内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

チャイコフスキー「四季」

2015-05-02 01:14:40 | 私の好きな曲

 チャイコフスキーが三十代半ばに作曲した十二の小曲からなるピアノ作品集。毎月の付録として楽譜を付けていたサンクト・ペテルブルクの月刊音楽雑誌『ヌヴェリスト』の編集者から、毎月季節にちなんだ小品を作曲し、その楽譜を提供してほしいとの依頼を受けての作曲。引き受けた当初、チャイコフスキー本人は、大して重要な仕事とは考えていなかったようである。しかし、ロシアの一年の季節の移り行きを多彩な音のパステルで巧みに描き分けており、それぞれの季節の自然の情景を生き生きと想像させてくれる小品集として、私には愛着がある。所有しているCDは、このアシュケナージの演奏のみ。それぞれの曲には、さらにイメージを喚起するようなロシアの詩人・作家たち(プーシキン、トルストイ、ネクラーソフなど)の詩が添えられている(曲の解説とそれらの詩の和訳は、こちらのサイトを御覧あれ)。
 五月を迎え、書斎の窓外の正面が樹々の若葉の瑞々しい緑で覆われる季節になった。冬の間、枯れ枝の上を巧みに走り回っていた元気なリスたちの姿も、葉陰の間をすり抜けていくのが見えるだけになってしまった。このアパートに引っ越してきたのは昨年の七月だったし、アパート探しで最初に訪問したのも六月の初旬だったから、今の窓外の景色は初めて見る。五月に入ったというのに、肌寒い曇り空が続いている。ときどき眩しいような陽光が仄暗かった木陰を明るませる。ストラスブール大に赴任して最初の一年が終わろうとしている。