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木村草太の力戦憲法

生命と宇宙と万物と憲法に関する問題を考えます。

処分審査の目的審査、佐藤先生の客観的審査

2011-10-17 07:17:22 | Q&A その他
権利の制約&客観的審査 (Wakiko)
2011-10-15 19:27:14
木村先生、はじめまして。
現在法学部3年生で、法科大学院への進学を目標に勉強している者です。お忙しいところを申し訳ないのですが、2点質問をさせて下さい。

①友人から「防御権の保護範囲内に含まれる行為に対して刑罰が科される場合に、防御権の制約があると言えるのは何故か?」と尋ねられました。
その友人曰く、「後で処罰されるとしても、とりあえず防御権の保護範囲に含まれる行為をできたわけだから制約はないんじゃないの?」とのことです。

それに対して私は、「処罰された人は、普通、二度と同種の行為をしないだろうから、
“将来同じ行為しないよう余儀なくされる”ことが防御権の制約にあたるのでは?」と答えました。
私の理解は間違っていますでしょうか?

②佐藤幸治先生の『日本国憲法論』の655頁で説明されている「客観的審査」と、
『憲法の急所』の32頁で説明されている「法令審査」とは同じものなのか否か混乱しています。
佐藤先生は「客観的審査」について、
「立法事実を考慮に入れながら、法律自体の合憲性を検討するという取り組み方」とか
「客観的・一般的見地から法律の合憲性を検討すべきであるという趣旨のもの」といった説明をされていますが、
これを噛み砕いて説明したものが「法令違憲」であるという理解で間違いないのでしょうか?

以上、長文となってしまいましたが、宜しくお願い致します。

Unknown (snow)
2011-10-15 21:42:35
権利自由が憲法上保障されてるというのは、国家からその行為が否定的な評価を受けないことを憲法が保障している、
ということではないでしょうか(これなら事前事後規制を通じて共通ですよね)‥正確な理解がどのようなものか私も少し気になりますが。

ともあれ木村先生。お忙しいなか本当にありがとうございます。よろしくお願い致します。


>Wakkioさま (kimkimlr)
2011-10-15 22:09:01
こんにちは。お勉強お疲れ様です。
ぜひ、良い結果が出ますことをお祈りしております。

さて、第一のご質問。

この点は、私も昔疑問に思っていたのですが、
防御権の「制約」には、
「妨害」=事前規制と「制裁」=事後的な責任追及の二種類がある
ということのようです。

snowさんが書いてらっしゃいますが、
とりあえずその行為をできた、だけでは自由を十分に保障されたとはいえず、
その行為をしたことの責任を追及されないこと、までが自由権の内容だと
伝統的に観念されているのです。

これは制約の理論の問題というより、
自由権の定義の問題だとご理解ください。

第二の点ですが、佐藤先生のものについては
佐藤先生ご自身にきいて頂くしかありませんが、
まぁ、おおむね私のいう法令審査と同じなのでしょう。

このブログの「憲法判断の方法」カテゴリーの記事を読んで頂ければ、
より理解が深まると思います。

>snowさま
補足、ありがとうございます。


ありがとうございます。 (Wakiko)
2011-10-15 23:54:38
丁寧に教えていただき、ありがとうございます。

質問の第一点目については、色々な本を読んでみてもよく分からなかったので
(単に私の読み込み不足かもしれませんが…)、一気に視界が開けた感じです。

質問の第二点目ですが、「憲法判断の方法」カテゴリーの記事を読んで考えてみたところ、
「客観的審査」と「法令審査」とは、若干違うのかもしれないと思えてきました。私が考えてみたところをまとめると…
 ()「客観的審査」も「法令審査」も想定される全適用例を念頭に置いて審査する点では一致する。
 ()「法令審査」では想定される全適用例の一つ一つについて審査基準を立て、合憲性の判断を積み重ねていくのに対し
   「客観的審査」では全適用例をまとめて一つの束とし、それについて審査基準を立てて、合憲性の判断は1回だけ行う。
 ()()のような違いがある結果、「客観的審査」の結果は“全適用例について合憲”か
   “全適用例について違憲”しかない(=100か0かしかないイメージ)のに対し、
   「法令審査」の場合には“適用例の一部につき違憲”という場合もある(=100や0の他に80や20の場合もある)。
   といったところです。
   「客観的審査」の理解についてはいまだ憶測の域を脱していないので、佐藤先生の書かれた論文などを調べてみようと思います。

最後は独り言のようになってしまって申し訳ありませんでした…。

>snowさま
コメント、ありがとうございました。


>Wakkioさま (kimkimlr)
2011-10-16 07:20:03
どうもありがとうございます。

お話をうかがっていると、確かに佐藤先生の「客観的審査」は、私のいう法文違憲審査のことかもしれません。
ただ、引用していただいた記述だけを読むと、「法令審査」のようでもあります。
例えば・・・という具体的な指摘がないと、よくわからない個所ですね。

憲法判断の方法というのは、
各先生がいろいろおっしゃっていて
読む方からすると大変です。

個人的には、長谷部先生の教科書の記述が
お勧めですよ。

ではでは頑張ってください。

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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

コメント日が  古い順  |   新しい順
在監者の権利 (お茶の子)
2012-06-28 08:06:14
 芦部先生の「憲法秩序構成要素論」によれば,被拘禁者の権利が制約されるのは,憲法が在監関係を憲法秩序の構成要素として認めているからだ,と説明されておられます
 他方,18条によれば,法律によれば「自由」を奪うことができるとあります
 懲役刑に処せられた者は,「居住・移転の爾湯」を制限されるのは,芦部先生によれば,在監関係を憲法秩序の構成要素として認めているからだということになりそうですが,これはたまたま,わが国が刑罰として施設収容形態を採る自由刑をもっているためであり,施設収容形態をまったくとらない国もあると思います
 とすれば,刑罰に処せられた者がどのような権利を制限ないし否定されるかは法律の決め方に依存すると思うのですが,これが「憲法秩序構成要素」ということなのでしょうか?
 私は,むしろ,刑罰に処せられた者の権利は,(刑罰)制度に依存しているので,その限りで一般人とは異なる制約に服する,と考えています 在監者の諸権利の多くは「制度準拠」しているといってもよいかとも考えています
 学習者が偉大な芦部先生に物申すようで恐れ多いのですが,私の考えの当否について御教示をお願いします。
返信する
>お茶の子さま (kimkimlr)
2012-06-28 10:38:34
芦部先生は、
刑罰による人権制約は、
法益を守るという刑事法制度の目的達成のために
必要最小限度の規制だということで
目的手段審査をパスしているので、
憲法秩序で許容されている
ということではないでしょうか?
返信する

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