内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

夏休み日記(3)仕事を離れた読書の愉しみ ― 大原富枝『建礼門院右京大夫』

2019-08-05 15:35:58 | 哲学

 夏休みくらいしか大作や古典をじっくりと読む時間がない。その夏休みでさえ、ぼんやりしすぎると、あっという間に終わってしまう。
 今回の一時帰国前に、帰国したら読もうと予め注文しておいた本が何冊かある。もちろんその全部を帰国中に読めると思っていたわけではない。そのほとんどは読まずにフランスに持ち帰ることになるだろう。でも、せめて一冊あるいは一作品くらいは、この帰国中に腰を据えて読んでおきたい。
 岩波文庫版の新版『源氏物語』(全九冊)のうち、第四冊まではすでにフランスの自宅にある。今目の前にあるのは、今年三月刊の第五冊(梅若・藤裏葉・若菜上・若菜下)と先月出たばかりの第六冊(柏木・横笛・鈴虫・夕霧・御法・幻)。これらを読むのは、しかし、第四冊までを読み終えてからにしよう。
 日本の古典で今回購入したのは、『王朝秀歌選』『王朝物語秀歌選』(上・下)など歌集が多く、これらは一気に通読するためというよりも、折に触れて読むためだから、そのまま持ち帰る。
 今年の五月上旬に『建礼門院右京大夫集』について十回ほど記事にした。その際に大原富枝の『建礼門院右京大夫』(講談社文庫)の電子書籍版を駆け足で読むには読んだが、電子書籍版というのはやはり味気ない。そこで紙の本を注文しておいた。といっても、もう古本でしか手に入らない。講談社文庫版(一九七九年)と朝日文庫版(一九九六年)を購入した。どちらもカヴァーはかなり傷んでいるが、本文はまあまあ綺麗。同作品の両版を購入した理由は、五月十日の記事に記した通り、前者の大岡信による解説と後者の竹西寛子による巻末エッセイを読みたかったからだ。期待に違わず、どちらも作品の読みどころをそれぞれに鮮明に捉えたいい文章。
 あわせて購入した糸賀きみ江全訳中の『建礼門院右京大夫集』(講談社学術文庫、二〇〇九年)を座右に置いて、大原富枝の『建礼門院右京大夫』を明日から味読する。