ直ぐに再稼働目指して審査に臨んでいる電力会社には、頭が下がります。

これは確定情報でなく、飽くまで漏れ伝わってくる話ですが、もんじゅの廃炉は、稼働せずに止めていても膨大な金喰虫である同炉を、「国費の無駄遣い」であるとして、財務省が文部科学省に決断を迫り、予算を盾に取られた文科省がそれに屈した結果だというそうです。(もしそれが本当なら、何らかの裏取引が財務省と文科省の間にある筈です)経産省なら、財務省の恫喝に負けずに対処できてたんだろうかと、色々と考えざるを得ません。

文科省は、もんじゅ廃炉に当って、後続の高速炉(Fast Reactor)計画について言及しましたが、現在の安倍政権の緊縮財政路線を鑑みても、後続の高速炉開発計画は、画餅。国策中の国策たる「核燃料サイクル政策」は、まんまと、事実上の半凍結に追い込まれたのです。

国策が、「平和主義」のために、歪められてゆく。やんぬるかな、と思います。

『日米原子力協力協定』は、日米安保条約のように、終了を通告しない限り自動延長ですから、日本政府は、自らの核燃料サイクル政策が自縄自縛で破綻しつつある状況に頬っ被りして、死んだ振りしてその延長を乗り切ろうとしているようです。

しかしいずれは、その付けを払わされる時が来るでしょう。

日本は、もんじゅ廃炉を撤回して、従来の核燃料サイクル路線に戻り、高速増殖炉を軌道に乗せ、エネルギー資源を輸入に頼ることなく、国内で電力需要量の半ば以上を担いうる自給体制を再構築すべきです。

それが、嘗て米国の石油禁輸で大東亜戦争に突入せざるを得なかった、戦後も石油危機で経済危機に陥って往生した、日本の取るべき国策というものだと思います。
返信する
原子力ところどころ (デオキシリボ核)
2018-09-29 05:35:06
小浜先生のご指摘は、誠にごもっともと思います。小生は、泊原発が動いていれば、全道ブラックアウトなどという恥しい非常識は起り得なかったと確信していますし、差当って、北海道民が今冬を乗り越えるためにも、泊の再稼働は必須であり、政治的な決断が大事と思います。菅総理が超法規的に浜岡原発を止めてしまったくらいですから、泊を政治的に再稼働させるくらい、お茶の子さいさいでしょう。

正直、安倍総理は、「自衛隊加憲論」などという要らざる目眩しに取り組むより、泊原発の再稼働に取り組んで、北海道民を救うべきだと思います。その方が後世に名を遺すのでは。

公正を期すために最初に申しますが、小生は、原発推進論者です。なので最近は、それを公けにすると、大抵引かれますが、確信しているので、モノともしません(笑)

平成17年(2005)に、『原子力政策大綱』が策定されているのですが、そこには、全電力の凡そ50%を原子力発電で賄う方針が明記されています。

当時、日本の電源の約三割強が原子力発電によるものでしたから、これは画期的な方針で、基盤的電源(ベースロード電源)の殆どを原子力発電で担う、今でも小生が一番の国策と考える上策です。季節変動や昼夜変動などを除いたいつも定常的に使われる電力が、ピーク時の電力量の半分強なのですから、そこを、定常的な電力供給に適している原発で賄うのは、極めて合理的な話ですし、電力会社の経営にも資する話です。しかも、「集中の危険」に備え、原発は、日本各地に分散しています。これは意図的にそうしたのです。(ピーク時の電力供給は、電力事情に呼応して発電のしやすい火力や水力に任せれば良い訳です。また、電力消費の少ない夜間は、水力発電所に揚水しておきます)

※これは、北海道電力の電源比率を見れば、お分りいただけると思います。北海道の最大電力需要の約半分弱を泊が担い、残りを火力水力で調節しながら運用する「ベストミックス」になっているのが分ります。万が一に備え、泊が落ちても、ぎりぎり北海道の全電力を支える構図になっているのが分ります。その方が北電の経営的にも、ベストの収益構造なのです。つまり、北電は、国策に沿って、自らの電源比率を構成していたのです。そして、当然、北海道民にとっても、万一、泊が落ちてもどうにかこうにかやっていけるという安心料含め、電気料金としてその方が最安となる訳ですから、官業民、全部が笑顔なのです。(結論:北海道電力はそもそも、泊を織り込んで、ベストを構成していたのです)

これでいよいよ産業国家日本の電力基盤が固まるかと思われたその矢先、無情にも3.11が到来。福島で地下に埋設してしまっていた非常用電源が津波で水没してお釈迦となり、当時「原子力ルネッサンス」とまで呼ばれた、世界的な原発指向の潮流を完全に逆転させてしまいました。日本は、些か結果的にとはいえ、世界に大変申し訳ないことをしたのです。

我が国は、原子力政策について、同大綱でもですが、もう一つ大変重要な国策を有しています。それは、核燃料サイクル政策です。

これに基いて、プルサーマル発電が実施され、六ケ所の再処理施設も稼働し、敦賀にある『もんじゅ』も運用されていた訳で、特にプルサーマル計画は概ね順調、六ケ所でも着実な成果が上がっていました。もんじゅは例のナトリウム漏れ事故の影響で、進捗は捗々しくなかったのですが、人類の歴史的に画期的な「高速増殖炉」(Fast Breeder Reactor)は、小生のような門外漢にも、心踊らされる挑戦と受け止められていました。

しかし、総ては福島事故のお蔭で、儚くなりました。「大量人」が跳梁跋扈し、世論は傾き、今では小生のような者は、半ば世間で狂人扱いです。

だけど、それで真実が覆る訳でない。正義は我に在り、と小生は飽くまで意気軒昂ですが(笑)

前に何処かの動画で見ましたが、中野剛志先生は、「原子力発電は、どうしても「(日本)国家」、「国家」が付きまとう代物だ。だから「(日本)国家」を嫌う左翼は、原発が大嫌いなのだ」という趣旨を話されていましたが、佐藤健志先生の直近の著作にある通り、日本を強くする原子力発電は、「平和主義」の日本にとって、また、「小さな政府」のグローバリストにとって、敵なのです。これには、当のグローバリストと目される高橋洋一先生が、「原子力発電所は、国営でもいいくらいだ」という、確かチャンネル桜での正確な指摘でも、誠に裏付けられます。

…済みません。雑感を連ねてしまいましたが、宜しければ、小浜先生のコメントをいただければ、誠に幸いです。
返信する
Unknown (紳士ハム太郎)
2018-09-29 01:13:30
以下の真偽は如何に?

ロシア国防省で各国の核実験の監査に当たっているイゴーリ・トカレフ大佐が、最近ロシアのメディアで爆弾発言をしたらしい。

彼は「東アジアの地震の多い某国は数十年にわたり、地震を偽装した地下核実験を繰り返している」と発言したというのだ

https://jp.sputniknews.com/world/201805114869300/
返信する
トラさんへ (小浜逸郎)
2018-09-27 18:34:59
たいへん詳しいコメント、ありがとうございます。

とても説得力を感じさせるコメントでした。
寡聞にして、石本已四雄の名も、石田昭氏のお名前も知りませんでした。

もしこの説が正しいとすると、まさにコペルニクス的転回ですね。
前3世紀のアリスタルコスの地動説から、コペルニクスの地動説までじつに1800年が経過しています。
いまでは天動説など、過去の遺物として葬られていますが、ひょっとして、現在の地震原因説の主流である断層説、プレートテクニトクス説がひっくり返る可能性も皆無ではないことがよくわかりました。
変な言い方ですが、日本は地震大国ですから、研究環境には大いに恵まれているので、大切なことは、ある学説を先入観によって葬り去らずに、謙虚に検討する態度を維持し続けることですね。

とりあえず、石田氏の著作を読んでみようと思います。
ご教示、どうもありがとうございました。
返信する
定説地震学の転換を (トラ)
2018-09-24 21:09:16
私自身は長期的には再生可能エネルギーを含まない脱原発で、短期的には原発を含むエネルギーミックスが最適であると考えています。
苫東厚真火力がスムーズに再開できなかったら、泊原発は政府による超法規的措置により再稼働をすべきだと考えます。

さて、泊原発の再稼働の原子力規制委員会の審査について、小浜先生の批判は「100年単位以下の精密さで活断層地震の発生確率を計算することはきわめて困難だ」ということですが、地震原因が活断層やプレートではないとすれば、その判断も変わるのではないでしょうか。

 現在の定説地震学によれば、地震原因は活断層やプレートの歪から起きるとされていますが、これは戦後の米国地震学から輸入されたもので、その地震学説が如何に現実の地震の説明能力を失っているかは、毎度地震学者の説明が通り一遍であり、未知なる活断層があったとかひずみが溜まっているなら余震など起きないはずなのに、適当な作り話でお茶を濁しています。

 日本には正統的な地震学があって、湯川秀樹の父親である地震学者小川琢治や石本巳四雄らの提唱するマグマ貫入論という地震原因説を唱えていました。それが米国地震学の導入により全く途絶えてしまいましたが、定説地震学だけが地震学ではないということを知っていただきたいのです。

そして、マグマ貫入論を発展的に考えだされたのが石田昭氏の地震爆発論というものです。
これは、簡単に言うと、高温高圧の地下に存在する熱水が酸素と水素に熱解離して、その水素ガスが着火・爆発に至り、これが地震現象を発生させるというものです。水素ガスは安定するまで爆発(余震)を繰り返します。地震が爆発現象だとすれば、ドンと突き上げるとか強い加速度の発生や余震の説明が可能となります。

今回の北海道大地震では、未知の活断層が揺れたとされていますが、苫小牧CCS(液体CO2の地下圧入)と地震の関係に触れた記事は見当たりません。
アメリカオクラホマやアラスカでは滅多に地震が起こらない場所で群発地震が発生しているそうですが、
オクラホマでは水圧破砕法による廃液の地中圧入処理、アラスカでは石油採掘にやはり水圧破砕法を用いており、地下水をマグマの高熱に近づけて、熱解離を起こし水素ガスの爆発を誘発している可能性が指摘できます。
 また、10年ほど前に起きた新潟・中越地震、中越沖地震では近隣の長岡でCCS実験をしています。やはり10年前の岩手・宮城内陸地震も近隣の秋田県雄勝実験場でCCS実験をしています。
苫小牧CCSの実験発表は5年前でしたが、その時点で地震の危険性について地震爆発論を提唱する石田昭氏は警告を発していましたが、現実のものとなりました。
CCSは今後九州や千葉、大阪等でも計画されていて、大地震を誘発する危険性があります。

この地震爆発論は、社会的には全く認知されていませんが、定説地震学よりも日本地震学を正当に受け継ぐものであります。
そして、今や説明能力を失った定説地震学の転換が必要とされているので、小浜先生にも新しい地震学に興味を持っていただきたく、長文をしたためさせていただきました。失礼をお許しください。
返信する
天道公平さんへ (小浜逸郎)
2018-09-23 15:06:02
お久しぶりです。
山口は、猛暑、水害、台風は大丈夫だったでしょうか。

反原発信者の方たちは、教義に凝り固まって人間としての普通の想像力を喪失してしまった人たちですから、怒っても無駄ですね。

それよりも、政府要人たちが、厳冬の北海道に大きな危機が迫っていることに対して鈍感なのが気になります。

ニーチェの言葉「賎民が論拠なくして信じたことを、どうして論拠をもって覆すことができよう」

*以上の記述には、現代では差別語と見なされる語彙が含まれていますが、原典を尊重し、そのまま掲載いたしました(編集部)w。
返信する
青柳謙三さまへ (原田 大介)
2018-09-23 12:17:41
確かに「大量人」の物言いは西部邁氏の用語ですね。西部氏もよく読みました。近頃は佐伯啓思氏や古典それ自体を四苦八苦しながら読んでます。
同志有難いです。
返信する
お久しぶりです。 (天道公平)
2018-09-22 08:16:07
ごぶさたしています。
3.11の東北大震災のあと、仕事で福島県いわき市に、事務補助として出張しました。現地で、職員にも、市民の方々にも大事にしてもらい、幸せでした。
そのとき、現地の職員に聞いたのが、東京で、福島ナンバーの車がいたづらされる、とか、福島県の出身といえば、アパートを借りられないとか、山口県人としては、信じられない話を聞きました。また、風評被害で、ももなどの果実が売れず、農業県として、大変困っていると、現地の方から、問わず語りで、話を聞きました。すかさず私は、箱買いで、地元に送付したことは言うまでもありません。
なぜ、自然災害で罹災した同胞が、電力供給先の、傲慢な東京人に貶めなければならないかと、義憤のようなものを感じました(何度も私のブログに書きました。)。
また、3・11の直後に、広島の反核運動の団体が、必死で、安全復旧をする東電の技術者達を、おとしめる声明を出しました。原爆と原発を、兵器と科学技術を判別できない、鳥頭に、真底ウンザリしました(広島県民はバカばかりなのかね)。
その後、日ごろ恩恵を被りながら、被害者づらをする、朝日、東京新聞に、心ある東京都民はウンザリしたと思いますが、このたび、自然災害で大きな被害を被りながら、来る冬季に向け、必死に努力する、北海道民を、現実的に支援せずして、何をするのだろう。
思考停止の人でなしは別にして、わが国、政府は、安心安全の実現のため、現実的な政策を、早急に実施すべきです。
明日は我が身となぜ認識できないのだろう。現在、政府は観光補助と言っているが、物流、エネルギーの安定供給なしに、観光客も、なにより地元住民が、自立できないわけです。
全国の鳥頭や、同胞に対する同情心の欠如した人間は放置し、道民の安心安全のため、政府は、原発再起動の政治決断を間に合ううちに、すべきです。
なにより、私が北海道へ観光旅行に行くのに困る。北海道野菜が供給なしはもっと困る。
返信する
原田大介さんへ (青柳謙三)
2018-09-22 01:09:37
間違っていましたたごめんなさい。
原田さんは、おそらく西部邁さんの著書を、
結構お読みになられれている方ではないで
しょうか。もしそうであてば、大変嬉しいです。
といいますのも、僕のまわりには彼の読者が
まったくといい程、いないからです。

小浜さんのこのウェブサイトは、投稿者の
コメントからも、学ぶべきころが多く、
助かります。

小浜先生、僕の投稿には、ご返信不要です。
余計なお世話かも知れませんが、お時間
大切にしてください。
僕は、暇人なもので⋯
返信する
原田大介さんへ (小浜逸郎)
2018-09-22 01:09:06
コメント、ありがとうございます。
おっしゃる通りですね。

民主主義が初めから抱えている弊害が、いよいよ露呈してきている感じがします。
「民本主義」を唱えたとして有名な吉野作造は、「一番望ましいのは、民衆の意思に支えられた貴族政治だ」と言っていたそうです。
返信する
同意です。 (原田 大介)
2018-09-21 22:48:30
他の方のコメントにあったリンク先もそのコメント欄も拝見しましたが、「原発=放射能=怖い」以上のものでないですね。

情緒しか判断基準のない「大量人」が主権者のほとんどというのが何というか、苦笑いしか出ません。それで冬場にブラックアウトでも起きて凍死者が多発したところで、「大量人」は何の責任も感じないでしょう。

民主制より混合政体の古代ローマや実質的な貴族制だった江戸期の方がマシに思える近頃です。
返信する
宮元栄以子さんへ (小浜逸郎)
2018-09-21 00:32:42
コメント、ありがとうございます。おっしゃる通りと思います。

その差し迫った危険性が、今度の北海道地震による停電で明らかになったと思うのですが、反原発信者の方たちは、そういう命の危険に想像力をはせることはけっしてしないのですね。

ほぼ同じ記事を「『新』経世済民新聞」に投稿しましたら、その種の無責任な発言がいくつも寄せられました。
余裕がありましたら、この記事のコメント欄をご覧になってください。
https://38news.jp/economy/12419
返信する
Unknown (宮元栄以子)
2018-09-20 21:59:51
先日はお返事ありがとうございました。

「文明の利器にはリスクがつきものですが、私たちは、便利さや快適さの度合いとリスクの大きさとを、広い視野と正しい情報をたよりにしながら、常に天秤にかけて生きていくほ かはないのです」

先生の仰る通りです。常識のことがタブーになっております。お題目を唱えるだけの人々は、電気が安定的に供給されないことにより身体を悪くされる方や、最悪、命を落とす方が出ることをどう説明するのでしょうか
返信する

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