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神経細胞を守るオートファジー

2022-03-30 10:27:43 | 自然
私はオートファジーに興味があり、このブログでも何回か取り上げてきました。

オートファジーは「自食作用」と訳されており、細胞の不要な部分をいわば食べてしまう現象として古くから知られていました。現在では主要な機能として、「飢餓時の栄養補給」「自己成分の作り替え」「外来有害物の隔離・除去」ということが分かっています。

近年この中の「自己成分の作り替え」が健康や生命維持に密接にかかわっていることが分かってきました。つまり細胞は中の成分を分解して同じものを作り直すことで、新しい健康な状態に保たれています。

細胞には寿命があり、古い細胞は死に新し細胞に入れ替わっています。胃や腸の表面の上皮細胞は1日程度、血液中の赤血球は約4か月、骨の細胞は約10年と細胞の種類により寿命はさまざまです。

一方でほとんど入れ替わらず生まれてからずっと使い続けなければいけない細胞もあり、脳の神経細胞や心臓の心筋細胞です。こういった細胞にとっては、中身の作り替えがきちんと行われることが重要になってきます。

オートファジーによる分解が滞ると、古いものや壊れたものが溜まり細胞は死んでしまいます。しかも新しい細胞に入れ替わることなく脱落したままになるため、組織や器官の機能にも支障が出てしまうわけです。

神経細胞におけるオートファジーの重要性を示す実験結果はいくつも報告されています。脳の神経細胞のみにオートファジーが起きないマウスは、生後1か月ごろから歩行がふらつくなどの運動障害がみられるようになります。

脳を調べると神経細胞にユビキチン化されたタンパク質が蓄積しており、細胞が死んで脱落しているところもありました。ユビキチンは立体構造が正しくないタンパク質や損傷したリソソームなど、分解されるものにつけられる目印です。

ユビキチン化されたタンパク質が蓄積しているということは、分解されるべきタンパク質が残っていることを意味します。この実験に使ったマウスには、細胞に蓄積しやすい異常なタンパク質が作られるような遺伝子変異はありません。

遺伝子変異など特別な原因が無くても、オートファジーの働きが低下しただけで神経性疾患になることが分かりました。これはオートファジーが疾患に対抗する防御機構として働いていることを示す大きな発見といえます。

この様にオートファジーが神経疾患を引き起こす有害タンパク質を除去している例は多く、この活性化で色々な神経疾患の予防や治療につながるのかもしれません。

オートファジーが誘導されるメカニズムの研究なども進んでおり、アルツハイマー病やパーキンソン病などとの関連も明らかになりつつあります。オートファジーはこれからも注目すべき研究課題といえそうです。


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