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溶血性レンサ球菌による感染症はなぜ劇症化するのか

2024-07-29 10:33:20 | 健康・医療
最近劇症型溶血性レンサ球菌感染症、いわゆる「人食いバクテリア」の感染者が例年より増えていることがニューになっています。今年は半年で977人と昨年1年間の感染者数を上回っているようです。

劇症型レンサ球菌感染症はいわゆる人食いバクテリア症ともいわれ、1990年代から米国などでメディアが報じてから広く周知されるようになりました。しかし19世紀から猩紅熱として報告されている感染症の多くが、劇症型レンサ球菌感染症と考えられています。

この感染症は一般的な喉頭炎、中耳炎、傷の化膿、猩紅熱などを引き起こすA群溶血性レンサ球菌咽頭炎が劇症化し、身体の組織を壊死させ、多臓器不全や敗血症によるショックを引き起こすなどして重篤な症状になり、死亡するケースもある感染症です。

初期症状としては、手足の疼痛、むくみ、発熱、血圧低下などですが数十時間程度で急速に症状が悪化します。致死率は30%から40%といわれ、劇症型は30代以上の成人に多く、治癒してもリウマチなどの自己免疫疾患や腎炎といった後遺症が残ることがあるようです。

飛沫感染、接触感染、手や足の傷口から感染すると考えられる感染症ですが、なぜ劇症化するのか、どんな人が劇症化しやすいのか、そのメカニズムや理由などはまだよくわかっていません。

劇症化した患者は、同じような病態をたどるのではなく、レンサ球菌の遺伝子のわずかな差異と転写機構、それによって生じた多種多様な構造によって、感染したレンサ球菌ごとに異なった病態になると可能性が高いと以前から指摘されていました。

そのため治療戦略の策定が難しいのですが、最近のゲノム解析などから劇症型のレンサ球菌が産生する毒素が次第に分かってきています。レンサ球菌が持っているMタンパク質は、ヒトの細胞へ感染するために重要な役割を持っています。

またMタンパク質は、免疫機能から逃れるオプソニン作用があるため、レンサ球菌による劇症化に関係していると考えられてきました。この他にも感染力を強めるタンパク質がいくつか報告され、劇症型レンサ球菌は直接ヒトの細胞へ障害を及ぼす毒素を持っています。

そのひとつが細胞壁に穴を開ける細胞溶解毒素で、細胞へあけた穴から細胞外へ毒素を送り込んだり、溶血毒として血液凝固作用を妨げます。こういった何か単独の因子だけで劇症型になるわけではないようです。

劇症型でも予後が不良のレンサ球菌とそうでないものを識別することと同時に、何故レンサ球菌が多様な因子を持ち、劇症型を引き起こすように変化するメカニズムを明らかにすることが重要でしょう。

今回は触れませんでしたが、マスターレギュレーターの研究が進められています。


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