内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

学会のためのパリへの日帰り出張

2018-12-14 17:28:30 | 雑感

 今日は一日パリへの出張であった。二年一度のフランス日本学会(Société française des études japonaises=SFEJ)の総大会で、セッションの一つの司会を頼まれていたからだ。その発表は四つ。それぞれ持ち時間は発表・質疑応答合わせて三十分、計二時間のセッションのである。この午後一時半からのセッションの司会のためだけの出張だったが、朝早めに出て、サン・ミッシェル大通りその他のの本屋に何軒か寄ってから会場のEHESSに向かう。総大会であるから、事務局を担当しているストラスブールの同僚ばかりでなく、他大学の知り合いの先生ともこの機会に久しぶりで顔を合わせることも少なくない。ただ、私はこの手の大掛かりな学会が苦手で、自分の責任を果たしたら、早々にストラスブールに戻れるようにTGVのチケットも購入してあった。この記事はその復路のTGVの中で書いている。
 発表者は、いずれも若手の研究者たち。一人は、イナルコの哲学研究グループのメンバーで、昨年11月に九鬼周造についてのきわめて優れた博士論文(早ければ来年、哲学専門の出版社の老舗 Vrin から出版される)によって博士号を取得した若手哲学研究者の期待の星。私もかねてからよく知っている。母親が日本人で、完璧なバイリンガルである。今イナルコで教えている。発表テーマは、大正・戦前昭和における〈個〉〈種〉〈類〉概念の変遷についての思想史的研究。他の三人は今回が初対面。一人は、先月、近現代日本における警察組織の変化についての社会歴史学的研究によってEHESSで博士号を取得した日本人女性。今パリ第七大学で教えている。一人は、明日がパリ第七大学での博士論文の公開口頭試問だというフランス人女性。研究テーマは、1960年代から1970年代にかけての対人恐怖症の病理的研究と当時の日本人論との関係について。もう一人も日本人女性。現在EHESSの博士課程三年目。発表テーマは、十九世紀末の、伝染病研究所建設をめぐる政府側推進者たちと建設に反対する地域住民の争点についての歴史社会学的研究。
 いずれの研究も大変興味深く、的確な質問もそれぞれの発表に対していいくつも出て、セッションとしてはなかなかいい感じであったと司会者としても満足感を覚えつつ、この記事を書いている。
 これで年内の学外での仕事はおしまい。来週一週間、授業と会議のために大学には月から金まで毎日行かなければならないが、それが終われば、やっとノエルの休暇だ。24日にこちらを発って25日から年明け8日まで東京に滞在する。