木村草太の力戦憲法

生命と宇宙と万物と憲法に関する問題を考えます。

中盤戦の戦い方(5・完)

2012-02-20 06:50:26 | 憲法学 憲法判断の方法
さて、中盤戦の戦い方ということで連載をしてきましたが、
いわゆる防御権制約の具体的事案の分析というのは、
例の四要素に関する分析です。


原告・弁護側(違憲を主張する側)は、
その事案の中から、

①目的の正当性
②関連性(目的達成に役立っていること)
③必要性(LRAがないこと)
④相当性(利益均衡)

を否定する要素を抽出し主張します。
(法文違憲審査の場合は、典型的適用例に含まれる要素、
 処分審査の場合は、その事案の特有の要素でないといけない)

他方、被告・国側は、
その事案から、①から④を肯定する要素を抽出していきます。


また、目的が複数構成できる場合、
例えば、猿払事件なんかは、
「行政の中立性それ自体」の保護という目的と
「それに対する信頼」の保護と言う二つの目的を構成できました。


で、①から④を分節して考えた方が、
クリアな思考ができるので、
私としては、そのまま書くかどうかはともかく、
実際の問題で、制約が認定できたら、
この四要素を表にして分析してみることをお勧めします。

その上で、目的手段審査の基準を使うなら、
①と④を目的審査に、
②と③を手段審査におとしこんで書いてやれば、
おお外しはしないはずです。


・・・。
もし、
「そうはいっても、事案から①から④の要素を
 抽出できないよ・・・。」
こう思われた方がいたら、これはもう練習あるのみです。

お手元の問題集、判例集の事案を読み
ひたすら、①から④の要素抽出の練習をしましょう。


・・・。
また、例の採点実感先生の言うことがどうしても怖い!
ということでしたら、いっそうのこと、目的手段審査の枠組みを放棄して、
制約認定後に普通目的手段審査の枠組みを立てる箇所
(急所で言うと2-4工程か)で、

「このような権利(防御権)の制約が正当化できるか否かは、
 ①正当な目的を構成できるか、
 ②規制がその目的と関連性があるといえるか、
 ③規制について必要性があるといえるか、
 ④目的が、失われる利益よりも重要と評価できるか、
 の四点で検討すべきである。」

という基準を立てて、
目的手段審査の枠組みをとらずに議論してしまいましょう。
(原告のとこだけでなく、私見を述べるところでも
 この基準で判断してもよいのです。)

このような枠組みは、それはそれで不安だ、というご意見もおありでしょうが、
そんな時は、猿払事件上告審判決の立てている
制約正当化の可否を判断する基準を見て見て下さい。

ほとんど、この通りですから・・・。


・・・。
というわけで、これが中盤戦の戦い方ですね。
お付き合いいただきありがとうございました。


そうそう。積み残された課題ですが、
公務員の政治活動の禁止を正当化しようとすると、
結局、

「政治活動するような奴らは、
 業務にも政治信条をもちこんで、
 不当な業務、反対する政治信条を持つ人への
 嫌がらせ的業務をするに違いない」
 という意識を持った国民に迎合すること
 (そういう国民の信頼の確保)

という目的を立てざるを得ません。

実は、法学男子さん、いまどき喫煙者さんが
おっしゃっていたことですが、
「俺のクラスに、そんな国民なんかいない!」
という熱血タケオカ先生的に断言するのは
結構難しいことなのです。

とはいえ、私のいつもの戦法で恐縮なのですが、
そもそも、今見た目的って、正当なのでしょうか?

ちょっと考えて見て下さい。

ではでは
「結局、何のための公務員の政治活動の禁止か?」
の記事で会いましょう。

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4 コメント

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Unknown (vI-_-Io)
2012-02-20 20:13:54
民主主義社会形成のために必要であり正当な目的なのではないかと思います。

他の公務員個人にとっても、信頼が罷免されない一要素であることからも正当性が担保されるようにも思います。
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Unknown (杏アフター)
2012-02-20 21:41:46
目的が、
①「」内にあるような主観的なものを過ぎないものを中核としていること
②一部国民のもの(主観)に過ぎないこと
③「」内の意識に合理性に疑問があること
から、正当な目的とは言えないと思います。
返信する
正当ではないと思います (YS)
2012-02-20 22:53:58
「政治活動をする人の規範意識の低さ」につき,事実の裏付けがあるならば別ですが,現状そうではないので,当該国民の意識は偏見にすぎないと思います。
そうした偏見への迎合を目的とした規制は,政治活動をする人の自律性を否定するもので,「個人の尊重」(憲法13条前段)と相容れない不当な目的ではないでしょうか。
あるいは,政治的な信条による差別の助長を目的とするもので,「非差別原則」(憲法14条1項後段)に反するともいえるのかなぁ,と考えました。
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>みなさま (kimkimlr)
2012-02-21 06:55:45
ありがとうございます。
記事にしてみました。
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