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難治性の水虫、胃酸抑制剤が効くことを発見

2024-06-12 10:34:19 | 
私の周りには、水虫に悩まされている人は全くいません。私自身数年前足の指の間がかゆくなり皮がむけていたので、市販の水虫薬を使ったところすぐに治った記憶があります。

武蔵野大学などの研究グループが、難治性の白癬(水虫)に胃潰瘍などの治療に使われる高濃度の胃酸抑制剤が効くことを発見しました。水虫は真菌の一種が人間の皮膚で増殖することで発症しますが、近年これまで効果があった抗真菌薬が効かない患者が見つかっています。

今回は実験室のシャーレ上での成果で、直接人に効くわけではないのですが、新しい治療薬の開発の足掛かりになりそうです。白癬菌は水虫の原因菌となるカビで、国民の5人に1人が水虫を発症するといわれ、増殖が遅いために遺伝子改変等の実験が難しい菌とされています。

抗真菌薬「テルビナフィン」を飲めば治り、安価で副作用の少ない治療法が確立していました。しかし近年テルビナフィンが効かないタイプの患者が散見され、臨床現場で問題となっていました。

武蔵野大学の研究グループは、タンパク質をリン酸化させる「プロテインキナーゼ」という酵素に着目しましました。この酵素はガン細胞内で暴走するため、分子標的薬としてプロテインキナーゼ阻害剤が開発されています。

今回白癬菌中のプロテインキナーゼの一種である「TrPtk2」を欠損させた耐性菌の株にテルビナフィンを投与したところ、菌の増殖が抑えられました。この結果からTrPtk2をなくすような薬ができれば、耐性菌を攻略できるのではないかと考えました。

TrPtk2の働きを他の菌で調べていると、胃酸の分泌などに関わるプロトンポンプを活性化していることが分りました。そこでプロトンポンプを抑制すればTrPtk2を抑えることができるのではないかと逆の発想をしました。

胃潰瘍などの治療に使われるプロトンポンプ阻害剤(胃酸抑制剤)オメプラゾールをテルビナフィンと一緒に、シャーレ上の耐性株に投与しました。その結果耐性菌を完全には死滅できませんが、増殖を部分的に抑えることを確認しました。

しかし胃酸抑制剤によって菌が増殖しないことが確認できたものの、市販や処方薬の胃薬とは比較にならないほど高濃度で投与して初めて効果がありました。そのため安易に胃薬を足に塗るなどしないで欲しいと呼びかけています。

それにしても水虫の原因となるカビにも耐性菌が出てくるというのは、人間と病原菌との戦いはなかなか終わらないという証拠のような気もします。


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