内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

年内最終授業、あるいは百人一首源平散らし取り混合戦

2018-12-21 17:36:59 | 講義の余白から

 今日金曜日が年内最後の授業だった。今週、他の大半の授業は試験日だったが、私は先週パリ出張で一回休講にしたので、今日まで授業を行い、年明けの前期最終週に筆記試験を行う。と言っても、年明けの試験日に小論文を提出させ、当日の筆記試験では自分が小論文で採用したアプローチについて説明させることになっており、特に試験準備の必要はないので、厳密には筆記試験でさえない。そういうこともあり、また昨日までに試験をすべて終えた学生たちの中にはさっさと帰省してしまったのもいたりして、今日の授業はいつもより出席者が7名ほど少なかった。
 計三時間の授業のうち、最初の二時間は、江戸時代の「四つの口」ついて、まずフランス語の文献や地図・図表等を使ってアウトラインを説明した後、「四つの口」の提唱者である荒野泰典の論文の一部を読ませたりして、学生たちを苦しめた。日本語原文を読んでは、抄訳をつけるという形で進めながら、これはいくらなんでも日本語のレベルが高すぎたなと途中で気づいたが、時すでに遅し。
 残りの一時間については、二週間前の授業の終わりに、百人一首カルタで遊ぶことを予告しておいた。とはいえ、すべて日本語でやるというのがこの一時間の授業の大原則であるから、ルールの説明も当然全部日本語である。出席者は十八名だったので、三名ずつ六つのチームをその場でつくらせ、私が持ってきた三組の百人一首カルタを使って、三試合を同時で行うという形にした。読みはネット上の音源を使った。源平戦のように五十枚づつそれぞれの陣営に三段に並べるのではなく、散らし取りのときのようにカルタをランダムに撒き、チームで取らせることにした。
 最初のうちこそ旧仮名遣いにみな戸惑いをみせ、取り札を見つけるまでに時間がかかっていたが、しだいに慣れてきて、一首読み終わるか終わらないかのうちに取れるようになっていった。それにつれて、最初はおとなしかった学生たちも声を上げて笑うようになり、教室全体が活気づいていった。お手つきも多かったけれど、それは大目に見た。曇天から氷雨が降る窓外の景色とは対照的に、教室内は普段の授業とはまるで違う明るい空気に満たされた。
 さすがに歌を覚えている学生はおらず、上の句だけで取れる学生はいなかったのだが、ただ一人、「ちはやぶる」だけで取った学生がいた。この学生は映画『ちはやふる』が大好きで、この一首だけは覚えていたのだ。他の学生たちはその速さにあっけにとられていた。本人はガッツポーズをきめていた。
 普段の授業時間をオーバーしてしまったので、「途中だけど、やめますか」と聞いたら、最後までやるというので続けた。始めたときは、学生たちが楽しんでくれるかどうか半信半疑だっだが、終わってみれば、カルタが入っていた美装箱の写真を撮りに来たり、「すごく面白かった」と喜んだりと、みんなで楽しく今年最後の授業を締めくくることができた。
 « Bonnes vanacnes » あるいは « Bonnes fêtes de fin d’année » と、ノエル前のお決まりの挨拶を互いに交わしながら、学生たちは教室を去っていった。学生たちがいなくなった教室でカルタを箱にしまい、教室の灯りを消して、私も教室を後にした。












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