私人間効力の審査 (ちゃんちゃん)
2011-10-07 22:38:52
木村先生はじめまして。現在法学部4年で法科大学院受験を控えているものです。
先生の「憲法の急所」で憲法を武器にできるようになりました。ありがとうございます。
質問したいのですが
・自由権の私人間効力において審査するような場合、どのような論証をすればよいのでしょうか。
急所内では憲法上のの権利論の基本手順として
1、憲法問題の設定
2、実体判断
3、具体的処理
とされていましたが、私人間効力においてはどのように行えばよいのか教えてください。
急所内では自由権の私人間効力についての演習が無かったのでいまいち講義編だけでは自分の理解が追いつかなかったので。
・あとできればでかまいませんが、その際論証例として小樽温泉事件を参照に例示していただけると幸いです。
割りこんですみません。 ( snow)
2011-10-07 22:59:32
ちゃんちゃんさま。
第三者が入ってきて申し訳ないのですが、
ご自身だったら、その判例についてはどのように論ずるのか教えてください。
下世話かもしれませんが、法科大学院に入ると、おそらく教授に論証だけ教えてくださいといっても教えてもらえないと思います。先に自分はどう考えるのか、ということを提示することが求められます。
基本的に間違いなんてないので、是非示して頂けたら、と思います。
コメント見てる方も参考になると思いますよ。
snowさまへ (ちゃんちゃん)
2011-10-08 10:31:31
ただ、論証例示してくださいというのは虫が良すぎたかもしれませんね。もうしわけありません。
自分ならば審査方法として
1、私人(相手方)による行為、問題の権利(平等権)設定
2、保証根拠、平等権制約の認定(ここで何に基づく差別なのかも認定)
3、私人間効力論、相手方の営業の自由
4、①14条1項後段列挙事由、特に人種に基づく差別であることより私人間においてもその解消が要請される
及び②公衆浴場の公的性格よりこの要請は法的義務となる
5、相手方の措置は違憲
という感じで書くと思います。(判例の立場で書きました)
ただ自分が不安なのは
・私人間効力の憲法問題の設定を、国家による自由権制限の場合と同じように設定していいのか。
・相手方の営業の自由との調整はどの段階で行えばいいのか。
がいまいち自信が無いので教えていただきたく思ったのです。
>ちゃんちゃんさま、snowさま (kimkimlr)
2011-10-09 06:59:24
>snowさま
どうもありがとうございます。
そうですね、自分の立場を示してくれると
こちらもスムーズです。
>ちゃんちゃんさま
さて、ご指摘いただいた問題なのですが、
誰が、誰に、何を請求している場面なのか、
整理していただけますでしょうか。
そこから議論を始めたいと思います。
私人間効力 (snow)
2011-10-12 22:41:15
こんばんは。いくつか前のコメントで、私人間効力についてのやり取りが途中のままではないでしょうか。
どなたに了解戴くべきなのかわからないのですが、もし別のところで進行していないなら、私が木村先生からの問いに答えても構わないでしょうか。
私にとっても不安といいますか、苦手意識が強い分野ですので、もしよろしければ代役をさせていただけたら、と思いました。
>snowさま (kimkimlr)
2011-10-13 10:42:01
そうですねえ。
ちゃんちゃんさまがいなくなってしまいました。
ではいいですよ。
引き継いで答えてみてください。
私人間効力 (snow)
2011-10-13 14:59:28
よろしくお願いします。
小樽温泉事件がどの裁判例を指しているのかわかりませんが、おそらく、
札幌地裁H14.11.11のことかと思われます。以下の事案は大分簡略化してあります。
本件は、ある公衆浴場の経営会社が、ある白人の男性に対して、
(日本国籍の有無ではなく)人種が異なることを理由にその利用を拒否
(利用を一律拒否しており本件もその一環です)したことが、不法行為にあたるかが問題になりました。
[誰の]
原告は、入浴拒否された白人の男性(X)です。
[誰に対する]
被告は、上記の拒否した会社(Y)です。
[請求]
1.
民法709、710条に基づく損害賠償請求です。
2.
要件は、①故意又は過失、②違法性、③因果関係、④損害の発生、で、特に②④が問題になります。
②は、本件入浴拒否は、憲法14条1項が保障する、合理的理由のない差別を受けない権利利益を侵害するため、違法である。
④は、本件違法な入浴拒否により、精神的損害を被ったとして、慰謝料200万円を求めます。
>snowさま (kimkimlr)
2011-10-13 17:41:03
ありがとうございます。
ご指摘いただいたような事案ですが
請求2の②ですね。
違法性というより、被侵害利益が
権利ないし法的保護に値する利益か、
というところが問題です。
ところで、さしあたり憲法14条1項を無視して
民法709条を解釈すると、
この事案の被侵害利益は、法的に保護されている
といえると思いますか?
私人間効力 (snow)
2011-10-13 19:52:07
失礼しました。はしょってしまったのですが、判例・通説は、
「権利又は法律上保護される利益」の侵害に加えて、加害者側の侵害行為の性質(態様)によっては
「違法」な侵害であるか否かで最終的な不法行為の成否を決している、即ち「違法性」を、
被侵害利益と加害者側の行動の自由との利益衡量の場としている(弘文堂NOMIKA債権各論Ⅱp28)
という理解でしたので、先ほどの私のコメントは違法性の中に被侵害利益の判断を組み込んでしまっております。
正確には先生の御指摘のとおりです。
「ところで、さしあたり憲法14条1項を無視して
民法709条を解釈すると、
この事案の被侵害利益は、法的に保護されている
といえると思いますか?」
709条は「‥他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は‥」としかなく、
これをどう解釈すれば当該被侵害利益が法的に保護されているのかよくはわからないのですが‥
解釈方法として正しいのかわかりませんが、他の条文を参照すれば、
財産権や名誉、身体・自由、両性の本質的平等?くらいは含まれ得ると思います(他にもあると思います)。
一般的には、判例や学説が709条を解釈して認めている被侵害利益としては、
所有権、債権等の財産的利益、生命身体、名誉プライバシー、人格的利益等が挙げられ、
不合理な差別を受けない利益は、人格的利益に含まれそうなのですが、そのような解釈をした教科書や判例はみたことがありません。
従って、人種の違いを理由に不合理な差別を受けない利益は、判例学説によっては、
法的に保護された利益として認められていない、ということになると思います。
>snowさま (kimkimlr)
2011-10-14 16:43:03
そうですね。
そういう場合というのは、
法律が、
(私人により)差別を受けた人がいる場合に
国が被害者を保護することを必ずしも要請していない場合ということになります。
なので、被害者は国に対し、
差別されない権利の保護を請求することになります。
こうした保護請求権を認めるのが
私人間効力肯定説です。
そして、憲法だけで国が損害賠償命令を出す根拠になる、と考えるのが直接適用説。
憲法だけでは権利が具体的でないと考えるのが
間接適用説なわけですね。
こんな感じの解説でどうでしょう?
私人間効力 (snow)
2011-10-14 19:10:20
ありがとうございます。具体例に則して考えると理解が深まりました。
この事案だと不法行為が問題になっていますが、民法90条の公序良俗違反を主張する場合は、
まずは、被侵害利益を民法は「公序」として保護しているのかどうかをまず検討する、ということになるのだろうと思いました。
これまでの解説を踏まえての質問が3つあります。趣旨が伝わるようにと書いていたら長文になってしまいました。
すみません。おかしな理解をしているかもしれないので御指摘いただけたら幸いです。
まず1つ目なのですが、憲法適合解釈請求権なのですが、その請求権の行使により生じる「効果」は、
裁判所が私法を解釈する際にその憲法の条項を参照しなければならない、というものですが、
行使「要件」はどのように考えればいいのでしょうか。
三菱樹脂事件では「個人の基本的な自由や平等に対する具体的な侵害またはそのおそれがあり、
その態様、程度が社会的に許容しうる限度を超えるときは…」と述べています。
これを憲法適合解釈請求権の一般的な要件と考えていいのでしょうか。
(2つ目の質問なのですが、)仮にそうだとすると、ここで侵害の認定が必要になりますが、
その侵害の認定はいわゆる目的手段審査を用いて構わないのか、という点がよくわかりません。
本事案についていえば、Xの人種による不合理な差別を受けない利益に対する、
侵害またはそのおそれがあったことを認定しなければなりませんが、
不合理か否かは目的手段審査等の判断枠組みがなければ不明確な当てはめになってしまいそうな気がします。
3つ目なのですが、裁判所が、憲法適合解釈請求権の行使要件は充足していると認め、
原告の主張する被侵害利益が法的に保護されるもの、と解釈したとしても、それで直ちに違法となるわけではないと思います。
「一面で私的自治の原則を尊重しながら‥他面で‥平等の利益を保護し‥調整を図る」にあるとおり、
被告の営業の自由等との利益調整が必要になると思います。この場合、目的手段審査ではなく、
権利利益の重要性や制約の態様を検討して、どちらの利益がより重要か、
という比較衡量の枠組みで最終的な違法性の有無を判断してかまわないのでしょうか。
お忙しいのにも関わらず長文にしてしまい本当に申し訳ありません。
ケースバイケースかもしれませんが、基本的な枠組みの理解がまず大事だと考えました。 よろしくお願い致します。
>snowさま (kimkimlr)
2011-10-14 21:30:47
ええと、保護請求権の行使要件は、
国民であること、保護請求の対象となる権利の侵害があること、になるでしょう。
保護請求と私的自治の調整というような話ですが、
まあ、利益考量のようなことをするのでしょうが、
請求権の思考様式(一段階画定方式)を前提にするなら、
その権利について保護請求権あり=利益考量を許さず、になるんでしょう。
なので、私的自治との調整は、
保護請求の効果を確定するところでやっちゃうのが自然かもしれません。
実戦例が少なくて、良くわからないところも多いのですが、
私も今後考えてみたいと思います。
私人間効力 (snow)
2011-10-14 23:50:21
ここまで長い質問にお付き合いいただき本当にありがとうございました。
自分の書いたコメントを見直してみると、後で改めて比較衡量をしなくても、
初めの自己の権利に対する侵害の有無を認定するところで、
既に自己の権利利益と相手方の営業の自由等の権利利益の価値との比較衡量をしてしまっているのかもしれません。
すみません、最後に一つだけお聞きしたいことがあります。
自分のなかで私人間効力の位置付けがいまいちはっきりしていません。
仮に木村先生が司法試験委員で、
対国家ではなく敢えて私人間効力の問題を出題する場合があるとすれば、憲法論として、どういうことを聞きたいと考えて作問されるのでしょうか。
もちろん、ケースバイケースだとは思うのですが、もし差し支えがなければ、
例えば私人間効力ならこういうことを聞いてみたい、いや少なくともこれくらいは答えてもらいたい、
ということがあればお聞かせ願えないでしょうか。質問がふわっとしてしまい申し訳ありません。
差し支えなければどうかよろしくお願い致します。
そうですねえ、やはり過少保護という状況が私人間効力論を要求しているという構造をききたいですね。
2011-10-07 22:38:52
木村先生はじめまして。現在法学部4年で法科大学院受験を控えているものです。
先生の「憲法の急所」で憲法を武器にできるようになりました。ありがとうございます。
質問したいのですが
・自由権の私人間効力において審査するような場合、どのような論証をすればよいのでしょうか。
急所内では憲法上のの権利論の基本手順として
1、憲法問題の設定
2、実体判断
3、具体的処理
とされていましたが、私人間効力においてはどのように行えばよいのか教えてください。
急所内では自由権の私人間効力についての演習が無かったのでいまいち講義編だけでは自分の理解が追いつかなかったので。
・あとできればでかまいませんが、その際論証例として小樽温泉事件を参照に例示していただけると幸いです。
割りこんですみません。 ( snow)
2011-10-07 22:59:32
ちゃんちゃんさま。
第三者が入ってきて申し訳ないのですが、
ご自身だったら、その判例についてはどのように論ずるのか教えてください。
下世話かもしれませんが、法科大学院に入ると、おそらく教授に論証だけ教えてくださいといっても教えてもらえないと思います。先に自分はどう考えるのか、ということを提示することが求められます。
基本的に間違いなんてないので、是非示して頂けたら、と思います。
コメント見てる方も参考になると思いますよ。
snowさまへ (ちゃんちゃん)
2011-10-08 10:31:31
ただ、論証例示してくださいというのは虫が良すぎたかもしれませんね。もうしわけありません。
自分ならば審査方法として
1、私人(相手方)による行為、問題の権利(平等権)設定
2、保証根拠、平等権制約の認定(ここで何に基づく差別なのかも認定)
3、私人間効力論、相手方の営業の自由
4、①14条1項後段列挙事由、特に人種に基づく差別であることより私人間においてもその解消が要請される
及び②公衆浴場の公的性格よりこの要請は法的義務となる
5、相手方の措置は違憲
という感じで書くと思います。(判例の立場で書きました)
ただ自分が不安なのは
・私人間効力の憲法問題の設定を、国家による自由権制限の場合と同じように設定していいのか。
・相手方の営業の自由との調整はどの段階で行えばいいのか。
がいまいち自信が無いので教えていただきたく思ったのです。
>ちゃんちゃんさま、snowさま (kimkimlr)
2011-10-09 06:59:24
>snowさま
どうもありがとうございます。
そうですね、自分の立場を示してくれると
こちらもスムーズです。
>ちゃんちゃんさま
さて、ご指摘いただいた問題なのですが、
誰が、誰に、何を請求している場面なのか、
整理していただけますでしょうか。
そこから議論を始めたいと思います。
私人間効力 (snow)
2011-10-12 22:41:15
こんばんは。いくつか前のコメントで、私人間効力についてのやり取りが途中のままではないでしょうか。
どなたに了解戴くべきなのかわからないのですが、もし別のところで進行していないなら、私が木村先生からの問いに答えても構わないでしょうか。
私にとっても不安といいますか、苦手意識が強い分野ですので、もしよろしければ代役をさせていただけたら、と思いました。
>snowさま (kimkimlr)
2011-10-13 10:42:01
そうですねえ。
ちゃんちゃんさまがいなくなってしまいました。
ではいいですよ。
引き継いで答えてみてください。
私人間効力 (snow)
2011-10-13 14:59:28
よろしくお願いします。
小樽温泉事件がどの裁判例を指しているのかわかりませんが、おそらく、
札幌地裁H14.11.11のことかと思われます。以下の事案は大分簡略化してあります。
本件は、ある公衆浴場の経営会社が、ある白人の男性に対して、
(日本国籍の有無ではなく)人種が異なることを理由にその利用を拒否
(利用を一律拒否しており本件もその一環です)したことが、不法行為にあたるかが問題になりました。
[誰の]
原告は、入浴拒否された白人の男性(X)です。
[誰に対する]
被告は、上記の拒否した会社(Y)です。
[請求]
1.
民法709、710条に基づく損害賠償請求です。
2.
要件は、①故意又は過失、②違法性、③因果関係、④損害の発生、で、特に②④が問題になります。
②は、本件入浴拒否は、憲法14条1項が保障する、合理的理由のない差別を受けない権利利益を侵害するため、違法である。
④は、本件違法な入浴拒否により、精神的損害を被ったとして、慰謝料200万円を求めます。
>snowさま (kimkimlr)
2011-10-13 17:41:03
ありがとうございます。
ご指摘いただいたような事案ですが
請求2の②ですね。
違法性というより、被侵害利益が
権利ないし法的保護に値する利益か、
というところが問題です。
ところで、さしあたり憲法14条1項を無視して
民法709条を解釈すると、
この事案の被侵害利益は、法的に保護されている
といえると思いますか?
私人間効力 (snow)
2011-10-13 19:52:07
失礼しました。はしょってしまったのですが、判例・通説は、
「権利又は法律上保護される利益」の侵害に加えて、加害者側の侵害行為の性質(態様)によっては
「違法」な侵害であるか否かで最終的な不法行為の成否を決している、即ち「違法性」を、
被侵害利益と加害者側の行動の自由との利益衡量の場としている(弘文堂NOMIKA債権各論Ⅱp28)
という理解でしたので、先ほどの私のコメントは違法性の中に被侵害利益の判断を組み込んでしまっております。
正確には先生の御指摘のとおりです。
「ところで、さしあたり憲法14条1項を無視して
民法709条を解釈すると、
この事案の被侵害利益は、法的に保護されている
といえると思いますか?」
709条は「‥他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は‥」としかなく、
これをどう解釈すれば当該被侵害利益が法的に保護されているのかよくはわからないのですが‥
解釈方法として正しいのかわかりませんが、他の条文を参照すれば、
財産権や名誉、身体・自由、両性の本質的平等?くらいは含まれ得ると思います(他にもあると思います)。
一般的には、判例や学説が709条を解釈して認めている被侵害利益としては、
所有権、債権等の財産的利益、生命身体、名誉プライバシー、人格的利益等が挙げられ、
不合理な差別を受けない利益は、人格的利益に含まれそうなのですが、そのような解釈をした教科書や判例はみたことがありません。
従って、人種の違いを理由に不合理な差別を受けない利益は、判例学説によっては、
法的に保護された利益として認められていない、ということになると思います。
>snowさま (kimkimlr)
2011-10-14 16:43:03
そうですね。
そういう場合というのは、
法律が、
(私人により)差別を受けた人がいる場合に
国が被害者を保護することを必ずしも要請していない場合ということになります。
なので、被害者は国に対し、
差別されない権利の保護を請求することになります。
こうした保護請求権を認めるのが
私人間効力肯定説です。
そして、憲法だけで国が損害賠償命令を出す根拠になる、と考えるのが直接適用説。
憲法だけでは権利が具体的でないと考えるのが
間接適用説なわけですね。
こんな感じの解説でどうでしょう?
私人間効力 (snow)
2011-10-14 19:10:20
ありがとうございます。具体例に則して考えると理解が深まりました。
この事案だと不法行為が問題になっていますが、民法90条の公序良俗違反を主張する場合は、
まずは、被侵害利益を民法は「公序」として保護しているのかどうかをまず検討する、ということになるのだろうと思いました。
これまでの解説を踏まえての質問が3つあります。趣旨が伝わるようにと書いていたら長文になってしまいました。
すみません。おかしな理解をしているかもしれないので御指摘いただけたら幸いです。
まず1つ目なのですが、憲法適合解釈請求権なのですが、その請求権の行使により生じる「効果」は、
裁判所が私法を解釈する際にその憲法の条項を参照しなければならない、というものですが、
行使「要件」はどのように考えればいいのでしょうか。
三菱樹脂事件では「個人の基本的な自由や平等に対する具体的な侵害またはそのおそれがあり、
その態様、程度が社会的に許容しうる限度を超えるときは…」と述べています。
これを憲法適合解釈請求権の一般的な要件と考えていいのでしょうか。
(2つ目の質問なのですが、)仮にそうだとすると、ここで侵害の認定が必要になりますが、
その侵害の認定はいわゆる目的手段審査を用いて構わないのか、という点がよくわかりません。
本事案についていえば、Xの人種による不合理な差別を受けない利益に対する、
侵害またはそのおそれがあったことを認定しなければなりませんが、
不合理か否かは目的手段審査等の判断枠組みがなければ不明確な当てはめになってしまいそうな気がします。
3つ目なのですが、裁判所が、憲法適合解釈請求権の行使要件は充足していると認め、
原告の主張する被侵害利益が法的に保護されるもの、と解釈したとしても、それで直ちに違法となるわけではないと思います。
「一面で私的自治の原則を尊重しながら‥他面で‥平等の利益を保護し‥調整を図る」にあるとおり、
被告の営業の自由等との利益調整が必要になると思います。この場合、目的手段審査ではなく、
権利利益の重要性や制約の態様を検討して、どちらの利益がより重要か、
という比較衡量の枠組みで最終的な違法性の有無を判断してかまわないのでしょうか。
お忙しいのにも関わらず長文にしてしまい本当に申し訳ありません。
ケースバイケースかもしれませんが、基本的な枠組みの理解がまず大事だと考えました。 よろしくお願い致します。
>snowさま (kimkimlr)
2011-10-14 21:30:47
ええと、保護請求権の行使要件は、
国民であること、保護請求の対象となる権利の侵害があること、になるでしょう。
保護請求と私的自治の調整というような話ですが、
まあ、利益考量のようなことをするのでしょうが、
請求権の思考様式(一段階画定方式)を前提にするなら、
その権利について保護請求権あり=利益考量を許さず、になるんでしょう。
なので、私的自治との調整は、
保護請求の効果を確定するところでやっちゃうのが自然かもしれません。
実戦例が少なくて、良くわからないところも多いのですが、
私も今後考えてみたいと思います。
私人間効力 (snow)
2011-10-14 23:50:21
ここまで長い質問にお付き合いいただき本当にありがとうございました。
自分の書いたコメントを見直してみると、後で改めて比較衡量をしなくても、
初めの自己の権利に対する侵害の有無を認定するところで、
既に自己の権利利益と相手方の営業の自由等の権利利益の価値との比較衡量をしてしまっているのかもしれません。
すみません、最後に一つだけお聞きしたいことがあります。
自分のなかで私人間効力の位置付けがいまいちはっきりしていません。
仮に木村先生が司法試験委員で、
対国家ではなく敢えて私人間効力の問題を出題する場合があるとすれば、憲法論として、どういうことを聞きたいと考えて作問されるのでしょうか。
もちろん、ケースバイケースだとは思うのですが、もし差し支えがなければ、
例えば私人間効力ならこういうことを聞いてみたい、いや少なくともこれくらいは答えてもらいたい、
ということがあればお聞かせ願えないでしょうか。質問がふわっとしてしまい申し訳ありません。
差し支えなければどうかよろしくお願い致します。
そうですねえ、やはり過少保護という状況が私人間効力論を要求しているという構造をききたいですね。
権利侵害ぷらす目的手段審査とは違う
違法性阻却事由の有無を検討する
ということになる気がします。
まあ、あんまり差別や表現自由侵害が
正当防衛になったりすることはないので、」
普通は権利制約認定して
国家の不保護が許されるかと議論すれば
よいのでしょう。
人が法的義務を負うのは、当事者に合意があるからか、法律にその旨の規定があるからか、どちらかの場合しかないと思うのですが、上の例のように学生や労働者が法律上の義務を負うのは団体との間に「合意があるから」なのでしょうか。
よろしければ教えていただけると嬉しいです(いつも不思議に思っていたので…)
そういう団体だと、組合の規約や
大学の規則があり、
その規約や規則に従うことが
加入・入学の条件になっているはずです。
辰巳での先生の講座の受講を申し込みました。正直憲法が一番不安です。特に判例の多さがめちゃくちゃこたえます‥どこに重点を置いて読めばよいのやら。。
貴重な講義をしっかり生かしたいです。
まず、憲法の急所の判例索引にのっている
判例にしぼってしっかりよみましょう。
また、重点の置き方ですが、
その事案の事実が
憲法上の主張のどの要件について使われている事実か
をしっかり検証してよみましょう!
それがでてきたら必ず暗記してください。
それから、そう定義する理由もやはり
暗記に近い理解が必要です。
そこだけできてれば
かなりレベルアップですね。