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画期的半導体を開発

2019-06-29 10:25:53 | 化学
現在電力制御を行うパワー半導体の世界では、シリコンより半導体物質としてのパフォーマンスが高い炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)を活用する開発が進み成果を出しています。

例えば鉄道車両ではシリコンのパワー半導体を用いたインバーターを、炭化ケイ素を用いることで、最大40%という画期的な省エネ効果を生んでいます。

将来的には、EVや家電などにこうした新型半導体が普及し、異次元の省エネや家電など小型化を進めていくことが予想されます。

ところが最近京都大学発のベンチャー企業が新たな半導体原料を開発しました。この会社は安価に酸化ガリウムの結晶を作る方法を開発しました。この酸化ガリウムは半導体としての性質が極めて良いようです。

シリコンに対する半導体物質の性能を表す数値として、バリガ性能指数が良く用いられています。この数値はシリコンが1、シリコンをしのぐ省エネを実現する炭化ケイ素が340、窒化ガリウムが870であるのに対し、この酸化ガリウムは3444という数値になっています。

シリコンの約3400倍であり、素晴らしい省エネ効果を実現している炭化ケイ素と比べても約10倍という圧倒的性能を示しています。同じ性能の素子であれば、損失が少なく圧倒的省エネを実現でき、サイズも文字通り桁違いに小さく作ることができます。

しかしこれまで酸化ガリウムには欠点があり、P型半導体を作ることができませんでした。このあたりは専門外ですのでよく分かりませんが、半導体には電子を足りなくしたP型半導体と電子を余らせたN型半導体が存在するようです。

ダイオードにはN型半導体のみでも製造できる機種がありますが、トランジスタにはどうしてもP型とN型の双方が必要とされてきました。

ところがこのベンチャーは、酸化イリジウムを使ってP型層を作ることにも成功し、酸化ガリウムのトランジスタを作れるようになりました。炭化ケイ素でも窒化ガリウムでも技術的課題はあるとしても、最も問題なのはコストです。

両者とも鉄道車両、高級サーバー、人工衛星などコストが高くても採用可能な用途では大活躍しています。しかしコストの厳しいハイブリット車や低価格化が進む家電やデジタル機器では、炭化ケイ素や窒化ガリウムが高いパフォーマンスでも受け入れにくいようです。

これが高価格となるのは、結晶の作製に時間と設備がかかってしまうためです。酸化ガリウムはこの点でも画期的な安価な製造法を開発しています。これにより高価な炭化ケイ素や窒化ガリウムを上回る性能の半導体を安価なシリコンと同じようなコストで作れそうです。

酸化ガリウムの半導体は開発が始まってあまり時間が経っていませんので、実際に製品化するにはいろいろな課題が出てくるかもしれません。

それでも酸化ガリウムという素材は非常に優れているため今後どんな展開を見せるか期待が集まっているようです。


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