ごっとさんのブログ

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手のひらにいる黄金の細菌のはなし

2022-04-05 10:26:37 | 自然
ヒトの皮膚表面には非常に多くの微生物が住み着いています。

これはどんなにきれいに洗っても取れることはなく、皮膚は顕微鏡的にはかなり凸凹していて無数の穴がある構造で、その中に微生物が住んでいます。特に手のひらはつるつるしている感じがありますが、そこには「黄金の細菌」がいるようです。

黄金の細菌と言っても別に貴重な菌ではなく、単にコロニーをつくると黄色い色が出て来るだけの細菌で、ヒトにも色々悪さをしています。この菌の正式な名称はスタフィロコッカス・アウレウスで日本語では黄色ブドウ球菌と呼んでいます。

この名称は顕微鏡で見たときの形状に由来し、丸い菌(球菌)がブドウの房状に寄り集まっているように見えます。

細菌学的特徴は病気の起こし方にも関わっており、例えば肺炎球菌は人の鼻の中や肺の中など一定の条件が整った場所を好みます。尿の中や便の中、環境中ではすぐに死滅し、中耳炎や肺炎など限られた部位で病気を起こします。

一方黄色ブドウ球菌は鼻の中、皮膚、腸の中はもちろん、体外の環境中にも住むことが可能です。最近は新型コロナの影響で頻繁に手指消毒するようになりましたが、それでも完全に消滅することはないと考えられています。

病気についても部位を選ばず、全身のあらゆる部位に感染症を起こすことができます。また細菌にとって有害な過酸化水素を分解するカタラーゼを持っており、人体が細菌を退治するために過酸化水素を産生しますが、これを持たない肺炎球菌は退治され、カタラーゼを持つブドウ球菌は生き残ってしまいます。

ブドウ球菌による病気は種類が多いのですが、ここでは特徴的な食中毒について紹介します。ブドウ球菌による食中毒は、厳密には感染症ではありません。この食中毒は、ブドウ球菌が産生するエンテロトキシンという毒素が原因となり、嘔吐や下痢などの症状を引き起こします。

例えばおにぎりの表面で増殖し、この毒素ができてしまうことで食中毒となるわけです。ですから食べる前に加熱してもこの毒素を壊すことはできませんので、やはり食中毒症状が比較的短時間で発生します。

この毒素による食中毒は一般に軽症で、微熱が出て吐き気や嘔吐、下痢で1日以内に回復しますので、大事に至ることはほとんどないようです。

さてブドウ球菌が注目されているのは耐性菌の問題です。代表的なものがメチリシリン耐性のMRSAという菌が出ています。この耐性菌について述べると非常に長くなりますので、ここでは省略しますが、耐性メカニズムも非常に興味深いものです。

このように黄色ブドウ球菌はどこにでもいる身近な細菌ですが、他の有害な細菌の増殖を抑えているというメリットもあるようです。

細菌というと徹底的に排除したくなりますが、ある程度共に暮らしていくという考え方もあるのかもしれません。


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