内的自己対話-川の畔のささめごと

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抜書的読書法(哲学篇16)― モンテーニュ(九) 哲学的実践としての友情(1)

2015-05-20 04:18:14 | 読游摘録

 モンテーニュは、自分にとって未知なるものとの出会いを通じて或はそれを介して、自己を発見することを好んだ。そのような出会いの中でも、エティエンヌ・ド・ラ・ボエシ(Étienne de La Boétie, 1530-1563)との出会いは、その生涯を通じて何ものにも掛け替えのないものだった。生まれ年で言えば三つ年上で、ボルドーの高等法院での同僚となるこの早熟な天才は、十六歳から十八歳にかけて書いたとされる不朽の名著 Discours de la servitude volontaire(日本の読者にとって幸いなことに、山上浩嗣氏による苦心の名訳『自発的隷従論』(ちくま学芸文庫)があるようだが、私自身は未見)の著者として有名だが、三十三歳にして病に倒れ、モンテーニュに看取られながらこの世を去った。
 この二つの傑出した個性の間に、互いに対峙することを通じて生じた相互変容は、友情がどのような意味で精神的実践でありうるかを如実に示している。このような精神的次元での友情とは、取りも直さず、それ自体が一つの生き方に他ならない。グザヴィエ・パヴィは、この精神的実践としての友情が、ウィトゲンシュタインとデイヴィッド・ピンセントの間にも見出だせるだろうと言っている(X. Pavie, op. cit., p. 212)。