内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

昨晩のストラスブール市内銃乱射事件について

2018-12-12 23:59:59 | 雑感

 この不幸な出来事の犠牲になられた方たちに心からの哀悼の意を捧げるとともに、突然その最愛の家族失われたご遺族には謹んでお悔やみ申し上げます。

 事件を知ったのは今日の早朝、日本の友人からの安否を気遣うメールによってだった。慌ててネットで事件についての記事を検索した。テレビでもすべての報道番組が特報を流している。日本でもかなり大きくとりあげられているようだ。しかし、まだ犯人が捕まっていないし、全容がわからないから、もう少し情報を収集してからコメントしたい。
 朝8時前に、同僚から今日の授業をどうするか、相談の電話がかかってくる。授業は通常通り行う、ただし出席は取らない、試験が予定されていた科目については、試験を来週以降に延期する、という方針を伝える。彼女は午前9時からの授業だったが、結果として休講にした。通常60人ほどの出席者がある授業に数人しか来ていなかったからである。私の演習は午後4時からだったが、朝学生たちに、演習は通常通り行う、しかし無理して来ることはない、とメールで伝えておいた。三グループそれぞれのプレゼンが予定されていたが、二グループは全員出席、一グループは全員欠席。「これは偶然か、それとも示し合わせたのか」と冗談交じりに聞いたら、グループのメンバーのほとんどが事件の現場の近く大学寮に住んでいるからではないか、と出席者の一人が教えてくれた。
 学部生の中には、事件当時、現場の近くにいた学生たちもいて、幸い直接の被害者は大学関係者には誰もいなかったようだが、ショックで自宅を出られなくなってしまった学生たちもいる。そうメールで欠席理由を知らせてきた学生もいた。
 平和な街と言われるストラスブールでも、2015年のパリでのテロ以降、特にノエルの時期は、厳重な警戒態勢が敷かれてはいた。しかし、観光客が多数訪れるこの季節、市中心街周囲のすべての検問で完全な荷物検査が行われているわけではない。それに、先月から半ばにパリで始まり、今や全国に展開されつつある「黄色いベスト gilets jaunes 」と呼ばれる反政府運動の警戒のために動員されていた警察官・兵士たちに疲弊の色が見えていたこともある。それに、ここしばらく大きなテロもなかったことで若干の気の緩みもあったかもしれない。
 「ヨーロッパの首都」・「ノエルの都」を謳うストラスブール市は、かねてよりテロリストたちの標的の一つだった。今回の事件に何らかのテロ組織が背後で絡んでいるのかどうかはまだわからない。しかし、そのいかんにかかわらず、今回の事件は、今大きく揺れ動いているフランス社会の深部で増殖しつつある病巣を不幸な仕方で露呈させていると私には思われる。