金曜日の夜のこと。
金曜日の夜だというのに、特に予定もない私は孤独が
インプリメントされた洋服のように感じます。そして、
それをインプリメントする私。
地下鉄に乗れば、20分ほどでターミナル駅にたどり着きますが、
歩いて帰れない距離ではありません。対応に苦慮する仕事の所為で
蓄積されたフラストレイションを、早く溶かして流してしまいたいと
思い、熱帯の大阪を歩くことにしました。
ビルの屋上にある電光温度計は「34」を表示していました。
日が沈み、もう1時間は経とうとしているのに冷める気配は
ありません。空気は高温、微動だにせず、私の呼吸器系統を
支配します。色はないはずなのに、重厚なビロードのような色に
染みているように思います、この空気。
たまらず、コンビニエンスストアーで缶ビールを買います。
発泡酒ではなく、ビール。発泡酒のウスッペライ感触があまり
好きではないのです。それに、たまにしか飲まないし。
いい気分。
ひとりだけど、とてもいい気分です。
この週、私はとても嫌な思いをしました。生きてきて、これまでに
ないほどの嫌な思いです。出生と存在を呪いました。高速で近づいて
くる列車が、かすかな痛みと引き換えにピリオドをくれる、なんて
考えました。
胸を張っていえる、私は不幸だと。別に今日明日の食べ物に困ったり、
夜露をしのぐ場所がないなんて事はありませんけれど、でも。
私だって、人並みに誰かを好きになり、恋をしてもいいでしょう?
でも、できないのです。ええ、多分。きっと。
今、ビールがフラストレイションを洗い流したとしても、深層に
インプリメントされた「絶望」クラスは破棄できないのです。
馬鹿で単純に、誰か好きと思える風になりたかったのですよ。
色々、あまりにも沢山のことがありすぎました、この身の上。