ごっとさんのブログ

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   薬と猫と時々時事

薬が市場に出るまで 前臨床試験 続

2015-04-17 10:21:02 | 
前臨床試験の続きをすぐに書くつもりでしたが、気が付いたことなど書いているうちにずいぶん空いてしまいました。前回は安全性試験のうち、亜急性毒性試験が重要だと書きました。実際にこの試験で問題が全くでない場合は、その他の試験でも何か出ることはほとんどないようです。

前回急性毒性について、LD50を出すということを書き忘れました。現在開発しようとする薬で、急性毒性が出ることはまずありませんが、LD50という半数致死量を出す必要がありました。昔は死亡例が出るまで投与量を増やすというようなこともやったようですが、現実的に無意味になり、例えば1g/Kg以上というような記載で済ませているようです。ちなみにこの量は、人間でいえば100mgの錠剤を600錠という量になりますので、実際上は十分多い量となっています。

この前に動物の治療試験から、ED50という半数有効投与量というものが算出されますが、いわばこれが最低有効投与量となります。このときの最大血中濃度や、血中持続時間などから最適投与量を各動物に対して算出してあるわけです。
最後の毒性試験が慢性毒性です。これは何年という時間がかかりますので、実験動物は犬になります。この実験が最も大量の薬のサンプルが必要になり、Kg単位の量が確保できなければいけません。

そのほかの安全性試験については、私が知っている物だけでも下記のような項目があります。生殖発生毒性試験、がん原性試験、抗原性試験、感作性試験、局所刺激性試験、遺伝毒性試験などです。このうちがん原生試験がいわゆる発がん性です。この試験方法もどんどん変化してきており、昔はかなりいい加減なもので、発がん性ありと出てもより新しい方法で調べるとなしに変わったりと問題でしたが、現在はやっと信頼性のある試験法が確立できたようです。遺伝毒性試験というのは、変異原性試験と呼んでいたものが少し広がったものです。変異原性というのは、簡単に言えば妊娠中の実験動物に投与して、胎児および生まれた赤ちゃんに異常が出ないかを調べるものです。この試験はずいぶん昔になりますが、サリドマイドという睡眠薬で奇形児が生まれるという事故が起こった後、検査項目として加わり、その後遺伝子への影響まで調べるようになりました。

そのほか薬剤自身の安全性として、保存安定性試験も行われます。低温、室温、40℃で長期保存してどの程度分解するかを調べます。薬剤の種類によっては、光や紫外線照射下での安定も必要となります。
こういった様々な安全性試験を行い、全く問題が出ない場合にやっと次の臨床試験が行われるわけです。ここまでにかかる時間は、当然薬の種類によって異なりますが、大体4.5年はかかるようです。


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