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2017注目された医薬研究

2018-01-03 10:40:12 | 時事
昨年末2017年の科学10大ニュースを書きましたが、その後昨年注目された論文というものが発表されました。

これはネイチャーメディシンという雑誌の編集者が、1年を振り返って面白いと思った医学系論文を分野ごとに紹介しているものを日本語に直したものです。やや専門的すぎて分かりにくい部分も多いのですが、正月じっくり読んでみましたので紹介します。

まずガンのチェックポイント治療です。抗PD-1抗体であるオプジーボなどを用いた免疫チェックポイント治療が話題になりましたが、従来の治療法では治る見込み無いガンに対しても著効があるものの非常に高価であるというところもニュースになりました。

この治療法が現在抱える最大の課題は、効果のばらつき(有効率が20%程度といわれています)の原因を明らかにし、治療効果の予測を可能にすることのようです。この観点からの論文が提出されました。

この研究では治療前後のメラノーマの患者の血液のT細胞を調べ、ガン細胞の数が多すぎるとT細胞が枯渇して治療が効かない可能性を示しています。この結果は、末梢血で免疫反応のモニターができること、治療の前にできるだけ腫瘍を減らすと効果が高まる可能性をしており、新しい治療法の開発につながりそうです。

次が個人用ガンワクチンの可能性ですが、実際のガンが発現しているガン抗原を特定して個人用ワクチンを作製してガンを治す臨床試験の論文が発表されました。

この進歩は、ガンゲノムのDNA配列からガン抗原として働くペプチド断片を特定する技術が発展したおかげですが、現在のところ特定された抗原が免疫反応を誘導できるかの検査が必要で、一般治療となるにはまだ時間がかかるようです。

分野が異なりますが、神経細胞死を誘導するミクログリアの研究論文です。ミクログリアがサイトカイン類を介してアストロサイトを活性化すると、アストロサイトは本来の神経保護作用を失い、神経細胞死を誘導するという恐ろしい発見です。

この現象は多くの変性性神経疾患で見られることから、この経路をブロックできると変性性疾患の治療も可能になるのかもしれません。

次がGABA受容体を刺激して糖尿病を治すという論文です。GABA受容体の活性を高めると、膵臓のα細胞がβ細胞へ変換し(インシュリンを分泌します)、糖尿病が治療できる可能性が示されました。この経路をマラリアの治療薬であるアルテメールが活性を高めることを示しており、1型糖尿病の治療が可能になる可能性を示しています。

その他血液の老化と心臓病やFSHを抑制して肥満治療といった話が取り上げられていました。やはり医学分野では多くの方面で研究は進展しているようです。

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