なぜ人は“働く”のでしょうか。
どの時代にあっても不変の課題であり、労働運動にとっても一番基本的な課題かもしれません。
そんな面倒くさいことは考えずに、「働かざるもの食うべからず」だから「働いて給料をもらい食うためだ」とシンプルに考える人もいるでしょう。
ある経営者は、「我が社の従業員が“働く”のは、“給料のため”だけである」と考えています。
人事部の考え方も、そこに働く従業員たちに報酬として与えるのは“給料”だけでよいとなります。
すると働いている人々はただ歯車となり、仕事は固定化し、細かいところまでマニュアル化されて、ただただ動かされている機械的な集団になっていきます。
人間の働く動機は様々です。
ある人間にとっては賃金は勤労意欲を高める非常に大きな源泉ですが、ある人間にとってはさほどの比重を持たないこともあります。
成功する組織のリーダーは卓越した人間観をもっています。
複雑怪奇な人間の働く動機を認識し、そしてその動機そのものを高めさせ、満足させてやります。
アメリカの心理学者マズローは、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きものである」と仮定して、人間の欲求を5段階に整理し理論化しました。
有名な“マズローの欲求段階説”であり、もっとも基本的な“生きていくために必要な生理的欲求”から、自分の可能性を最大限に実現したいという“自己実現の欲求”までの5段階です。
企業活動や組織活動とは、理念の実現化を図る活動です。
理念を形づくっているものは何か、それは組織体のなかのすべての人々の信念です。
「従業員が働くのは給料のためだけである」とした経営者の下では理念は育ちません。
個性的な理念を確立した組織であればこそ、ひとりひとりの自己判断と自己責任の下で仕事が出来て、やりがい感のある“生きた組織”が生まれるものだと私は思います。
マズローの説いた高次元の欲求を満たすためには、どうすればいいでしょうか。
魯山人のような才能の持ち主や、イチローのようなスーパーマンでもない私たちは、どうしても集団化した組織に、その一員として参加し、全体としての大きな仕事の一端を担いながら、組織人として欲求を達成することに励みます。
高次元になればなるほどその欲求をひとりで実現することは難しくなりますから、当然のことでもありましょう。
“組織としての自己実現の欲求”というものも当然あります。
組織人としての真の喜びは、集団の社会的貢献を味わったときに生まれるものだと思います。
自分も一端を担っている仕事が、全体として創造的成果をあげて、広く世の中に認められて、世の中に貢献できたときの喜びが、人々の喜びになると思います。
その高い理念に裏づけされた欲求を共有化し、そして燃やし続ける人々を増やし続けることが私の来年のテーマです。
いい1年でした、感謝します。
ありがとう。
また来年も良い年でありますように。
1年間お世話になりました。
また来年もよろしくお願いいたします。