(1)父と母の最終章。
続きです。
一心が小学4年の時、横浜に引っ越すことになった。
目蒲線鵜の木駅から乗り多摩川園前駅から
東横線に乗り換て初めて横浜駅にきたのだ。
駅前広場にはローラースケート場があった。
相模鉄道に乗り換えた。
単線だった。
父が言った。
相模川から砂利を運ぶ鉄道と言った。
ガタゴトガタゴト電車から眺める風景は両側が緑に覆われている。
下車した駅前には、3本柱の上にテレビがあった。
テレビが見ることができた。
そこからバスに乗った。
海軍道路の砂利道を揺られながら15分程で着いた。
バス停から2分程に木造の家があった。
母が言った。
「これから、ここに住むんだよ」
周囲には雑草の空き地が広がる。
見渡すと森林が連なる。
「何処までが内の敷地なの」
父は言った。
コンクリートの柱が4ッ立ち。
「これが境界線だ」。
「面積は110坪」
小学4年生の僕には、何だか分からない。
東京の下町で密集地6畳一間の風呂無しアパートに
一家5人で住んでいた。
一軒家は
水道はあるが、ガスはなく石油コンロを使う。
風呂はプロパンガス。
トイレは水洗ではない。
子供から少年になる心身が小さな世界から
少しずつ広がり出した。
中国文学に「順口溜」という風刺文学がある。
その中に
田んぼで稲を植える奴は貧乏人だが、庭で花育てる奴は金持ちである。
土を耕す奴は一生貧乏人だが、土地を売買する奴は子孫まで金持ちである。
その「順口溜」でいけば
家族は一つ階段を上がった。
続く