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細胞が異物を排除、「オートファジー」の仕組み 続

2021-01-06 10:25:54 | 自然
前回オートファジー(自食作用)によって細胞内に入ってきた病原体を排除するという話を書きました。

今回はこの作用により、細胞内の異物であるタンパク質などを排除し、アルツハイマーを治療する可能性の話です。

オートファジーのもともとの役割は、飢餓状態になった時、細胞の中身を分解して栄養源にするというものですが、ここでは細胞内の有害物を除去する役割です。オートファジーが標的とする有害物としては、壊れたオルガネラ(細胞小器官)やタンパク質の塊があります。

オルガネラとは細胞の中にある臓器のようなもので、ミトコンドリア、リソソームなどがあります。ミトコンドリアが壊れると活性酸素が、リソソームが壊れると消化酵素が細胞内に漏れてしまい細胞に悪影響を与えます。

最近注目されているのがタンパク質の塊の除去で、これはタンパク質の塊によって引き起こされる神経性疾患に関わります。認知症の大多数を占めるアルツハイマー病などの神経性疾患は、脳細胞の中にタンパク質の塊ができて、そのために細胞が死ぬことで起こります。

細胞の寿命は部位によって大きく異なり、胃や腸の表面の細胞は1日程度で、赤血球は3〜4か月、骨は約10年となっています。そして神経細胞と心筋細胞はその人が死ぬまでずっと同じ細胞が使われます。

タンパク質の塊が溜まって細胞が死んでしまうとそのままになるわけです。進行したアルツハイマー病の患者の脳をMRIで見ると隙間だらけになっています。つまり神経細胞にはオートファジーがとても重要になるわけです。

この実験は非常に多く、遺伝子を操作して神経細胞だけオートファジーを止めたマウスは、若い間にアルツハイマー病によく似た症状が出ました。なぜ高齢者に認知症が多いのかというと、オートファジーの加齢による能力の低下といわれています。

この理由が2009年に発見された「ルビコン」というタンパク質です。このルビコンはオートファジーが起こりすぎないようにする、いわばブレーキ役のタンパク質です。この実験としてマウスに4か月にわたり高脂肪食を与え続けると、当然肝臓は脂肪肝になります。

これを調べるとオートファジーの働きの低下とルビコンの増加が確認されました。次にマウスの肝臓のルビコン遺伝子だけ破壊し、同様に高脂肪食を与えましたが、オートファジーの働きは衰えず、肝臓も肥大しませんでした。

つまりルビコンがなければオートファジーが正常に働き、有害物質を排除してくれるということが確認できたわけです。加齢によりルビコンが増加することによりオートファジー機能が低下することも分かりました。

こういったことにより現在ルビコンの阻害剤が、アルツハイマー病の治療薬(予防薬)になるのではないかと研究が進んでいるようです。


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