内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

電子書籍を使いはじめてから気づいたその利点

2018-12-04 23:59:59 | 雑感

 昨年10月から、主に講義のための参考文献として日本語の電子書籍をよく使うようになり、この一年あまりで440冊ほど購入した。授業で複数の文献をそれぞれちょっと参照したいとき、すぐに必要な箇所だけスクリーン上に自由に拡大表示できるのは実に便利だ。コピーを渡したり、予めスキャンしてPDF版にしておく必要もなく、予め自分で打ち直す手間もなくなった。なにより、ノート型パソコンあるいはタブレットにそれらすべての電子書籍が入っているのだから、紙の本を詰め込んだ重たい鞄を持ち運ぶ必要もなくなった。
 購入した本は、すべて講義のためばかりというわけでもなく、ちょっと気になる本で、でも紙の本を買うほどでもないかと躊躇い、ただ中身をすぐに見ておきたいと思うときなどに、紙の本より安く、しかも割引キャンペーン中だったりすると、ついクリックしてしまう。
 こんな買い方・使い方だから、いわゆる読書の愉しみからは程遠い。一応読了した場合でも、紙の本の最後の頁を読み終えたときのような充足感はない。
 電子版で読んでみて、大変面白かったとき、これはきっと何度も読むことになるだろうからと、紙の本を後から買ったことも度々ある。最初は、同じ本なのに電子版と紙の版を買うのはお金の無駄遣いではないかと思ったこともある。ところが、両版を持つことには、それ以前には考えられなかった利点があることに気づいた。
 紙の本を買った場合は、よほどのことがないかぎり、書き込みはおろか、ラインマーカーを使うことも、鉛筆で傍線を引くこともめったにない。どうしてもそうする必要があるときには、同じ本を二冊買っていた。それくらい本を「汚す」のが嫌なのである。その理由は、後で売り払う場合のことも考えてということもなくはないが、もっと単純に、本はできるだけ綺麗なままに保ちたいという気持ちをどうしても振り払うことができないからである。
 電子書籍にはこの気遣いは一切無用だ。マーカーも使うし、コメントも書き込む。マーカーは、不要になればいつでも消せるし、コメントも本文脇に書き込むわけではなく、必要に応じて呼び出すだけだ。これも簡単に削除できるし、逆に追加もできる。このような使い方をすることで、電子書籍は、一冊の本というよりも、いつでも更新可能な一種のデーターバンクの構成要素として機能するようになる。これはこれで大変重宝な「道具」である。