ごっとさんのブログ

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他の病気との区別が難しい「肺高血圧症」のはなし

2022-03-29 10:25:13 | 健康・医療
循環器の病気は色々ありますが、「肺高血圧症」という希少疾患があるようです。

肺が高血圧になるということは単純な高血圧の一種かと思っていましたが、診断=短期間で命を失うという非常に恐ろしい病気となっていました。

この病気は肺動脈のおける血圧の上昇であり、原因となる病気は多岐にわたるため診断が非常に難しいようです。また患者数の少ない希少疾患でであるため、専門医が少なく適切な診断が難しいという課題がありました。

肺高血圧症の原因となる基礎疾患はさまざまな領域におよび、関わる診療科も多岐にわたります。代表的な症状は「身体を動かしたときの息切れ」ですが、同じ症状をきたす病気は山ほどあり、適切な診断にたどり着きにくいという点も大きな課題です。

この治療法は脳死心肺同時移植でしたが、国内ではその選択肢はなく海外でしかできませんでした。しかし日本では肺動脈を広げる「肺血管拡張薬」が1999年に登場したことで治療成績は向上しました。

肺血管拡張薬が登場してから20年余りで、これだけ短期間で生命予後が改善した病気はほかにはありません。一方留意すべき点も残されており、肺血管拡張薬が有効であっても典型的な使い方があるわけではなく、患者に合わせた「個別化医療」が重要であるという点です。

基礎疾患により治療法は異なりますし、同じ基礎疾患であっても病態や重症度、合併症により使用する薬剤や治療戦略が変わってきます。

この病気は比較的若年で発症するため、5年10年という長期での生命予後を見ると必ずしも「十分に改善した」とはいえないようです。

この点を改善するために現在進められているのが、個別化医療を実践するための治療アルゴリズムの作製や、バイオマーカーなどできるだけ簡便な方法によって病態を識別するための研究です。

肺血管拡張薬はある意味で対症療法であり、肺動脈圧を下げて生命予後を改善することはできても、肺高血圧症の根本にある肺血管リモデリングという病的変化をもとに戻せるわけではありません。

また肺血管拡張薬は肺血管のみならず全身の血管を拡張することから、顔面紅潮、頭痛や低血圧などの副作用が起こります。それでも最近肺血管リモデリングを改善する治療薬がの候補がいくつか出てきたようです。

日本での承認はありませんが、海外の臨床試験などで肯定的な結果を示すものがあり、期待が寄せられています。

私は基本的には薬に対して懐疑的ですが、こういった生命予後という命に直結するようなケースは、薬によって治療することは大いに賛成しています。

このように肺高血圧症が一刻も早く根治できるように期待しています。


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