内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

自らの足で立ち、前に進んでいくためのトレーニングとしての授業(承前)

2021-02-20 10:40:43 | 講義の余白から

 「メディア・リテラシー」の最終学期の課題として、学生たちには記事を書かせる。記事の読者としては、日本のことをよく知らないフランス人を想定し、彼らが抱いている日本についての誤ったイメージあるいは無知からくる誤解・偏見等を取り除くことを記事の目的とする。
 この条件下、まずテーマを自由に選ばせた。テーマを決めかねている学生からは相談が来る。その場合、選択に迷っているテーマそれぞれの意義を説明したうえで、あとは自分で決めさせる。
 一人でやってもいいし、二三人でチームを組んでもよい。文章よりもドキュメンタリーやルポルタージュとしてビデオを作成したければ、それでもよい。複数で取り組む場合は、作業分担を明確に示すことを求めている。これは、最終成績は個別につけなくてはならないからだ。「チーム貢献度」ももちろん評価項目に入っている。
 一月後半から先行して始めたクラスは、三月末が最終提出期限なので、準備期間も短い。だから、その期間に合わせて、取り扱う問題も限定しなくてはならない。この点はこちらかのアドバイスが必要だ。学生たちは与えられた時間に対して大きすぎる問題を取り上げがちだからだ。問題そのものは面白くても、そのままだと腰砕けに終わる。こちらのクラスは参考資料・文献が出揃ったところだ。このクラスは履修者が十三人。三人で取り組むテーマ、ペアで取り組むテーマがそれぞれひとつずつ。あとは各自一人で取り組んでいる。
 二月第一週から開始したクラスは、だいたい主題が出揃ったところだ。こちらは履修者が三十名。うち、三人のチームが一つ、ペアが二組。
 彼らが選んだテーマは、少子高齢化、女性の社会的地位、男女(不)平等、育児制度、婚活、三〇歳超の性的未経験者、犯罪率、環境問題、パリ症候群、シングルマザー、アイドルの社会学、K‐POPの日本での人気、日本社会に生きる「ガイコクジン」、癒しとしての森林浴、アイヌの熊祭等々、ヴァライティに富んでいる。
 それらの中で、私が特に驚きかつ嬉しかったのは、前者のクラスの一チームと後者のクラスの一学生が日本の死刑制度をテーマとして選んだことだ。このテーマは前期の授業で取り上げた。それがきっかけで彼らは関心をもってくれたのだ。堀川惠子の死刑制度に関する一連のノンフィクションを紹介したとき、両クラスとも確かにとても反応がよかった。この難しいテーマに彼らが持続的な関心をもってくれたことが嬉しい。
 もう一つ、これも意外だったのだが、後者のクラスで七三一部隊をテーマとして選択したペアがいたことだ。しかも、彼女たちは記事ではなく、ルポルタージュとしてビデオ作成を選んだ。修士論文で七三一部隊を研究している女子学生が修士二年にいるので、彼女に連絡を取り、相談に乗ってやってほしいと頼んだ。すぐに「喜んで」と返事が来た。今後は直接に連絡を取り合えるようなった。こういう学年を越えた学生同士の繋がりも、今の状況下ではことのほか大切に思える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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