こちらの動画における私の解説・発言・他の出演者の方の反応です。
17:00から25:00ああたりまで木村による判決の解説。
「24条は同性婚禁止規定」との主張に対して、判決(18P)は、24条は「異性婚について定めたものであり、同性婚について定めるものではない」と言っている。つまり、同性婚とは関係のない条文、ということだ。
中には、この個所を見て、「憲法24条は同性婚を禁止していると判決が言っている」と誤った解説を故意に流布している人がいる。しかし、それは明確な誤りなので、しっかりと読み直してほしい。
24条が関係ないとなると、平等権(14条)の問題になる。
まず問題となるのは、異性愛者と同性愛者との間に区別があるかどうか。
国の側は、同性愛者も異性となら婚姻できるので区別はない、と主張した。
しかし判決は、「異性愛者のカップルは、婚姻することにより婚姻によって生じる法的効果を享受するか、婚姻せずそのような法的効果を受けないかを選択することができるが、同性愛者のカップルは、婚姻を欲したとしても婚姻することができず、婚姻によって生じる法的効果を享受することはできない。そうすると、異性愛者と同性愛者との間には、上記の点で区別取り扱いがあるということができる」と判断した。
次に問題となるのが、何を平等にしなければならないのか。
同性婚では自然生殖ができないので、異性婚と全く同じ効果としてよいのかについて議論がある。したがって、婚姻の効果ごとに丁寧に見ていく必要がある。
同居義務・扶養義務等は、婚姻ではなく、当事者による通常の契約でも設定できるので、同性婚に認める必要はない、との議論があり、国も、そうした主張をしていた。
判決は、婚姻が身分行為であることを指摘したうえで、「婚姻と契約や遺言は、その目的や法的効果が異なるものといえるから、契約や遺言によって個別の債権債務関係を発生させられることは、婚姻によって生じる法的効果の代替となりうるものとはいえず、被告の蒸気主張は、採用することができない」とし、そのうえで、違憲の判断をした。
この部分について、「判決は、同性婚を認めないのが違憲だといったのではなく、婚姻のいくつかの効果を認めないのが違憲だといっただけだ」と解説をする人もいるが、それは判決をよく読んでいないと言ってよい。
なぜなら、判決は婚姻が身分行為であって、契約や遺言では代替できないと指摘しており、「身分行為としての婚姻」を前提とした同居義務・相続等を設定しなければ違憲だと明確に言っている。「同性婚を認めなければ違憲だ」と言った判決として読むのが正しい。
ただ、子どものこと等を考えると、完全に同じ効果にしてよいかは議論の余地があるので、「婚姻の全部の効果の享受を平等にしなければいけないか否かは」については、留保するとの立場をとっている。
46:30あたり
立法・政治の専門家ではないので、今後の立法・政治がどのようにしていくべきかについてはわからない。
憲法学の専門家としては、こうした訴訟をどんどん進めていくべきと考える。
昨日、とくに午前中の段階では、「画期的な判決が出た」と盛り上がっていたが、午後になり、この判決を前提にした議論がされるようになると、「この判決では不十分だ」という声が上がってくるようになった。それは健全だろうと思う。
例えば、24条についての踏み込みが浅い部分もある。この条文は、異性間の婚姻を法制度として保護することを定めているため、もしも、異性婚について法的保護を与えなければ、憲法24条違反となる。
「Aに権利を与える」と書いてあるときには、「Aと同じような人にも同じ権利を与えるべきだ」と、条文の類推適用をすることがある。例えば、憲法14条は、国民だけでなく、外国人にも類推適用だれている。あるいは、憲法31条は、刑罰だけでなく、行政手続きにも類推適用されている。
このことからすれば、同性婚にも憲法24条を類推適用する、という議論が成り立つ。原告はこれを主張したが、退けられた。
ただし、憲法14条を論じる際に、「婚姻によって生じる法的効果を享受する利益は、それが異性間のものであれば、憲法24条がその実現のための婚姻を制度として保障していることからすると、異性愛者にとって重要な法的利益であるということができる。異性愛者と同性愛者の差異は、性的志向が異なることのみであり、かつ、性的志向は人の意思によって選択・変更できるものではないことに照らせば、異性愛者と同性愛者との間で、婚姻によって生じる法的効果を享受する利益の価値に差異があるとする理由はなく、そのような法的利益は、同性愛者であっても、異性愛者であっても、等しく享有し得るものと解するのが相当である」という。
今回の判決について、「憲法24条は関係ないと言っている」とだけ言う人は、判決のこの部分を読んでいないのだろう。この判決は、「憲法24条を類推適用する」とは言っていないものの、憲法14条を通じて類推適用するかのような記述になっている。今回の地裁判決によって、控訴審で、憲法24条類推適用を主張していく基盤ができたとも考えられる。
53:40あたり
みたらし加奈氏が、ツイッター等で「同性婚を認めさせたいのであれば憲法24条を改正すべきでは」との意見があること、テロップにて「○○が、違憲はミスリードと発言していましたが、それについての解説も、お時間があればお願いしたいです。」との質問があること紹介した上で、「木村さん、憲法改正は必要なのでしょうか」と問う。
木村:「同性婚を法制化するためにということですよね」
みたらし:「はい」
木村:「少なくとも今回の判決を前提とする限りは、全く必要性がないというふうになりますので、判決文を読んだことがある人であればそういう結論になりますし、故意にデマを流そうと確信をもって差別している人は、そういうことは言わないでしょうね。ということで、その基準でぜひいろんな人のツイートとか発言を見てもらえればと思います」
みたらし:「違憲はミスリードの件についてはどう思われますか」
木村:「はい、えーっと、私が今示した基準だと、差別でしゃべっているか、判決を読んでしゃべっているか、どちらだと思いますか」
(木村註・聞き取るとこういっていますが、文脈上明らかなように「判決を読んでないで」の言い間違いです。)
みたらし:「差別でしゃべっている気がします」
木村:「そういうことになるでしょうね」
みたらし:「ありがとうございます」
木村:「差別をするときに、人間は事実を無視します。なので、いくら事実を言っても変えませんし、どんどん実際の判決文と違うことを言うと思います。」
他の参加者:「素敵、素敵。その通り」
拍手の音。
木村:「私は平等権の専門家であると同時に、差別されない権利の専門家でもありますので」
みたらし:「はっきり言っていただけて、すごく心強いです」
須田:「すみません。今の憲法改正が必要かどうかというところで、誤解がやっぱり皆さんにあるようなので、一点だけ訂正を、訂正というか、きちんとわかっていてほしいのは、今回の訴訟で国は一度も、同性婚は憲法で禁止されているという主張をしていないんです。裁判所が認めなかったではなくて、被告国が一度もしていないんです。それなのに、憲法改正しないと違憲になるっていうのは、『えっと、どっから出た話ですか?』っていう感じなので、木村先生おっしゃる通り、差別的意図を感じるなとは思います」
松岡氏から、憲法24条を改正するのがわかりやすいという主張について、見解を求められ、おおむね次のように答える。
憲法24条には、憲法24条固有の価値があり、これを削ると、婚姻における男女の平等という価値が削られる可能性がある。
もしも、同性愛者の婚姻の権利を憲法に書きたいのであれば、別の条文として用意すべき。その思いが本気なのであれば、早く、条文案を提示すればよい。
1:09:52あたり
最後に
原告の皆さんのお話を聞いて、長い時間苦しんでおられたことが分かった。
賠償金もとることを目指すという趣旨の控訴・上告を支持する。
17:00から25:00ああたりまで木村による判決の解説。
「24条は同性婚禁止規定」との主張に対して、判決(18P)は、24条は「異性婚について定めたものであり、同性婚について定めるものではない」と言っている。つまり、同性婚とは関係のない条文、ということだ。
中には、この個所を見て、「憲法24条は同性婚を禁止していると判決が言っている」と誤った解説を故意に流布している人がいる。しかし、それは明確な誤りなので、しっかりと読み直してほしい。
24条が関係ないとなると、平等権(14条)の問題になる。
まず問題となるのは、異性愛者と同性愛者との間に区別があるかどうか。
国の側は、同性愛者も異性となら婚姻できるので区別はない、と主張した。
しかし判決は、「異性愛者のカップルは、婚姻することにより婚姻によって生じる法的効果を享受するか、婚姻せずそのような法的効果を受けないかを選択することができるが、同性愛者のカップルは、婚姻を欲したとしても婚姻することができず、婚姻によって生じる法的効果を享受することはできない。そうすると、異性愛者と同性愛者との間には、上記の点で区別取り扱いがあるということができる」と判断した。
次に問題となるのが、何を平等にしなければならないのか。
同性婚では自然生殖ができないので、異性婚と全く同じ効果としてよいのかについて議論がある。したがって、婚姻の効果ごとに丁寧に見ていく必要がある。
同居義務・扶養義務等は、婚姻ではなく、当事者による通常の契約でも設定できるので、同性婚に認める必要はない、との議論があり、国も、そうした主張をしていた。
判決は、婚姻が身分行為であることを指摘したうえで、「婚姻と契約や遺言は、その目的や法的効果が異なるものといえるから、契約や遺言によって個別の債権債務関係を発生させられることは、婚姻によって生じる法的効果の代替となりうるものとはいえず、被告の蒸気主張は、採用することができない」とし、そのうえで、違憲の判断をした。
この部分について、「判決は、同性婚を認めないのが違憲だといったのではなく、婚姻のいくつかの効果を認めないのが違憲だといっただけだ」と解説をする人もいるが、それは判決をよく読んでいないと言ってよい。
なぜなら、判決は婚姻が身分行為であって、契約や遺言では代替できないと指摘しており、「身分行為としての婚姻」を前提とした同居義務・相続等を設定しなければ違憲だと明確に言っている。「同性婚を認めなければ違憲だ」と言った判決として読むのが正しい。
ただ、子どものこと等を考えると、完全に同じ効果にしてよいかは議論の余地があるので、「婚姻の全部の効果の享受を平等にしなければいけないか否かは」については、留保するとの立場をとっている。
46:30あたり
立法・政治の専門家ではないので、今後の立法・政治がどのようにしていくべきかについてはわからない。
憲法学の専門家としては、こうした訴訟をどんどん進めていくべきと考える。
昨日、とくに午前中の段階では、「画期的な判決が出た」と盛り上がっていたが、午後になり、この判決を前提にした議論がされるようになると、「この判決では不十分だ」という声が上がってくるようになった。それは健全だろうと思う。
例えば、24条についての踏み込みが浅い部分もある。この条文は、異性間の婚姻を法制度として保護することを定めているため、もしも、異性婚について法的保護を与えなければ、憲法24条違反となる。
「Aに権利を与える」と書いてあるときには、「Aと同じような人にも同じ権利を与えるべきだ」と、条文の類推適用をすることがある。例えば、憲法14条は、国民だけでなく、外国人にも類推適用だれている。あるいは、憲法31条は、刑罰だけでなく、行政手続きにも類推適用されている。
このことからすれば、同性婚にも憲法24条を類推適用する、という議論が成り立つ。原告はこれを主張したが、退けられた。
ただし、憲法14条を論じる際に、「婚姻によって生じる法的効果を享受する利益は、それが異性間のものであれば、憲法24条がその実現のための婚姻を制度として保障していることからすると、異性愛者にとって重要な法的利益であるということができる。異性愛者と同性愛者の差異は、性的志向が異なることのみであり、かつ、性的志向は人の意思によって選択・変更できるものではないことに照らせば、異性愛者と同性愛者との間で、婚姻によって生じる法的効果を享受する利益の価値に差異があるとする理由はなく、そのような法的利益は、同性愛者であっても、異性愛者であっても、等しく享有し得るものと解するのが相当である」という。
今回の判決について、「憲法24条は関係ないと言っている」とだけ言う人は、判決のこの部分を読んでいないのだろう。この判決は、「憲法24条を類推適用する」とは言っていないものの、憲法14条を通じて類推適用するかのような記述になっている。今回の地裁判決によって、控訴審で、憲法24条類推適用を主張していく基盤ができたとも考えられる。
53:40あたり
みたらし加奈氏が、ツイッター等で「同性婚を認めさせたいのであれば憲法24条を改正すべきでは」との意見があること、テロップにて「○○が、違憲はミスリードと発言していましたが、それについての解説も、お時間があればお願いしたいです。」との質問があること紹介した上で、「木村さん、憲法改正は必要なのでしょうか」と問う。
木村:「同性婚を法制化するためにということですよね」
みたらし:「はい」
木村:「少なくとも今回の判決を前提とする限りは、全く必要性がないというふうになりますので、判決文を読んだことがある人であればそういう結論になりますし、故意にデマを流そうと確信をもって差別している人は、そういうことは言わないでしょうね。ということで、その基準でぜひいろんな人のツイートとか発言を見てもらえればと思います」
みたらし:「違憲はミスリードの件についてはどう思われますか」
木村:「はい、えーっと、私が今示した基準だと、差別でしゃべっているか、判決を読んでしゃべっているか、どちらだと思いますか」
(木村註・聞き取るとこういっていますが、文脈上明らかなように「判決を読んでないで」の言い間違いです。)
みたらし:「差別でしゃべっている気がします」
木村:「そういうことになるでしょうね」
みたらし:「ありがとうございます」
木村:「差別をするときに、人間は事実を無視します。なので、いくら事実を言っても変えませんし、どんどん実際の判決文と違うことを言うと思います。」
他の参加者:「素敵、素敵。その通り」
拍手の音。
木村:「私は平等権の専門家であると同時に、差別されない権利の専門家でもありますので」
みたらし:「はっきり言っていただけて、すごく心強いです」
須田:「すみません。今の憲法改正が必要かどうかというところで、誤解がやっぱり皆さんにあるようなので、一点だけ訂正を、訂正というか、きちんとわかっていてほしいのは、今回の訴訟で国は一度も、同性婚は憲法で禁止されているという主張をしていないんです。裁判所が認めなかったではなくて、被告国が一度もしていないんです。それなのに、憲法改正しないと違憲になるっていうのは、『えっと、どっから出た話ですか?』っていう感じなので、木村先生おっしゃる通り、差別的意図を感じるなとは思います」
松岡氏から、憲法24条を改正するのがわかりやすいという主張について、見解を求められ、おおむね次のように答える。
憲法24条には、憲法24条固有の価値があり、これを削ると、婚姻における男女の平等という価値が削られる可能性がある。
もしも、同性愛者の婚姻の権利を憲法に書きたいのであれば、別の条文として用意すべき。その思いが本気なのであれば、早く、条文案を提示すればよい。
1:09:52あたり
最後に
原告の皆さんのお話を聞いて、長い時間苦しんでおられたことが分かった。
賠償金もとることを目指すという趣旨の控訴・上告を支持する。