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幻覚剤で脳の損傷や発達障害を治療

2023-09-13 10:34:57 | 
不正薬物の代表のようにいわれている幻覚剤ですが、重度のうつ病や不安、心的外傷後ストレス障害(PTSD)などを改善することが、臨床試験や様々な研究から分かってきました。

現在は多くの科学者たちが、脳への物理的損傷の他、脳の神経経路が原因で引き起こされるその他の病気に対しても、幻覚剤が効果を発揮するのかどうかを探っています。

幻覚剤とは意識を変容させる物質のことを指し、たとえばリゼルギン酸ジエチルアミド(LSD)、シロシビン(いわゆるマジックマッシュルーム)、メチレンジオキシメタンフェタミン(HDMA、エクスタシー)、メチルトリプタミン(DMT)、アヤワスカなどがそれにあたります。

幻覚剤が脳損傷にどう影響するかについて、これまでの研究の大半は幻覚剤を使って、脳が損傷を負った後のダメージを軽減する事、傷ついたニューロンに代わる新しいニューロンの誕生を促すことなどに焦点を当てていました。

たとえば2023年の研究では、幻覚剤を投与された実験動物が、幼いころにしか学ぶことができないと考えられていたスキルを、大人でも身につけられたことが示されています。

人間の脳は、特定のスキルを特定の発達段階までに学習するようになっています。その期間は「臨界期」といわれ、たとえば言語学習の臨界期は10代を過ぎると終わってしまうと考えられています。

こうした学習能力は脳卒中の治療にも関わり、脳に損傷を負った人は、脳内の多くのニューロンにダメージを受けます。発話や運動スキルの学習臨界期は、脳の損傷後に自然に再開され失われた能力の一部を取り戻すことができます。

しかしその期間は通常6か月以内に終わり、それ以後の改善は難しくなります。この研究では、特定の社会的スキルを欠いた成体のマウスにLSDやシロシビンなどの幻覚剤を投与し、ひとつの部屋では孤独に、また別の部屋では他のマウスたちと一緒に過ごさせました。

その後どちらの部屋で過ごすかを自由に選ばせたところ、幻覚剤を投与したマウスはほかのマウスがいた部屋の方を好むようになりました。

LSDのような幻覚剤が受容体に長く留まっていることにより、過剰な負荷にさらされたニューロンが、ある種のリセットボタンを押してしまうためと考えられます。その結果脳がより初期の発達段階に戻されるとしています。

このように幻覚剤によって、臨界期を過ぎた脳をリセットすることで、新たな学習が可能となりいろいろな精神疾患の治療が可能になるとしています。まだ実際の臨床試験は計画段階のようですが、これによって新しい脳の機能なども解明されつつあるようです。


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