二段階審査の概念について、複数の方からご質問をいただきました。
そこで、ここにまとめてみようと思います。
よく、法令違憲を検討してから、適用(処分)違憲検討しようよ、
というわけですが、
これは、処分審査2(処分審査2の詳細は、こちらの記事参照)
をしましょう、といっている場合と、
これから紹介する二段階審査をしましょう、という場合の二つがあります。
ではでは、処分審査2ではない、二段階審査って、どういう審査でしょう?
一 適用・処分審査と法令審査
法令の憲法判断の方法としては、
1 適用・処分審査
当該事案における処分を根拠づける部分を審査するもの
<例>
原告 勤務時間外の政治活動を禁止したら違憲だ!
裁判所 勤務時間外の政治活動の禁止も合憲です
と、
2 法令審査
法令から導かれる適用例全てを審査するもの
<例>
原告 「交通秩序を乱す行為」を禁止する法文で、
だ行進を禁止したら、不明確だし表現の自由侵害で違憲だ。
裁判所 「交通秩序を乱す行為」を禁止する法文は、
A通常のデモに含まれる行為と
Bだ行進に適用されますが、
Aに適用すると違憲、Bに適用すると合憲です。
なので、Bだけに適用するよう限定解釈します。
そうすれば合憲です。
の二種類が基本的にあって、
判例・通説は、
一般的な自由権侵害のケースでは前者の審査方法を、
明確性が問題となるようなケースでは後者の審査方法を
とっているように思います。
明確性が問題となる場合、過度の広汎性も問題になるため、その審査するには、
法令全体の審査をしなくてはいけないというわけですね。
二 適用・処分審査と法令審査の対象が同じになる場合
さて、続いて適用・処分審査と法令審査の対象が同じになる場合。
前者の審査方法(適用・処分審査)を採る場合、
その事案と他の事案を区別する要素は何か、
の判断によって、
法令のどの部分を審査すべきかが変わってきます。
例えば、公務員の政治活動の場合、
「勤務時間外である」と言う点が重要な要素だと考える場合には、
「勤務時間外の政治活動」を禁止している部分が審査対象になり、
他方、
「公務員の政治活動」の禁止において、
勤務時間の内外、地位の利用の有無などは事案の重要な差異を構成しない
と考える立場からは(猿払上告審の立場です)、
「公務員の政治活動」の禁止全体が審査対象になります。
三 二段階審査
ところで、巷の上告理由や、司法試験・学部試験の答案では、
次のような論証のタイプがしばしばみられるところであります。
原告側の主張
主張イ そもそも、公務員の政治活動の禁止一般が違憲であり
国家公務員法102条そのものが無効である。
主張ロ 仮に、禁止一般が違憲だとは言えない
(国公法102条そのものは違憲でない)としても、
今回のような勤務時間外の活動を禁止している部分は違憲である。
これに対し、裁判所には、二つの答え方があります。
答え方1 そもそも、国公法102条に違憲部分はないから、
原告の主張は失当である。
答え方2イ まず、国公法102条のうち、
地位を利用した勤務時間内の政治活動に適用される部分は
少なくとも合憲なので、
国公法102条自体が違憲無効ということはありません。
ロ また、勤務時間外とはいえ、
今回の活動は、警察官の服を着て、
拳銃を振り回しながら、
「居飛車党に投票しなかったらわかってるな」
と発言するものであり、
これを処罰することも合憲である。
裁判所の答え方1は、法令全体の審査であり、法令審査による答え方です。
他方、
答え方2は、その事案とは関係のない部分(イ)も審査しており、
単純な処分審査による答え方ではありません。
また、
答え方2のイの部分は、法令全体の審査ではなく、
法令の適用例のうち、違憲の疑いの薄い、
いわゆる典型的適用例だけを審査しているわけで、
イの部分は、法令審査(法令の全体審査)とも違うのです。
このような裁判所の答え方を、二段階審査と呼ぶわけです。
こういう審査方法をとるメリットは、
もしかしたら、違憲部分があるかもしれない、とい可能性を残しつつ、
少なくとも法文全体は違憲でないと宣言できるところにあるわけです。
合憲的適用例が少なくとも一つあれば、
法文自体が違憲無効になることはないとされているので、
イのような審査をすれば、法文全体を審査しなくても、
法文自体は合憲だと言えるわけです。
こんな感じでまとめておくと、よろしいと思うのですが、どうでしょう?
そこで、ここにまとめてみようと思います。
よく、法令違憲を検討してから、適用(処分)違憲検討しようよ、
というわけですが、
これは、処分審査2(処分審査2の詳細は、こちらの記事参照)
をしましょう、といっている場合と、
これから紹介する二段階審査をしましょう、という場合の二つがあります。
ではでは、処分審査2ではない、二段階審査って、どういう審査でしょう?
一 適用・処分審査と法令審査
法令の憲法判断の方法としては、
1 適用・処分審査
当該事案における処分を根拠づける部分を審査するもの
<例>
原告 勤務時間外の政治活動を禁止したら違憲だ!
裁判所 勤務時間外の政治活動の禁止も合憲です
と、
2 法令審査
法令から導かれる適用例全てを審査するもの
<例>
原告 「交通秩序を乱す行為」を禁止する法文で、
だ行進を禁止したら、不明確だし表現の自由侵害で違憲だ。
裁判所 「交通秩序を乱す行為」を禁止する法文は、
A通常のデモに含まれる行為と
Bだ行進に適用されますが、
Aに適用すると違憲、Bに適用すると合憲です。
なので、Bだけに適用するよう限定解釈します。
そうすれば合憲です。
の二種類が基本的にあって、
判例・通説は、
一般的な自由権侵害のケースでは前者の審査方法を、
明確性が問題となるようなケースでは後者の審査方法を
とっているように思います。
明確性が問題となる場合、過度の広汎性も問題になるため、その審査するには、
法令全体の審査をしなくてはいけないというわけですね。
二 適用・処分審査と法令審査の対象が同じになる場合
さて、続いて適用・処分審査と法令審査の対象が同じになる場合。
前者の審査方法(適用・処分審査)を採る場合、
その事案と他の事案を区別する要素は何か、
の判断によって、
法令のどの部分を審査すべきかが変わってきます。
例えば、公務員の政治活動の場合、
「勤務時間外である」と言う点が重要な要素だと考える場合には、
「勤務時間外の政治活動」を禁止している部分が審査対象になり、
他方、
「公務員の政治活動」の禁止において、
勤務時間の内外、地位の利用の有無などは事案の重要な差異を構成しない
と考える立場からは(猿払上告審の立場です)、
「公務員の政治活動」の禁止全体が審査対象になります。
三 二段階審査
ところで、巷の上告理由や、司法試験・学部試験の答案では、
次のような論証のタイプがしばしばみられるところであります。
原告側の主張
主張イ そもそも、公務員の政治活動の禁止一般が違憲であり
国家公務員法102条そのものが無効である。
主張ロ 仮に、禁止一般が違憲だとは言えない
(国公法102条そのものは違憲でない)としても、
今回のような勤務時間外の活動を禁止している部分は違憲である。
これに対し、裁判所には、二つの答え方があります。
答え方1 そもそも、国公法102条に違憲部分はないから、
原告の主張は失当である。
答え方2イ まず、国公法102条のうち、
地位を利用した勤務時間内の政治活動に適用される部分は
少なくとも合憲なので、
国公法102条自体が違憲無効ということはありません。
ロ また、勤務時間外とはいえ、
今回の活動は、警察官の服を着て、
拳銃を振り回しながら、
「居飛車党に投票しなかったらわかってるな」
と発言するものであり、
これを処罰することも合憲である。
裁判所の答え方1は、法令全体の審査であり、法令審査による答え方です。
他方、
答え方2は、その事案とは関係のない部分(イ)も審査しており、
単純な処分審査による答え方ではありません。
また、
答え方2のイの部分は、法令全体の審査ではなく、
法令の適用例のうち、違憲の疑いの薄い、
いわゆる典型的適用例だけを審査しているわけで、
イの部分は、法令審査(法令の全体審査)とも違うのです。
このような裁判所の答え方を、二段階審査と呼ぶわけです。
こういう審査方法をとるメリットは、
もしかしたら、違憲部分があるかもしれない、とい可能性を残しつつ、
少なくとも法文全体は違憲でないと宣言できるところにあるわけです。
合憲的適用例が少なくとも一つあれば、
法文自体が違憲無効になることはないとされているので、
イのような審査をすれば、法文全体を審査しなくても、
法文自体は合憲だと言えるわけです。
こんな感じでまとめておくと、よろしいと思うのですが、どうでしょう?
そのように理解しても正しいと思います。
ということは、
法文違憲審査とは、記号(条文)自体を審査するものであり、
法令審査とは、記号があらわす意味(条文が適用される具体的事例の全て)を審査するものであり、
処分審査は、記号があらわす意味(条文が適用される具体的事例の全て)の内、特定の1事例を審査するものである。
と理解すればよろしいでしょうか?
法令がシニフィエ(記号があらわしている意味)です。
どだろ?
(一つ目のコメントと同じ方なのでしょうか。
違う方なのでしょうか・・・。)
基本的には仰る通り、処分審査1です。
因みに、私は、処分審査2は、法令の適用であり、
憲法判断ではないと考えております。
目的審査については、基本的には仰る通りです。
しかし、例えば、
住居侵入罪で表現行為を規制した事例では、
一段階目で、窃盗目的での侵入への適用を想定し、
管理権保護という目的は、
立ち入りの自由よりも重要だ、と判断しつつ、
二段階目で、表現行為への適用について
管理権保護と言う目的は
表現の自由の価値を上回るほど重要ではない、
といったような判断をすることはあり得ます。
つまり、一段階目と二段階目で
同じ種類の行為・権利が問題になる場合には、
二段階目で目的審査をする必要がない
ということになるのですね。
ではでは。
ただそのときは目的はすでに法文審査段階で審査してるので手段についてだけ目的との関連性を審査すれば足りる。当然立法事実しか使えないと。そして審査基準は法文審査と同じものになりますよね?
あと処分審査1のとき、そして二段階審査の処分審査のときは先生は具体的事実(おそらく司法事実)を抽象化することで立法事実にして目的手段審査のあてはめに使っていると自分は解釈しているのですが合っているでしょうか?
まとまりのない分かりづらい長文になってしまい申し訳ありません。どうぞお答えおねがいします!!
できましたら、お名前とタイトル、
簡単に参照された論文などをお示しいただけると幸いでございます。
合憲的適用例がある、
というのは、
違憲部分と不可分に結びついてない
合憲的適用部分がある、という意味です。
こういう意味での合憲的適用例がある法文が
法文自体違憲とならない、というのが
判例・通説の処理なので、
それに依拠しております。
もちろん、違憲的適用例があれば、
限定解釈も部分無効も許さず
法令すべてを違憲とすべき
という極端な学説も考えられないではないですが・・・。