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真核生物の「祖先」培養に成功

2020-02-21 10:23:43 | 自然
海洋研究開発機構などの研究チームが、深海で採取した泥を使って、ヒトをはじめとする「真核生物」の祖先にあたるとみられる微生物の培養に初めて成功したと明らかにしました。

単純な生物が複雑な生物へと進化した謎に迫る発見だとして、科学誌サイエンスは今年の10大研究成果の一つに選びました。

培養された微生物は0.5マイクロメートルという非常に小さな「古細菌」(アーキア)の一種です。泥から人間を作ったギリシャ神話のプロメテウスにちなみ「プロメテオ アーカエウム」と名付けられました。

地球の生物は「細菌」「古細菌」「真核生物」の3種に大別されます。真核生物は古細菌の一種から進化・誕生したとの説が有力ですが、実際の祖先に近い古細菌を培養して分析できた例はなく、この培養は世界中で競争になっていました。

研究チームは2006年に有人潜水調査船「しんかい6500」を使い、紀伊半島沖の深さ約2500メートルの海底で泥を採取しました。自作の装置で深海環境を再現するなどして、多数の微生物を培養しました。

2018年に単独培養できた古細菌は、真核生物と共通の遺伝子が多数あったようです。また他の細菌と共生し、長い触手のような腕を伸ばすなど、非常に変わった振る舞いをしました。

こういった培養困難な微生物は非常に多く、近年の遺伝子解析によると通常の土壌など環境中の微生物の内99%以上は、従来の培養法では培養増殖できないとされています。培養困難な微生物は、遺伝子的に存在が分かっているだけで、どんなものかは全く分かっていません。

現在の微生物学という分野は、培養できて初めて分離(単一の微生物にする)できますので、そういった微生物だけを調べて一つの学問分野となっています。これが全微生物の内の10%以下という事が分かり、微生物の専門家は新しい培養法の開発に躍起になっているところです。

いままで培養できていない(見つかっていないとも言えます)微生物が確認できていけば、現在ある微生物学が根底から揺らぐ可能性もある問題となっているのです。

さて真核生物が細胞内に有しエネルギーを生み出す「ミトコンドリア」は、元は別の生物だった細菌が取り込まれたのが起源だと考えられています。

チームは、プロメテオ アーカエウムのような古細菌が腕を使い、後にミトコンドリアになる細菌を飲み込んで共生を始めたのが真核生物の起源とする仮説も立てています。

この研究成果の論文は、まだ学術誌に掲載されていませんが、サイエンス誌は「すべての生命の祖先に光を当てた」と高く評価しています。こういった古細菌には、生命の誕生の謎の解明につながる可能性もあり、大いに注目しています。


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